COLUMNSコラム

  • 美術史・技法

    顔を見たことのない人を描く——狩野派の歌仙絵

    狩野派の歌仙絵は、数百年前の歌人を同じ姿勢で描く。顔を知らない人物を描けるのは、粉本という型があったからである。色紙と掛軸と屏風の八点で、型と分業の仕組みを確かめる。未装のまま残った事情にも触れる。絹という材料の弱さにも触れておく。

  • 画家を知る

    波と雨を、線で描く——歌川国芳

    歌川国芳は、波を渦の線で、雨を縦の線で描いた。形のないものを示す型が、彫りと摺りの技術に支えられている。九点で自然現象の描き方をたどり、連作と怪異の主題にも触れる。型が更新される過程も見ておきたい。公開分の偏りにも触れておきたい。

  • 画家を知る

    横126センチの版画——鳥文斎栄之の続き物

    鳥文斎栄之の五枚続は、横126.7センチに及ぶ。紙を並べて画面を伸ばし、行列や群衆を横に流す。九点で続き物の設計を読み、裁断されて寸法が変わった一点にも触れる。細身の様式がどう作られたかも確かめたい。

  • 画家を知る

    判型ごとに、別の商品——磯田湖龍斎

    磯田湖龍斎は、柱絵、中判、大判、肉筆と判型を使い分けた。細長い紙には花鳥を縦に積み、中判では故事を当世の姿に置き換える。九点を並べ、判型ごとに商品が違ったことを確かめる。見立てという方法も見ておきたい。肉筆の掛軸との落差も確かめておきたい。

  • 美術史・技法

    色は、いつ版に移ったか——鳥居派の初期役者絵

    初期の役者絵では、色は紙の上に筆で置かれていた。それが漆の黒を経て、版で摺られるようになる。鳥居派の版画九点を年代順に並べ、色が工程の内側へ移る五十年をたどる。帰属の揺れにも触れておきたい。摺りの状態が色の見え方を変える点も見ておく。

  • 名画の楽しみ方

    作品番号の読み方——ターナーやホイッスラーの記録から

    「1937.1.1」は、館に入った年と群と通し番号でできている。met、aic、nga、si。番号の形式は館の歴史を映し、作品を確実に指すための唯一の手がかりでもある。七点で読み方を示す。番号から作品を探す手順も、あわせて示しておきたい。

  • 画家を知る

    模様に沈む人物——エドゥアール・ヴュイヤール

    ヴュイヤールの室内では、縞の服が花模様の壁に溶けていく。厚紙という支持体、膠絵という技法、小品と装飾画の落差。模様の中の人が何を描いているのかを九点で読む。仲間との活動や、初期の自画像との落差も見ておきたい。

  • 画家を知る

    平面にすると、色が残る——ポール・ゴーギャン

    ゴーギャンは地面を桃色に塗り、色を輪郭で囲んだ。ブルターニュから南太平洋へ、色は土地とともに変わる。ただし島の絵は植民地の条件を抜きに読めない。九点で確かめたい。木彫と陶器の仕事にも触れ、方法の広がりを見ておく。

  • 画家を知る

    反対の色を、隣に置く——ファン・ゴッホの補色

    ゴッホは書簡で色の組み合わせを語っていた。橙の果実に青い手袋、黄と紫、緑と赤。理屈としての補色と、土地の光。四年という短い期間の色の実験を九点で確かめる。模写という学び方や、絵具の値段にも触れておく。

  • 画家を知る

    輪郭のない花——オディロン・ルドン

    ルドンの花瓶は、卓に載っていない。支える面を描かず、背景を曖昧にしたまま花を浮かべる。曖昧さは選ばれている。公開分に偏りがあることも含めて、九点で読み直したい。装飾として注文された縦長の対も見ておきたい。

  • 画家を知る

    厚紙の地を、残す——トゥールーズ=ロートレック

    ロートレックは厚紙に油彩で描き、紙の色をそのまま残した。夜の照明、速い線、小さな板の肖像。材料と場所が線をどう変えたのかを、九点の公開作品から確かめる。娼館を主題にした二点の扱いや、常連であることの意味にも触れる。

  • 画家を知る

    舟を、画室にする——シャルル=フランソワ・ドービニー

    ドービニーは舟に画室を作り、水面の高さから川を描いた。視点は寸法に現れ、極端な横長の画面になる。反射の描き方から板という支持体まで、足場が構図を決める過程を九点で読む。印象派への橋渡しと呼ばれる理由も見ておきたい。

  • 画家を知る

    花だけを、四十三年——ファンタン=ラトゥールの静物

    ファンタン=ラトゥールは同じ主題を四十三年描き続けた。器を選び、白い布を敷き、やがて器を省く。枠を固定すると細部が見えてくる。九点を年代順に並べて、その変化を確かめる。花の絵がイギリスで売れた事情にも触れておきたい。

  • 画家を知る

    描きかけの仕上げ——ベルト・モリゾ

    モリゾの絵では画布の地が見えている。薄い絵具、速い筆、白を白で塗らない選択。仕上げの基準を誰が決めるのかという問いから、家の中と庭に限られた主題までを九点で読む。家族の記録として残ったという条件も見ておきたい。

  • 画家を知る

    黒は、面である——エドゥアール・マネ

    マネの画面では黒が塊になっている。印象派が避けた色を、なぜ主役に置いたのか。仮面舞踏会の夜会服から舞台の黒まで、黒が絵の中で何をしているかを九点で確かめる。黒の絵具そのものの扱いにくさにも触れておきたい。

  • 画家を知る

    ハチドリと、湿地——マーティン・ジョンソン・ヒード

    ヒードは熱帯の花と鳥を精密に描き、同じ時期に湿地の草を描いた。無関係に見える二つの主題は、どちらも空気と光を扱っている。額込みの寸法まで含めて、九点で読み直す。図版集という未完の計画についても触れておきたい。

  • 画家を知る

    自画像が、四点ある——アリス・パイク・バーニー

    アリス・パイク・バーニーは自分の顔を何度も描いた。パレットを持つ姿は職業の宣言である。舞台の絵やパステルの小品も含めて、女性が画家として活動する条件を八点で読む。作品が残るかどうかは寄贈で決まるという点にも触れる。

  • 美術史・技法

    外交官が見たアメリカ——パーヴェル・スヴィニンの画帖

    ロシアの外交官スヴィニンは、1810年代のアメリカを画帖に記録した。乗り物、労働、宗教の場面。ただし雑誌の版画を写した一枚も混じっている。記録という言葉の中身を九点で確かめる。何が描かれていないかも、あわせて見ておきたい。

  • 美術史・技法

    注ぐための形——青木木米の急須と銀の器

    急須の取っ手はなぜ横に付くのか。京焼、宜興、銀器、錫合金。注ぎ口と取っ手の位置は、飲み方と作法から決まっている。九点の器を並べ、機能が形を作る過程を確かめる。銀器の重さが記録に残る理由にも触れておきたい。

  • 美術史・技法

    独学の肖像画——アミ・フィリップスと巡回画家

    19世紀アメリカの巡回画家は、寸法も姿勢も型で揃えていた。学校に行かず、町から町へ移って注文を受ける商売。写真の登場で消えた仕事の跡を、九点の肖像から読み取る。額と絵が同じ町で作られていたことも手がかりになる。

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