一つの部屋に、十五人——イーストマン・ジョンソン
一つの部屋に十五人。イーストマン・ジョンソンの集合肖像は、住まいそのものを記録している。八点を支持体で分け、画布、ボード、厚紙、紙という条件の違いを確かめる。公開分の偏りにも触れておきたい。集合肖像にかかる時間と費用にも触れておく。

一つの部屋に、十五人いる
一枚の絵から始めたい。

横長の大きな画面である。縦121.9センチ、横186.4センチ。
描かれているのは、一つの部屋である。
奥に大きな窓があり、赤い厚手のカーテンが左右に下がる。上部に飾り布が渡る。
窓のそばに、白いレースのカーテンが二重に掛かる。
部屋の左には暖炉があり、その上に絵が掛かる。右には本棚と扉が見える。
床には赤い模様の敷物が敷かれる。
そして、この部屋に人が十五人ほどいる。
誰が、どこにいるか
人の配置を確かめたい。左の隅に、若い男が椅子に座る。脚を組み、こちらを見る。
その右に、黒い衣の女性が二人。並んで座り、一人は手元を見る。
中央の卓には、白い衣の女性が座る。膝に幼い子を抱く。
その奥に、年配の男が立つ。黒い上着で、手を背に組む。
右側では、男が本を持って立つ。その足元に子どもが二人、床に座る。
さらに右の隅に、若い女性が椅子に腰かける。
つまり、三世代が同じ部屋に収められている。
十五人を、どう配置するか
構図の課題を考えたい。一つの画面に十五人を入れると、顔が小さくなる。
かといって重ねすぎると、誰が誰か分からない。
この画面では、人物を三つの群に分けている。左の群、中央の卓、右の群である。
群と群のあいだには、家具や空間が入る。
つまり、区切りながら並べる構成である。
光は、窓から来る
光の設計も見ておきたい。奥の窓から、光が手前へ差し込む。
床の一部が明るく、左右の壁は暗い。
つまり、光源が画面の中に描かれている。
その結果、部屋の奥行きが分かる。窓の位置が空間の基準になる。
家族の記録として
主題について整理したい。これは一家の集合肖像である。
題名は家の名を示している。つまり、注文されて描かれた作品である。
家具、敷物、カーテン、壁の絵。室内の設えも丁寧に描かれる。
人物だけでなく、住まいそのものが記録されている。
家の記録としての肖像については、
別のコラムでも扱った。
描いたのは、誰か
作者はイーストマン・ジョンソンである。1824年にメイン州で生まれ、1906年に没した。
若い頃は肖像の素描で生計を立て、その後ヨーロッパへ渡って学んだ。
デュッセルドルフ、ハーグ、パリで数年を過ごしている。
帰国後はニューヨークで活動し、肖像と風俗の両方を手がけた。
つまり、ヨーロッパの訓練を受けた画家である。
室内を描くという系統
主題の系統にも触れておきたい。室内の場面を描く絵は、17世紀オランダに厚い蓄積がある。
窓からの光、床の敷物、壁に掛かる絵。要素の構成が似ている。
この画家は、その伝統を学んだうえでアメリカの家庭を描いている。
つまり、型は借り、中身を入れ替えている。
型を借りる方法については、別のコラムでも扱った。
問い——室内は、何を語るのか
ここで問いを立てたい。この画家の主題は、室内が多い。
家族、台所、暖炉のそば。屋外の場面は少ない。
では、室内を描くことで何が記録されるのか。
当サイトにはイーストマン・ジョンソンの作品が22点公開されている。
並べて確かめたい。
暖炉のある部屋
もう一点、室内を見たい。

先の一点より小さい。縦52.7センチ、横68.6センチ。
部屋の左に、大きな暖炉がある。石造りで、口が広い。
その中で火が燃える。赤い光が床に落ちる。
暖炉の前に、男が椅子に座る。緑の上着で、前かがみになり、火を見ている。
右には女性が二人。一人が帽子を高く掲げ、もう一人がそれを見る。
奥の棚には、瓶や道具が並ぶ。
つまり、新しい帽子を見せ合う場面である。
支持体が、画布ではない
材料に注目したい。記録は「アカデミーボードに油彩」と書いている。
アカデミーボードは、画布を貼った厚紙、または下地を塗った厚紙である。
画布より安く、軽い。習作や小品によく使われた。
つまり材料の選択が、その作品の位置づけを示している。
材料と用途の関係は、別のコラムでも扱った。
火と光を、どう描くか
技法にも触れておきたい。暖炉の中の火は、赤と橙で塗られている。
その光が、床と男の顔に反射する。
つまり画面には、二つの光源がある。窓からの光と、火の光である。
明るさの方向が二つあると、影の形が複雑になる。
台所仕事の場面
主題の幅も見ておきたい。

縦長の画面である。縦61センチ、横35.6センチ。
女性が一人立つ。白い上衣と、青灰色の長いスカートである。
右手を高く上げ、浅い鉢を持つ。中身を撒こうとしている。
その足元に、黒い七面鳥がいる。首を伸ばし、鉢を見上げる。
赤い肉垂れが、黒い羽の中で目を引く。
背景は白い壁で、右下に暖炉らしき暗い口が見える。
パステルという材料
材料をもう一度見たい。この一点は油彩ではない。紙にパステルで描かれている。
そして、その紙は画布に裏打ちされ、木枠に張られている。
つまり、油彩と同じ扱いで飾れるように仕立てられている。
パステルの粉は落ちやすい。だから通常はガラスで覆う。
材料が変われば、保存の方法も変わる。