COLUMNSコラム: 画家を知る

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    顔だけが、仕上がっている——ジョン・ホプナー

    顔は完成し、衣は白く塗られただけ。未完成の一枚は、どこから描き始めるかを教えてくれる。もう一枚は裏に子どもの頭部があるが、裏打ちの布に隠れて見えない。保存と公開のあいだの判断まで、六枚の記録が残している。

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    シカゴに集まった七枚——ピエール=オーギュスト・ルノワール

    姉妹、昼食、曲馬団の少女、ピアノ、花、海、湖。主題はばらばらだが、いずれも七年のあいだに描かれた。そして三つの個人収集を経て、いま一つの館にある。離れて見て、近づいて見る。その往復がこの画家の絵の楽しみである。

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    背景を消して、人だけを残す——フランシスコ・デ・ゴヤ

    初期の二枚には庭があり、山があり、犬がいる。ところが一八〇〇年代の六枚では、背景がただ暗い。人物だけが闇から浮かぶ。三十年の八枚を並べ、何が消え、何が残ったのかを見る。手が何を持つかにも注目したい。注文の絵という条件の中の工夫が、そこに表れている。

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    板の縁が、制作を語る——ハンス・メムリンク

    館の記録には、寸法が二つ並ぶことがある。全体と、絵の具の載った面である。その差は、板を枠に嵌めてから描いた証拠になる。額と一体の丸い板、失われた中央の一枚。八点の板絵から、五百年前の作り方を読む。記録があるから、見えないものも知ることができる。

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    二色か三色で、摺る——鳥居清満

    紅と緑、そして墨。使える色が三つしかない時代の版画である。色ごとに版を彫るから、増やせば費用が増す。細判、柱絵、横大判という三つの判型を八枚で見ながら、多色摺へ移る途中の姿を確かめたい。完成形より、途中のほうが仕組みが見える。

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    紋で、役者を示す——鳥居清信

    顔は似せていない。目は細い線、鼻は短い線、口は小さな点である。では、誰か分かるのか。衣に染め抜かれた紋が答える。似顔絵が生まれる七十年前の役者絵七枚を、筆で色を挿した丹絵から柱絵まで並べて見る。始まりの形が、そこにある。

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    緑と黒のあいだ——ジョン・ホワイト・アレクサンダー

    画面の三分の一を、白い布が占める。暗さで隠し、光で溶かす画家の八点である。同じ構図の下絵と本画が揃った二枚を比べ、色数を絞って調子だけを残す方法を確かめる。詩人の肖像と、例外的な一枚の風景も含めて八点を並べる。題の色の順が入れ替わる点にも触れる。

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    滑稽な詩を、線だけで——ジョン・W・エニンガー

    上端が弧になった画面に、二人が誓いを立てる。英国の滑稽詩に付けるための素描である。物語の筋をたどりながら、色を使わず線だけで場面を組み立てる挿絵の仕事を六点で見る。上端が弧になっている理由も、本の作りから説明できる。

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    肖像画から、望遠鏡のレンズへ——アルヴァン・クラーク

    眼鏡の細い枠を描いた肖像がある。同じ人物が、のちに望遠鏡のレンズを磨く仕事へ移った。六点の絵を見ながら、細部を追う手つきが二つの仕事をどうつないだのかを考える。転じた理由は記録に明示されていない。分かることだけを書く。

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    隙間を、果物で埋める——セヴェリン・ローゼン

    卓の上に、花と果物が山のように積まれる。隙間を残さないことが、この画家の方針だった。咲く時期の揃わない花が同じ画面にある理由や、没年に疑問符が付く記録まで含めて六点を見る。移民としてこの国へ渡った経歴にも、短く触れておきたい。

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    壁を、実物大に描く——ウィリアム・マイケル・ハーネット

    紐で留められた手紙、机の上の道具、硬貨。板の壁を実物大で描き、触れそうな距離まで寄せる。だまし絵の八点を、輪郭の締め方と影の落とし方から見る。同時代の画家との関係にも触れる。紙の折り目や擦り切れまで描き込む執念が、画面を支えている。

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    納屋と鍛冶場の、暗い隅——エリファレット・F・アンドルーズ

    納屋の隅、鍛冶場の内部。いずれも暗く、小さな画面である。九点すべてが習作の性格を持つ。壁に掛かった道具を数えながら、職人の仕事場を描くという主題を見ていく。小さな画面に何を入れ、何を省いたか。その判断を追いたい。

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    十八歳が描いた、川沿いの屋敷——トマス・K・ウォートン

    川の対岸から屋敷を見る。同じ場所を、角度を変えて七枚。帆船を浮かべ、岩を手前に置く構図の作り方を追う。描いたのは十八歳の若者で、依頼主の名も記録に残っている。同じ場所を繰り返し描くことで、土地の形が立ち上がってくる。

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    木立の下の白い像——ジェームズ・キャロル・ベックウィズ

    庭園の木立の下に、白い彫像が立っている。木漏れ日を色で描き、影に青を置く。肖像画家として知られた人が、晩年に庭ばかりを描いた九点である。彫像が人の代わりを務めている。制作は一九一〇年から一三年に集中している。台と像の関係にも注目したい。

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    柱の欠けを、そのまま描く——ヘンリー・ベーコン

    水彩で描かれた遺跡の柱。崩れた部分も、欠けた角も、修復されない姿のまま画面にある。制作年が分からない理由に触れながら、九点を通して記録としての水彩を考える。遺跡を正面から描くという選択が、何を残したのかを考える。石の欠けを色で示す手つきも見たい。

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    一つの川を、九枚でたどる——トマス・アディソン・リチャーズ

    一八五二年、一人の画家が一つの川に沿って歩き、九枚の素描を残した。案内書のための写生であり、画面には必ず地名が書かれている。遠くの山を一本の線で示す省略まで含めて見る。旅の順に並べると、一日の移動の距離まで見えてくる。

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    輪郭を、機械で写す——サン=メマン

    縦五十四センチ、ほぼ実物大の横顔である。装置で輪郭を写し取り、そこへ下塗りを引いた紙で仕上げる。六点を並べ、機械を使う肖像とは何かを考える。先住民の男性を描いた一枚にも触れる。実物大に近い横顔は、写真以前の記録として作られている。

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    真横だけを、灰色の紙に——ジェームズ・シャープルズ

    描かれた人物は、いずれも真横を向く。同じ寸法の灰色の紙が九枚。輪郭だけで人を見分けさせる方法と、中間色の紙を使う理由を、家族の肖像まで含めて確かめる。家族が同じ仕事を続けたため、誰の手による一枚かが記録で揺れる点にも触れる。

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    同じ寸法で、七人を描く——ジョン・ウォラストン

    縦七十六センチ、横六十四センチ。七枚が、まったく同じ寸法である。規格が値段を決め、型が制作を速める。植民地期の北米を巡回した肖像画家の九点から、目の形の癖と布の襞の描き方を見る。型で描くとはどういうことかが、九枚を並べると分かる。

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    塗り残しのまま残る肖像——ジョン・ウェズリー・ジャーヴィス

    顔だけが仕上がり、周囲は画布が見えている。完成しなかった一枚から始めて、同じ画家の九点をたどる。どこから描き始めるか、背景をどうぼかすか。制作の順序が、そのまま画面に残っている。軍装の一枚では、仕上げられた画面との差もはっきりする。

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