COLUMNSコラム

  • 画家を知る

    風景に、時間を流す——トマス・コールの連作

    朝と夕の対幅、人生を四面で語る寓意の連作。一枚の画面では描けない時間を、コールは画面の数を増やすことで描いた。キャッツキルの朝霧から《人生の航路》の嵐まで、アメリカ風景画の出発点に立つ画家の九点で、連作の仕組みを読む。

  • 美術史・技法

    同じ森、違う道——ロイスダールとホッベマ

    師の森は荒れ、翳り、倒木が横たわる。弟子の森は晴れ、道が通り、赤い屋根の水車が回る。同じ部品で組み立てたはずの風景が、なぜこうも違うのか。オランダ黄金時代の森の画家、ロイスダールとホッベマ師弟の九点を並べて確かめる。

  • 美術史・技法

    「倣う」は、創造である——文徴明・唐寅・董其昌の明代書画

    「倪瓚に倣う」と画家みずから題に掲げ、しかもその絵が名画として尊ばれる。模倣と独創の常識が逆転する明代の文人画の世界を、蘇州の文徴明・唐寅から松江の董其昌まで九点でたどる。鍵は、書の臨書と、紙に散る赤い鑑蔵印にある。

  • 画家を知る

    植民地の独学者が、王の画家になる——ベンジャミン・ウェスト

    18歳の硬い植民地肖像から、英国王室の大画面まで。ペンシルベニアの宿屋の子は、ロンドンで歴史画の頂点に立ち、自分の工房を事実上の「アメリカ美術学校」にした。九点で、その異例の出世と、技を配った教師の顔の両方を見る。

  • 画家を知る

    静けさを捨てて、肖像へ——ニコラース・マースの二つの経歴

    レンブラントに学び、台所の静けさを描いた画家は、ある時期から一転して華やかな肖像画家になった。この転向は堕落か、それとも適応か。オランダ黄金時代の絵画市場の現実を、同じ画家の七点に走る大きな落差から読み解く。

  • 美術史・技法

    形の名前は、用途の名前——古代ギリシャの壺

    ヒュドリア、クラテル、キュリクス。呪文のようなカタカナの名前は、実はそのまま使い方の名前である。水汲み、宴会、化粧道具。シカゴ美術館の九つの壺の形と把手を読むだけで、二千五百年前の暮らしの一日が家の中まで見えてくる。

  • 画家を知る

    肖像は、家の資産だった——ジョン・シンガー・サージェント

    題名に並ぶ「夫人」の文字は、肖像画が家の資産だった時代の名残りである。等身大の白いサテンから、醜聞と転居、注文をやめた後の静かな絵まで。サージェントの九枚で、19世紀の肖像画という商売の成立から店じまいまでを見る。

  • 画家を知る

    風景と光は、ここから始まった——ジョヴァンニ・ベリーニ

    小さな肖像の型、聖母子の変奏、絵の主役に育っていく風景、そして最晩年の異教主題。ティツィアーノらを生んだヴェネツィア絵画の土台は、一人の画家が六十年かけて敷いた。ワシントンに揃う八点で、その歩みを順にたどる。

  • 美術史・技法

    素人の理想を、専門家が演じる——池大雅・谷文晁・椿椿山の文人画

    墨一色の蘭、指で描いた山水、宴席の寄合書画、そして下絵と本画の対。中国の文人の理想を、日本の職業画家たちはどう引き受けたのか。池大雅・谷文晁・椿椿山の九幅で、三世代にわたる日本の文人画のねじれと魅力をたどる。

  • 美術史・技法

    祭壇画は、なぜ切り離されたのか——シモーネ・マルティーニと金地の板

    金地に聖人が一人だけ描かれた小さな板絵。それはもともと、大きな祭壇画の部品だった。誰が、なぜ切り離したのか。寸法と銘記と来歴の記録を手がかりに、ニューヨークとワシントンに散った断片から、失われた祭壇の全体を推理する。

