COLUMNSコラム: 美術史・技法
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美術史・技法
白い地に、黒い渦を巻く——古代プエブロの土器
千年以上前の南西部で焼かれた壺と鉢である。釉薬は使わず、鉱物の顔料で直接描く。作った人の名は残らないが、その子孫にあたる人々はいまも暮らしている。館の記録が示すことと示さないことを、六点で確かめる。来歴の欄が空白であることの意味も、あわせて考えたい。
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美術史・技法
作者の名が、ない八枚——十八世紀のフランス絵画
作者の欄には、時代と地域だけが書かれている。美術館は分からないものを分からないと登録し、推測で名を当てはめない。紙に描いてカンヴァスに貼った下絵から、古代の主題まで。名の空白そのものを八枚で読む。名がなくても、作品は残る。
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美術史・技法
作者の名が、ない九枚——十八世紀アメリカの無名の絵
作者の欄には、時代と地域だけが記される。分からないものを分からないと登録する、誠実な記録である。八十年に分布する九点を並べると、正面性や平らな画面という共通点が見えてくる。名は失われても、絵は残っている。
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美術史・技法
皿の裏の文字が、題になる——ジャクソン兄弟の転写陶器
銅版に彫った絵を薄い紙に刷り、曲がった皿へ移す。同じ絵の皿が何百枚も作れる技法である。館の題は、器の裏に刷られた文字をそのまま採っている。宿、官邸、橋、運河、製鉄所。当時の名所が九枚に並ぶ。色があるのは一点だけで、残る八点の色は分からない。
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美術史・技法
家具の金具だけを、九点集める——十九世紀アメリカの真鍮
引き出しの取っ手、扉の飾り。家具の部品だけが美術館に収蔵されている。金鍍金の真鍮という材料と、型で量産する仕組みを見る。九点のうち四点が同じ記録写真である事情にも触れる。作者の生没年と制作年が合わない点も、そのまま記しておく。
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美術史・技法
日本からの使節を、メダルに刻む——十九世紀アメリカの記念章
一八六〇年、日本からの使節を迎えて作られたメダルがある。そこから始めて、建国の父の顔、造幣局と民間の注文、彫刻師の署名まで。十九世紀アメリカの記念章を九点で見ていく。小さな円い金属が、何を伝えるために作られたのかを考えたい。
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美術史・技法
十二センチの板に、使徒を写す——ヴァン・ダイクに倣う
縦十二センチほどの小さな板が九枚。館の記録は、いずれも「〜に倣う」とする。原画があり、版画があり、その版画を見て板に描いた誰かがいる。四つの段階をたどりながら、複製という仕事の輪郭を確かめる。誰が描いたか分からないまま残る絵の、扱い方も考える。
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美術史・技法
卓に古器を並べて、集う——朝鮮王朝の画帖八葉
卓の上に青銅の器と巻物が並び、その前に人が集まる。中国に由来する主題を、朝鮮王朝の絵師が描いた八葉の画帖である。虫損や剥落を抱えたまま残る紙を、失われた部分ごと見ていく。手元で開く絵の見方を考える。卓上の器の一つひとつに、描き手の関心が表れている。
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美術史・技法
フランスが刻んだ独立の記念——オーギュスタン・デュプレ
議会のメダルを、パリの職人が彫った。自由の寓意、月桂の冠、そして同じ横顔の繰り返し。原物と複製が混じる七点から、型と複製の関係を見る。電気鋳造の複製が一点混じる。記録の一行が、原物と複製の判断を支えている。
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美術史・技法
三つの町の甲冑師——ロッホナー、グロースシェーデル、ペッフェンハウザー
ニュルンベルク、ランツフート、アウクスブルク。同じ時期に王侯の注文を受けた三人の作を九点並べる。重さの数字と、肩当ての形から産地の違いを見る。後年の補修や組み合わせの記録も含め、記された事実にもとづいて読んでいく。
