書く人と、書かれた物と、書く道具——仇英・杜堇・尾形光琳ほか九点
記録の中の書くの語で九点を集めた。書く姿が主題なのは三点で、東アジアの絵に偏る。残りは写本の一葉と、硯箱や文具台である。九点で、書く姿勢と道具の形を並べたい。東アジアの四点では書く人が描かれ、ヨーロッパの五点では一人も描かれていなかった。

巻物の中で、筆を持っている
きわめて横に長い一点である。
館の記録によれば、全体の長さは553.6センチある。
高さは21.1センチしかない。
つまり、縦の二十六倍である。
館の画像には、その一部が写る。
右側に、文字が細かく並ぶ。
その左に、絵がある。
木が数本立ち、低い岡が続く。
その手前に、人物が何人かいる。
一人は、机に向かって座る。
手に筆を持つ。
その前に、紙が広げられている。
まわりに、立って見ている人がいる。
さらに左には、荷物を運ぶ人らしい姿がある。
色は薄く、墨の線が主である。

巻子という形式について、少し書いておきたい。
紙を横につなぎ、軸に巻く。
見るときは、両手で少しずつ繰る。
一度に見えるのは、腕の幅ほどである。
だから、五メートルを超える長さでも扱える。
そして、右から左へ進む。
文字が先にあり、そのあとに絵が来る。
読んでから見る、という順序になっている。
第十七回で、一点の単位を扱った。
巻子は、全体で一点である。
だが、一度に全部を見ることはできない。
館の画像も、一部しか写していない。
館の記録は、この場面の由来を書いている。
十四世紀の書家が、ある僧のために経を書き写した。
その報酬が、茶だったという。
そして、この絵は十六世紀の画家が、注文に応じて描いたものだと記録は書く。
これは館の記述である。
こちらで確かめられるのは、筆を持つ人がいる、ということだ。
九点を選ぶとき、記録に書くの語があるものを拾った。
すると、三種類のものが集まった。
書いている人。
書かれた物。
そして、書くための道具である。
順に並べたい。
書く姿が、絵になる

館の記録は、寸法を三つ書いている。
画面が147×104.5センチ。
表装を含めて301.6×127.6センチ。
軸端まで含めると、幅が134.6センチになる。
縦は、画面の二倍を超える。
上下の裂が、それだけ長い。
大きな掛軸である。
画面だけで、縦147センチある。
表装を含めると、三メートルを超える。
九点でいちばん大きい。
画面の上半分は、芭蕉の大きな葉である。
太い葉脈が、放射状に伸びる。
その奥に、岩がある。
下半分に、人物が数人いる。
右に、老人が座る。
その前に、若い人物が机に向かう。
筆を持ち、紙に向かっている。
左に、女性が一人立つ。
さらに左に、もう一人座る。
地面には、草が生える。
館の記録の札には、書くの語がある。
題によれば、古い書物を口伝えで伝える場面である。
老人が語り、若い人物が書き取る。
つまり、この絵には二つの行為がある。
話すことと、書くことである。
そして、書く人は下を向く。
第七回で、手が何をしているかを数えた。
手の話では、手の行為が主題を決めていた。
書く場面では、筆を持つ手が中心にある。

館の記録は、画面と全体の寸法を分けている。
画面が39.8×56.9センチ。
全体が67.6×71.4センチである。
画帖の一葉は、台紙に貼られる。
その台紙まで含めた寸法が、全体になる。
第十七回で、画帖の一葉の数え方を扱った。
一冊が散らばると、一葉ずつが一点になる。
横長の画面である。
左右に、高い山がそびえる。
山肌は、細かい点と短い線で埋まる。
中央に、松の木が数本立つ。
幹が曲がり、枝が横に広がる。
その根元に、小さな建物がある。
屋根の下に、人物がいるらしい。
だが、非常に小さい。
判別は難しい。
右上に、文字が数行書かれる。
館の記録によれば、この作者は生涯の多くを隠棲して過ごした。
そして、この絵がそれを表しているという。
これは館の記述である。
題には「書を書く」とある。
だが、書いている姿はほとんど見えない。
見えるのは、山と松と建物である。
第十九回で、遠くの人は点になると書いた。
遠くの人の話で見たとおり、大きさが情報量を決める。
ここでは、書く人が景色の一部になっている。
書く行為が、山中の暮らしを示す印として使われている。

正方形に近い画面である。
上のほうに、青と緑の点で葉が描かれる。
大きな木が、画面の中央を占める。
幹はねじれ、枝が横へ伸びる。
その根元に、岩がある。
左下に、二人の人物が座る。
一人は、白い衣を着る。
もう一人は、その前で身をかがめる。
二人の前に、平たいものが広げられている。
紙だろうか。
左上に、小さな建物の屋根が見える。
右下に、赤い印がある。
館の記録によれば、これは二十枚からなる画帖の一枚である。
風景、人物、花が含まれるという。
そして、晩年の作の特徴が書かれている。
これは館の記述である。
三点を並べると、共通することがある。
書く人は、木の下にいる。
そして、屋外である。
机は、簡単なものか、地面に近い。