COLUMNSコラム: 美術史・技法
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美術史・技法
牛は、値打ちを見せるために横を向く——カイプ・陳洪綬・ドーミエほか九点
九点の牛を数えると、働いている牛は二点しかなかった。三点は体の側面だけを見せ、二点は風景の中の数ミリの塊になり、一点は星座の記号になり、一点には三万フランという値段が書き込まれている。角の形が、そのまま土地の違いになっていた。
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美術史・技法
馬は、人を高くするための台になる——デューラー・カルル・ヴェルネ・ナダールほか九点
九点の馬を数えると、走っている馬は一頭もいなかった。前脚を上げて止まるか、四本の脚で立つか、首だけを見せるか。そして二点には馬がいない。槍を受ける甲冑と、鞭だけを持つ乗馬服の肖像である。速さで知られる獣が、絵の中では止まっている。
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美術史・技法
止まった画面に、時計が立っている——ブール・スリンゲラント・歌麿ほか九点
べっ甲と金のブールの置時計には「時は絶えず進む」という銘があるという。実物の時計と、手の中や塔の上に描かれた時計、題名のなかの時計。九点を数えると、最大も最小も実物の側で、絵の時計はいつも人の傍らにいた。針の指す時刻だけは、どの記録も書かない。
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美術史・技法
鐘は、題の中でしか鳴らない——池大雅・ロートレック・ライダーほか九点
鐘の絵を九点集めると、鳴っている鐘は一つもなかった。鐘楼には穴だけが並び、晩鐘も夜半の鐘も警鐘も、題と詩の中にしかない。器の形、花の名、人の名、会社の名。音を出す道具の名前がどこまで広がるのかを数える。
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美術史・技法
まっすぐ立つのは、疲れた人だけ——ブルトン・バスティアン=ルパージュ・北斎ほか九点の収穫
収穫の絵を九点集めて、どの瞬間が選ばれたかを数えた。刈っている最中の絵は一点もない。研ぐ、拾う、積む、摘む——絵は刈る前と後に偏り、働く体はほとんど曲がっている。麦だけでなく、蕨と葡萄、そしてトリュフの風刺まで並べた。
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美術史・技法
十二か月の絵は、一枚ずつ旅をする——ゴブラン工房・ベーハム・国貞ほか九点
一年を十二枚で描く、そろいの絵を九点集めた。六点がそろいを離れて来た一枚で、月は七つ来ていた。宮殿の壁の綴織から江戸の絵暦まで、大きさも使い道もまるで違う。焼かれた先代を持つ五月と、暦の字だけが一致した鉢の話も添えた。
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美術史・技法
正月の絵に、門松は立っていない——湖龍斎・呉彬・ベックマンほか九点
日の出の屏風の前に積まれた贈り物、柱に貼る細長い凧の絵、十メートルの巻物に描かれた迎春の行事。正月にまつわる九点を数えると、門松は一本も立っていなかった。飾りと遊びと商いと、裏返った祝いの言葉まで並べて読む。
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美術史・技法
祭りの絵は、行列の顔でやって来る——グアルディ・石鋭・ジローほか九点
祭りの絵を九点集めると、五点までが行列にかかわっていた。ヴェネツィアの凱旋車、瓜を引く虫たち、雛壇の三月、月を待つ巻物、名も日付も失われた湖畔の行列。何の日の絵かを記録に探しながら、祭りが絵になる形を数える。
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美術史・技法
ミルは、古びてから絵になる——ロイスダール・ミシェル・ハインほか九点
水車と風車の絵を九点集めて、機械が動いているかを数えた。動く証拠を持つのは、水がぼやけた写真の一点だけ。十七世紀の風車は現役で、十九世紀のミルは古びてから描かれた。挽く機械の語が、搾り小屋と金貨と紡績工場へ広がるまでをたどる。
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美術史・技法
糸の仕事は、うつむいた顔でできている——梁楷・北斎・ゴヤほか九点
蚕から布までを十四場面で描いた巻物から、砂漠に立てた織り機、レース編みの手元、そして編み物にたとえられた筆まで。糸の仕事の九点を数えると、顔を伏せた人ばかりで、染める場面と縫い上げる場面だけが欠けていた。
