COLUMNSコラム: 画家を知る
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画家を知る
円い青銅に、横顔を留める——オーリン・レヴィ・ワーナー
数ミリの起伏だけで顔を示す肖像浮き彫り。素描から立像まで九点を並べ、輪郭線という一貫した主題を追う。太平洋岸北西部で作られた三点についても書く。記録としての価値と、記録する側の立場。その両方を分けて書いておきたい。
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猿が、人を演じる部屋——クリストフ・ユエ
音楽会、踊り、釣り、そして絵を描くこと。人の服を着た猿が、人の営みを繰り返す六点。四隅を落とした画布の形から、もとの部屋を想像する。自分を笑う絵を壁に掛ける。その皮肉が装飾として成り立つ理由も考えてみたい。
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同じ大きさの海を、何枚も——トマス・チェンバーズ
七点がほぼ同じ寸法で、水面はどれも白い線の連なりでできている。規格で描かれた港と嵐と湖。線の引き方の違いだけを追って、九点を見ていく。版画から借りた構図を、自分の色で描き直す。量産と手仕事は矛盾しなかった。
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板の表と裏に、別の絵——ベルンハルト・シュトリーゲル
表に夫婦の顔、裏に二つの家の紋章。板絵の裏面まで公開された六点から、両面の絵という形式と、後世に加えられた補強の跡を読む。祭壇画の翼二枚も加え、織物と木と金という、三つの異なる面の描き分けを見ていく。
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金属に、顔を刻む——モーリッツ・フュルスト
直径六センチの円盤に、海戦と横顔が浮き彫りにされている。議会が贈るメダルから、大統領の銀メダル、産業の賞牌まで。九点で、円という枠の中の仕事を見る。顔を彫るか、木を彫るか。小さな円盤に、新しい共和国の考え方が刻まれている。
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使い古したものを描く——ジョン・フレデリック・ピートー
擦り切れた本、剥げた扉、へこんだ薬缶。新しいものが一つも出てこない九点を見る。別人の署名が入った一枚をめぐる、帰属の問題にも触れる。古びは、質感であり時間である。傷んだものを選ぶのは、実際的な判断でもあった。
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手のひらの宮廷肖像——コルネイユ・ド・リヨン
縦十八センチに満たない板に、宮廷の人々の顔がある。緑の背景、黒い衣、四分の三の角度。七点に共通する型と、目の置き方だけで生まれる差を見ていく。名前の失われた六点も含め、板を継ぎ足した跡や来歴の記録まで合わせて読む。
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背景に、商品と土地を描く——ラルフ・アール
扉の奥に反物を積み、窓の外に自分の町を描く。英国で学び、コネティカットへ戻った画家の九点。背景の選び方に、注文主が何者でありたかったかが出ている。英国時代の二点も並べ、注文主が変われば絵がどう変わるかを見比べていく。
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居酒屋と衛兵所を、描き続ける——ダフィット・テニールス
薄暗い室内に、卓と壺と犬。同じ主題を二十年以上描き続けた画家の七点を見る。床に何が置かれているかを追うと、絵の性格がはっきりしてくる。農民画を買ったのは農民ではない。描かれる側と買う側のずれにも触れておきたい。
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役者と女、二つの畑を耕す——歌川豊国
一人を大きく描く役者絵と、大勢を小さく描く三枚続き。歌川派を江戸最大の流派にした絵師は、その両方を並行して手がけた。九点で、仕事の幅を確かめる。一人を大きく描く技術と、大勢を小さく描く技術。その両方が流派の基礎になった。
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二十二キロの鉄をつくる——コールマン・ヘルムシュミット
アウクスブルクの甲冑師が残した九点。皇帝の腰当ては片方四百八十二グラム、馬上槍試合の兜は四キロを超える。数字と部品から、着て動くための道具としての甲冑を見る。顔の形をした面頬や、少年用の兜も残る。守る道具が、見せる道具にもなっていく。
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暗い背景に、家族を並べる——ジョシュア・ジョンソン
記録に残る最初期のアフリカ系の職業肖像画家とされる人が、港町ボルティモアで描いた八点。正面を向く顔、薄い影、家具の縁の金色の鋲。繰り返される型から、一人の職人が見えてくる。顔ではなく手を追うと、繰り返される癖から一人の画家の輪郭が浮かんでくる。
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壁だったものが、九枚になる——ベルナルディーノ・ルイーニ
十六世紀の壁画が、寸法のばらばらな九枚として残っている。夫婦の物語を九場面に割り、緑の風景の中に人を点として置いた。部屋を失った絵の見方を考える。寸法のばらつきは、窓や扉のあった壁の記憶である。額に入った壁を、順に見る。
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手のひらに載る、絹の歌仙——狩野昌運
縦十八センチの色紙に、歌人が一人ずつ座っている。顔の線は三本ほどしかないのに、装束と姿勢で人が分かれる。狩野派の小さな仕事を、九葉並べて見ていく。大画面の華やかさはないが、一センチの顔に線を三本引く精度がここにある。
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同じ寸法で、九人の女神を——ジュゼッペ・ファニャーニ
一八六九年、同じ大きさの絵が九枚描かれた。詩神を一人ずつ、持ち物と姿勢だけで描き分けている。うち七枚は白黒の記録写真しかない。制約の中の工夫を、九枚並べて確かめる。同じ背景、同じ衣。変えられるのは姿勢と持ち物だけという条件の中の仕事である。
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イタリアで、肖像の型をつくる——アンソニー・ヴァン・ダイク
一六二一年、若い画家が南へ発つ。以後六年、ジェノヴァを拠点に注文をこなすうちに、垂れる幕と黒い衣とずれた姿勢という型ができていく。九点で、その六年の変化をたどる。顔から入り、衣を見て、最後に背景を見る。その順で並べると変化がよく分かる。
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十か月で消えた絵師——東洲斎写楽
記録に残る作画期間は、およそ十か月。雲母を撒いた背景に、大きすぎる手を描いた絵師がいた。似せながら崩す九点をたどり、版元の企画としての役者絵と、百年後に刷られた同じ図を見る。顔を似せながら、釣り合いを崩す。それでも誰か分かる綱渡りが、そこにあった。
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はがき大の、旅の記録——ジョージ・エルバート・バー
縦8.7センチ、横25.1センチ。名刺を三枚並べたほどの紙に、朝の山並みが三層の色で置かれている。版画家バーがヨーロッパを回った四年間の記録を、手のひらに載る九点でたどる。完成作として作られていないのに、そのまま作品として通用する。
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同じ像が、何度も生まれる——フレデリック・レミントン
同じ題の像が三つある。1899年鋳造、1910年鋳造、そして作者の没後1918年の鋳造。彫刻は複製できる。絵とは決定的に違うその性質を、レミントンの九点から考える。作られた時と、この個体が生まれた時は違う。複製できることは、力でもある。
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76センチと8センチ——ヘンリー・インマンの肖像
十九世紀前半の肖像には、二つの大きさがあった。壁に掛ける縦七十センチの油彩と、首から下げる縦八センチの象牙。同じ画家がその両方を手がけていた。写真が来る直前の九点を並べる。公の顔と、私的な顔。寸法の違いは仕事の違いでもあった。
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