COLUMNSコラム: 作品を知る
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名前が、いまも買い続けている——チェスター・デイル・コレクションと同名の基金
コレクションとして九十二点、基金として十八点。そして基金は二〇二五年の受け入れにも現れる。裏打ちに覆われて見えなくなった書き込みを、記録だけが残している一点についても書きたい。制作年と受入年の差を並べると、収集の姿勢が見えてくる。
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作者の欄に、名前がない絵——ガービッシュ夫妻の寄贈208点
アメリカ、十九世紀。ある姓のリムナー。おそらく誰それ。頭文字だけ。七十点以上で個人名が分かっていない。寝台用の布、綿ビロード、ガラス。手近な材料に描かれた絵の、記録の書き方を読みたい。画面に五者の名が書き込まれた汽船の絵から始めたい。
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五十年にわたって、同じ一行——クレス・コレクションの310点
一九三九年に百二点、一九五二年に九十二点、一九六一年に八十一点。年を書けば一回だけを指すことになる。金地の板から布の油彩まで四百年。そして作者の欄に人名がない二点についても書きたい。かつて額に覆われていた範囲まで測った寸法欄についても書きたい。
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敬意を表して、という句——クロフォードの中国絵画、1981年と1988年
思い出に、は亡くなった人に使う。敬意を表して、は生きている人に使う。同じ年、同じ二人の名が、寄贈と購入の二つの行に別々の役割で現れる。画面が一メートル、巻物が八メートルという記録も読みたい。画面を埋める赤い鑑蔵印が何を語るかも読みたい。
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同じ名前が、二通りに現れる——ラスロップの寄贈と、その死後の購入
一九〇八年は「による寄贈」。一九一一年は「コレクション、購入、基金」。三年のあいだに、行の書き方が変わっている。生きているあいだは贈り、亡くなったあとは買われた。台紙に貼った広重の絵から読みたい。古い記録写真に写り込んだ館の札にも触れたい。
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出所の行が、主題を書いている——アーノルドのニューヨーク図画500点超、1954年
コレクションの名の中に、何を集めたかが入っている。版画と地図と図画。同じ湾を三度描いた水彩、通りを埋める群衆、日付と時刻まで題に入った油彩。六十年で都市がどう変わったかを、九点で読みたい。紙の種類の書き分けが、年代の手がかりになっている。
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寸法の欄が、全部同じである——ヤーネ兄弟の小柄700点規模、1943年
長さ九・七センチ、幅一・四センチ。鞘の溝が決めた規格である。作り手が変えられるのは厚さと装飾と材料だけ。赤銅、四分一、宣徳。金属の色を絵具のように使い分けた二百年を、九枚の板から読みたい。厚さと重さだけが一点ずつ違っていることにも触れたい。
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出所の行が、四語しかない——エリソンのアメリカ美術陶器、2018年
作られてから百年ほどしかたっていない。持ち主も一人か二人。だから行が短い。艶のない緑、崩された口、素地のままの橙、還元でしか出ない赤。記録は三語で片づけるが、見えているものははるかに多い。作者の欄が会社名になる作品と、個人名になる作品の差も読みたい。
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象牙の上の七センチ——グロリア・マニーの細密肖像300点超、2006年
縦横の比がほぼ一定で、大きさも七センチ前後に集まる。持ち歩くものだからである。裏に髪を納める部分を持つものもある。方眼紙の上で撮られた一点には、絵具の欠けが写る。一分野を覆う寄贈を読みたい。象牙という材料のいまの扱いにも触れておきたい。
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同じ顔が、九十一回出てくる——ハンティントンの寄贈、1883年
ガラス、磁器、青銅、銅、金鍍金、ファイアンス。材料も形もばらばらなのに、描かれている人物は数人しかいない。集めた軸が「誰の顔か」だと、館の分類はきれいに横切られる。四百点規模の偏りを読みたい。七十点に横顔の分類が付いている理由も考えたい。