  • 展覧会・イベント

    印象派の前に立っていた三人——ミレー《七面鳥の群れのいる秋の風景》、コロー、クールベ

    ミレー、コロー、クールベ。印象派より一世代前の三人は、屋外で描き、身近な土地を選び、働く人を主題にした。その三つが揃ってはじめて、川辺の休日を描く絵が成立する。名古屋に並ぶ「印象派の前」を、九点の作品から見ておきたい。

  • 展覧会・イベント

    手のひらの下ごしらえ——ジョルジュ・スーラ《アニエールの水浴》のための習作

    スーラは屋外で小さな板に何十枚も描き、それを画室で大画面に組み立てた。採用されなかった馬の姿も、その板には残っている。完成作の下にある過程を、九点の習作と点描が完成した一枚からたどる。小さいことは欠点ではなく機能である。

  • 展覧会・イベント

    川べりの七年——クロード・モネ《アルジャントゥイユ》と水を描く目

    モネはパリ近郊のアルジャントゥイユに七年住み、同じ水辺を描き続けた。庭、橋、駅、そして海の断崖へ。九点を並べると、構図の型はほとんど変わらず、光と天気だけが入れ替わっていく。連作が生まれる前の、長い準備期間を見る。

  • 展覧会・イベント

    南の光とオリーブ——ファン・ゴッホ《オリーブ摘み》とアルルの一年

    銀色に光るオリーブの葉を、ゴッホは色を混ぜずに描き分けた。南フランスにいたのは二年三か月にすぎない。オランダの暗い畑から、パリの自画像を経て、アルルの黄と青まで。色の変化を九点でたどり、ゴーガンと過ごした二か月にも触れる。

  • 展覧会・イベント

    絵のなかの橋——ファン・ゴッホ《春の釣り、クリシーの橋》とモネ《アルジャントゥイユの橋》

    ゴッホは1887年、パリ郊外アニエールで橋のある川を描いた。翌年にはアルルで《跳ね橋》を描いている。画面の奥を横切る一本の線は、絵のなかで何をしているのか。モネ、ピサロ、スーラ、シスレー、広重の水辺と並べて、橋という主題の働きを確かめてみたい。

  • 画家を知る

    彫って、描いて——A・B・デュランドの三つの職

    名前と金額の並ぶ紙が一枚ある。画家たちがモデル代を出し合った教室の会計である。デュランドは彫師から肖像画家、風景画家へと移った。九点で三つの職を並べ、線という共通点を確かめる。森の大画面と、灰緑の紙の素描も並べて見ておきたい。

  • 画家を知る

    水彩は、決める道具である——ジョン・ラ・ファージ

    ラ・ファージの水彩は、旅の記録であり、色の覚書であり、ステンドグラスと壁画の下絵でもある。九点を用途で分け、決めるための紙という役目を確かめる。半円形の画面と、残りやすさにも触れておきたい。和紙を支持体にした一点にも触れておきたい。

  • 美術史・技法

    五脚が、同じ寸法である——ダンカン・ファイフの工房

    五脚の椅子が、数ミリの差で揃っている。ダンカン・ファイフの工房は、手仕事で規格を実現していた。八点を寸法で並べ、揃いの椅子と大型家具の作りを読む。張り地と帰属の扱いにも触れておきたい。材の使い分けと分業の仕組みも確かめる。

  • 美術史・技法

    型で押すか、手で吹くか——19世紀アメリカのガラス

    型に押し込んで作る器と、手で吹いて作る器。19世紀アメリカのガラス工場は、両方を使い分けていた。九点を技法で分け、色の工夫と代用品の設計を確かめる。会社名しか残らない記録にも触れておきたい。型の合わせ目という手がかりも示しておく。

  • 美術史・技法

    窯に、委ねる——アメリカの美術陶器

    口をつぶした花瓶、素焼きのまま残した鉢、流れる釉。19世紀末アメリカの三つの窯は、工場と違うものを別々の方向で作った。九点を並べ、偶然を作品に含める方法を読む。日本の器の参照にも触れる。底の印が画像から読めない問題にも触れておきたい。

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