COLUMNSコラム: 画家を知る

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    箱ごと撮影された自画像——ヘンリー・B・ブーヌトー

    肖像は、革の箱に収まったまま撮影されている。港町チャールストンで描かれた九点を、台紙の色、髪型が示す年代、そして一九四六年の受け入れ記録まで含めて見る。都市の成り立ちにも触れる。妻と子どもを描いた作品も含まれ、家族の記録にもなっている。

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    顔は、一センチ半——ジョン・ラメイジ

    縦四センチ半の肖像の中で、顔が占めるのは一センチ半ほどである。建国期のニューヨークで注文を受けた画家の九点を、金の枠に刻まれた線や軍服の描き分けまで含めて見ていく。手のひらに載る肖像が、当時どう使われたのかも考える。金の枠の刻みまで含めて見たい。

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    縦八センチの象牙に、顔を置く——エドワード・グリーン・マルボーン

    縦八センチほどの楕円の中で、顔は三センチしかない。象牙の薄板に水彩で描く技法と、その材料の来歴に触れながら九点を見る。三十歳で亡くなった画家が、その短い期間に何を積んだかを確かめる。色のない記録写真しかない一点も、そのまま紹介する。

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    青い紙に、枯れた季節を——ジャーヴィス・マッケンティー

    葉の落ちた木、対岸の湖、低い光。緑の盛りではなく、枯れた季節ばかりを選んだ画家の写生帖である。中間色の青い紙を使う工夫を含め、帖のまま撮影された九点を順に見ていく。紙の色が、そのまま画面の中間の調子として働いている。落とした葉の一枚まで線で追う。

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    銀行に勤めながら、台所を描く——フランシス・ウィリアム・エドモンズ

    七面鳥の羽をむしる手、鍋の前に立つ人。日々の場面を描いた画家は、本業を別に持っていた。綴じられたままの写生帖を含む九点を並べ、兼業という条件のもとで積み上げられた仕事を見る。三人をどう配置するかという、構図の判断も追いたい。

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    ペンとインクで、運河を引く——アンドリュー・フィッシャー・バナー

    帆をたたんだ舟、水面に落ちる影、鐘楼の垂直。色を使わず、線の密度だけで明暗を作った九点を見る。空をほとんど描かないこと、壁の面をどう示すか。ペンという道具の限界と工夫が並んでいる。没後に妻から寄贈された一群でもある。

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    肖像画家が、山で写生する——ダニエル・ハンティントン

    正装の肖像を一枚見たあと、同じ画家の写生帖へ移る。同じ寸法の紙が八枚、見開きのまま撮影されている。綴じ目をまたぐ稜線、一本で引かれた山の線。注文仕事の裏側にある手の動きを見る。注文の絵と写生帖では、線の速さがまるで違う。同じ手が、二つの調子を持っている。

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    立ち上がる馬を、石に描く——オラース・ヴェルネ

    前脚を上げた馬が、いままさに走り出す。十九世紀初めのフランスで、石版画という新しい技術にいち早く手を出した画家の六点。動きをどう止めて見せるか、そして石に描いて摺るとはどういうことかを見る。馬という主題を選び続けた理由にも触れておきたい。

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    上が丸い板に、対の夫婦——ヨース・ファン・クレーフェ

    上端が半円になった板が二枚、向かい合う。手袋を持つ男と、数珠を持つ女。緑の背景と、緑の衣。十六世紀のアントウェルペンで、絵が商品として売られた町の作法を、六点でたどる。二枚を並べて初めて意味が通る、対の肖像という形式である。手袋と数珠が、それぞれの役割を示す。

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    ロンドンへ行かなかった肖像画家——ヘンリー・レイバーン

    十八世紀の英国で、肖像の注文はロンドンに集まった。それでもエディンバラに留まり、地元の顔を描き続けた画家がいる。赤い軍服の塗り方、子どもの手、幅のある制作年。九点で、その仕事の質を確かめる。地方に残るという選択が、何を可能にしたかを考えたい。

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    版で摺らず、筆で挿す——奥村利信

    色は版で摺られていない。摺り上がった墨の線に、あとから筆で色を置いている。丹の橙、黒の光る漆絵。八点を並べ、色版が生まれる前の版画の作り方を見る。記録の年代が合わない点も、そのまま書いておく。一枚ずつ手で塗るという、量産以前の版画である。

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    顔で、紙を埋める——勝川春英

    大判の紙の半分を、役者の顔が占める。額の皺、への字の口、見開いた目。似せることより、崩すことに寄っていく九点を並べた。悪役の顔と、細判に戻ったあとの仕事まで追うと、大首絵という型の幅が見えてくる。版元の企画としての役者絵という前提も、あわせて確かめたい。

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    磨いた表面と、残した筆跡——ジャン=レオン・ジェローム

    筆の跡を消した大作と、跡を残した小品。石が肉になる場面から、虎、モスク、狩りの肖像まで六点を見る。東方主題をめぐる問題にも触れる。仕上げは技術の限界ではなく選択である。近づいて、表面そのものを見てほしい。

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    帖の一葉と、扇の面——陳洪綬

    十二葉のうちの一葉、十二面の扇のうちの一面。見えているのは全体のごく一部である。明末清初の画家の六点を、画面の形と余白から見ていく。扇の折り目、朱の印、賛の位置。制約と作法が、画面の組み立てを決めている。

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    青い紙に、地中海を描く——ウィリアム・スタンレー・ハセルタイン

    空を塗らずに、紙の青をそのまま使う。ローマに住んだ米国の画家が残した油彩と水彩と素描、九点を見る。材料が変わると、同じ景色がどう変わるか。重い油彩と、軽い水彩。娘の手で館に渡った九点から、二つの重さを見比べる。

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    部屋にはめ込むための絵——フランソワ・ブーシェ

    四隅を落とした横長、楕円、正方形。六点で五種類の画面の形がある。形を先に与えられた絵が、どう組み立てられたか。十八世紀の装飾画の作りを見ていく。雲と幼児と薄紅色。明るい色を選ぶのは、部屋を暗くしないための判断でもある。

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    四センチの肖像と、波止場の群像——ジョン・カーリン

    耳の聞こえない画家が、象牙に描いた細密画と、画布に描いた風俗画。縦四センチから五十センチまで、九点の寸法を追う。写真に押された細密画の終わりにも触れる。小さな仕事で鍛えた精度が、大きな画面の隅にも同じ丁寧さで残っている。

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    紙に描いた、空だけの絵——シモン・ドニ

    十八世紀の終わり、売るあてのない紙に空だけが描かれた。戸外で短時間に仕上げた習作六点を見る。次の世紀の絵を準備した、地味な蓄積の記録である。題は場所ではなく、時刻と天候である。何を主題とするかが、そこで変わった。

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    写真に仕事を奪われてから——エラストゥス・ソールズベリー・フィールド

    一八三〇年代の肖像と、後年の巨大な建築の空想画。写真の普及で仕事を失った画家が、次に何を描いたか。九点で、九十五年の生涯の前後をたどる。見たものは近く、見ないものは遠い。人の大きさが、その距離を示している。

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    割れた卵と、伏せた目——ジャン=バティスト・グルーズ

    床に転がる卵、それを直そうとする子ども。物語を語る風俗画で名を上げた画家の六点を見る。歴史画への挑戦と、量産された頭部の絵にも触れる。目の向きだけで感情の種類が決まる。型と知って見ても、効果は消えない絵である。

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