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番号の差が、八である——タッカー製陶所ほかのカップと受皿
読点でつながれた二つの番号。その差が八なら、同じ受入に八客あったと推せる。差が一なら、一組ずつ振っている。書かれていない揃いの規模を、記号の構造から読み取る。二つで一件にする理由も考えたい。受皿が深く作られている理由にも触れたい。
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番号が、六つ並んでいる一件——組み合わせの甲冑、メトロポリタン美術館
受入年も出所も違う部品が、一領に組まれている。文化の欄には四つの国が並び、一九一三年にニューヨークで作られた部品まで入っている。補ったことを隠さずに書く。その記録の作法を読みたい。鎖の輪の直径まで測る欄が、何のためにあるのかも読みたい。
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揃物の名が、画面に刷られている——北斎《冨嶽三十六景》と広重《六十余州名所図会》
題箋という小さな枠に、組の名と一枚の題が入っている。版木に彫られているので、一枚だけになっても消えない。三十六景が四十六枚になった事情も含めて、企画の数と実際の枚数のずれを読みたい。判型がそろい、題箋の位置だけが構図に応じて変わる。並べたときの見え方まで考えられている。
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表に金、裏に金なし——狩野派、英一蝶ほか両面のある屏風
技法の欄が、表と裏で二つに分かれている。材料の差が、そのまま格の差である。二曲の低い屏風、屏風から外された一面、卓上から壁掛けに改められた石。用途が変われば分類まで変わる例を読みたい。公開画像に写っているのが表か裏かも、題の書き方から分かる。
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番号が、一つ違いで並んでいる——ベンティヴォリオ夫妻ほか対の肖像
同じ作者、ほぼ同じ寸法、姓が同じ。二枚を並べると、二人は向かい合う。ところが、対に見えて対ではない例もある。寸法が二十二センチ違い、年が七年離れている。記録の数字で対を見分ける方法を読みたい。対の片方だけが残り、題に役割の名だけが付いた一点もある。
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絵は五十六センチ、巻物は八メートル——文徴明、沈周ほかの巻子
画面と全体で、寸法が十倍以上違う件がある。差の大半は、後の人が書き足した文字である。紙を継げば、巻物はいくらでも伸びる。一件という単位の中に、四百年ぶんの時間が巻き込まれている。画面と全体の差が、そのまま後の時間の長さである。二つの数字を並べて読みたい。
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画帖の名が、書かれていない一葉——馬遠、馬麟、夏珪ほか九点
種別は「画帖の一葉」。ところが、どの画帖の葉かが書かれていない。もとの冊子が分からなくなっているからである。二十五センチ四方の絹に、八百年の変色。まわりを失った一葉の見え方を読みたい。添えられた細い紙に、後の人が書いた名も残っている。
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帳面に、番号が付いている——ウィリアム・トロスト・リチャーズの第七帖
題に「第七帖より」とある。七冊目、という意味である。同じ一冊のなかで、野の写生から海の写生へ主題が移り、鉛筆の頁とインクの頁が並ぶ。細い枠を引いた頁だけが、絵として閉じている。その差を読みたい。寸法がそろっているからこそ、描き方の差が見えてくる。
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横が、縦のほぼ三倍になる——冊の一葉に貼られた扇面
折扇の七点は、縦横の比が二.九倍から三.一倍に収まる。二百五十年のあいだ、形が動かない。円い二点は、寸法の書き方が縦横と直径に分かれる。形が記録を決めることを読みたい。年の欄が、か、で結ばれる一点もある。
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寸法が、三つの数字になる——十九世紀アメリカの椅子
高さ、幅、奥行き。絵画は二つで足りるが、椅子は前後の深さがなければ形が伝わらない。ところが座面の高さは書かれない。同じ会社の三点を並べ、立体の記録の限界を読みたい。幅と奥行きが、同じ数字になる一点もある。
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