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美術史・技法
銀貨をつくる植民地——ジョン・ハルと松の木シリング
二文字の刻印だけの銀貨から、松の木を彫った貨幣へ。重さが価値そのものだった時代の五枚と、同じ職人が作った銀の杯。六点を数字から見ていく。削られない縁飾り、いびつな輪郭、手作業の誤差。三百五十年前の槌の跡を見る。
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美術史・技法
同じ時代の、二つの線——一筆斎文調と北尾重政
十八世紀後半の江戸で、役者絵と美人画を手がけた二人。裾の線の太さ、余白の取り方、摺物という別の仕事。九点を並べて、線の質の違いを確かめる。建築家の寄贈による一枚や、写り込んだ濃度見本といった細部にも触れておきたい。
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美術史・技法
細判の中の役者——勝川春好と勝川春英
縦三十二センチ、横十四センチ。細長い紙に立つ役者を、同じ工房で育った二人がどう描き分けたか。写楽と同じ時期の江戸の役者絵を、九点で見比べる。顔でも構図でもなく、まず線の太さを見る。そこに彫師と絵師の呼吸が出ている。
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美術史・技法
手のひらに、顔を持ち歩く——アメリカの肖像細密画
縦5.2センチの象牙に、顔が一つ。金の枠に輪が付いているのは、首から下げるためである。写真が来る直前まで、離れた人の顔を持ち歩く手立てはこれしかなかった。十点の細密画を見る。数が少ないほど、一つの顔は重くなる。
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美術史・技法
注文帳を、埋めていく——ロムニー、ホプナー、レイバーン、ローレンス
縦二メートル四十センチの画布に、白い衣の女性が立つ。十八世紀イギリスの肖像画は、型がほぼ固まっていた。その内側で四人の画家がどう差をつけたのかを、五十年分の九点から読む。型を壊すのではなく、型の内側で工夫する。それが注文仕事の宿命だった。
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美術史・技法
金地から、顔へ——ジョヴァンニ・ディ・パオロ、クリヴェッリ、ルイーニ、ロット
金地の前に聖人が立つ絵から、暗い部屋で本を開く修道士の顔まで。百年余りのあいだに、イタリアの板絵は記号から記録へ移った。四人の画家の九点を年代順に置き、その道筋をたどる。金が消えたことは、必ずしも進歩ではない。
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美術史・技法
板の上の、祈りの部品——ダヴィト、ファン・クレーフェ、フアン・デ・フランデス
縦21センチの板に、人物が八人。床の敷石も壁の織物も描かれている。これは祭壇画の部品であり、単独で見るために作られていない。散らばった板を仮に並べ直し、九点で祈りの絵を読む。祈りの絵は、置かれる場所とともに作られていた。
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美術史・技法
森に住んで、森を描く——ルソー、トロワイヨン、カザン
森の道を、人が一人歩いている。それだけの絵である。名所でも遺跡でも絶景でもない。主題の格を下げることで、その後の絵画が変わった。バルビゾンの画家たち三人の九点を年代順にたどる。日常の風景を描いてよい、という前提がここでできた。
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美術史・技法
戦わない武具——梅忠元重の矢の根と後藤家の小柄
矢の先端が透かし彫りになっている。これでは突き刺さらない。戦のない時代、武具の技術は装飾へ向かった。1645年在銘の矢の根と、赤銅に金を置いた刀装具。九点の小さな金物を見る。戦わない武具は、戦わないからこそ美しくなった。
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美術史・技法
川と工場を、同じ目で——ウィアとトワクトマンのコネティカット
灰緑色の風景に、塗りたての赤い鉄橋が突き刺さっている。ウィアとトワクトマンは、川も工場も同じ目で描いた。美しいものだけを選ばない風景画の姿勢を、コネティカットの九点から読む。自然と構造物を分けずに見る目が、この九点にはある。
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