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美術史・技法
洗うか、干すか——ルペール・ドガ・広重ほか九点の洗濯
洗濯の絵を九点集めると、絞る場面も畳む場面も一つもなかった。あるのは水に触れる瞬間と、布が空にさらされる瞬間だけである。月の光で晒す修道院の庭、セーヌの洗濯船の階段、そして洗濯物にそっくりな干瓢の綱まで数える。
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美術史・技法
酒は写らず、酔いだけが写る——マンテーニャ・馬遠・木米ほか九点
混酒器の内側に描かれた軍船は、酒を注ぐと海を渡りはじめる。酒にまつわる九点を数えると、注がれた酒はどこにも写らず、器と、酔って傾いた体だけが残っていた。鍵の掛かる酒瓶入れから、金継ぎの酒注ぎまで並べる。
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美術史・技法
茶の絵に、茶は写らない——仁清・陳漢文・ティソほか九点
葉を仕舞う壺、皇帝の詩を彫った急須、渓谷で湯を沸かす扇の絵、そして茶の字が付いた木の刀。茶にまつわる九点を数えると、注がれた茶の色も湯気も葉も、どこにも写っていなかった。茶の絵とは、道具と時刻の名の絵である。
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美術史・技法
台所を台所にしているのは、道具である——ソルフ・ヴュイヤール・師宣ほか九点
火と水と道具の場所、台所を描いた九点を数えた。炎が燃えている絵は一点だけ、水の見える絵は一点もなく、画面を埋めるのは鍋と桶と包丁である。家の台所に立つ女、女郎屋の裏方、舟に積んだ台所、魚をねらう猫まで数えて、道具だけで台所に見える理由を読む。
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美術史・技法
茶屋は静かで、宿屋は暗い——俊満・オスターデ・スローンほか九点
立ち寄る場所には、知らない人が居合わせる。九点で数えると、器や杯があるのは六点だった。日本の茶屋は明るく人が少なく、ヨーロッパの宿屋は暗く人が多い。床の高さが姿勢を決めている。店の名が読めるのは二点だけである。
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美術史・技法
野営の中心は、火である——ラインハート・ホーマー・バーナードほか九点
野営には部屋がなく、囲いもない。九点で数えると、火が描かれているのは三点で、その周りに人が円く集まっていた。天幕や覆いは四点。悔悛と特許の綴りで、二点が混じっている。寝る場所が描かれた画面は一点もない。
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美術史・技法
墓の印は、七点とも石である——カナレット・ザルツマン・デ・ウェルヴェほか九点
墓は長く残ることを前提に作られる。九点で数えると、七点で石が使われ、木の墓標は一点もなかった。葬られた人の名が分かるのは三点だけ。墓から外された彫刻も一点ある。文字が刻まれているのは四点で、読めるのは二点しかない。
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美術史・技法
泉の語が、春を連れてきた——ルグロ・コルベ・カランザほか九点
英語では、湧き出る水と季節の春が同じ語である。九点で数えると、水の出る場所は三点しかなく、春を主題にしたものが五点混じった。花があるのは五点、泉の三点にはいずれも花がない。語の重なりが、水と季節を一つの棚に並べてしまう。
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美術史・技法
畑の絵は、刈った後を描く——アングラン・ルノワール・トロワイヨンほか九点
九点で数えると、育っている作物を描いた画面は一つもなかった。刈った後の畑、休ませた野原、牧草地。積み上げた塊なら数えられ、影が付く。「野菜」「野営」の野の字でも二点が混じった。土の色は褐色と灰に偏り、緑はほとんど出てこない。
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美術史・技法
屋根は、九点に一つも残っていない——ベックリン・コール・ヒラーズほか九点の廃墟
廃墟は途中で終わった建物である。九点で数えると、壁が残るのは五点、アーチが四点、柱が二点。屋根はどこにも残っていない。植物が生えているのは六点で、崩れた理由が分かるのは一点だけだった。人が描かれているのは四点だけである。
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