COLUMNSコラム: 美術史・技法
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美術史・技法
二・九センチ四方の作品——ホイッスラーの切り抜きを貼った帖
指の先ほどの紙片に、番号が付いている。九点の寸法は一つも重ならない。丸く切ったもの、不定形のもの、青い紙、茶色い紙。はさみの動きがそのまま寸法の欄に残っている。切って貼るという行為が作った単位を読みたい。
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美術史・技法
一冊の帳面が、百四十八点になる——トマス・サリーの写生帖、メトロポリタン美術館
五三・一八二。一九五三年に受け入れた、その年の一八二番目の件である。ところが頁ごとに枝番が付き、紙の表と裏で番号が分かれる。一冊が百四十八点として数えられている。一点という単位を、誰がどう決めたのかを読みたい。
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美術史・技法
作者の欄に、頭文字と年だけ——ニコラス・ヒリアードほか細密画九点
名も生没年もなく、組み合わせた二文字と一つの年しか記されていない。それでも館はそれを一人の作り手として登録し、作品をその下にまとめる。記録として成り立つ最小の形を、九点の欄から読みたい。二文字だけの作者名を読みたい。
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美術史・技法
金地の画面で、文字はどこに置かれるか——額の帯から裏の紋章まで九点
額の帯、光輪の縁、開いた本の頁、画面の下の縁、十字架の上の札、そして板の裏面。九点で、置き場所が七通りに分かれた。景色も室内も描かれない金地の絵に、なぜ文字が必要になるのかを読みたい。置き場所の違いを一点ずつ見たい。
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美術史・技法
寸法の欄に、聖人の名が並ぶ——タッデオ・ガッディの祭壇画ほか九点
区画ごとの幅が、聖人の名を見出しにして順番に並んでいる。その名は文字ではなく、手に持った物から読まれたものだ。車輪、石、書物、そして十字。図が文字の代わりをする仕組みと、それを支える記録を読みたい。持ち物が名を語っている。
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美術史・技法
銃の、どこに誰の名が刻まれるか——銃身鍛冶と銃工と、意匠する人
銃身を打つ人の名は銃身に、全体を仕立てる人の名は機関部に、飾りを考えた人の名は彫りの中に。一挺に何人もが関わり、三つの名が別々の場所に残る。誰を作者として記録するかという判断を読みたい。名の置き場所には順序がある。
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美術史・技法
銘の末尾が、作と画に分かれる——鐔と小柄の金工九点
館の作者の欄には、名前だけでなく末尾の一字までが付いている。作った人なのか、下絵を描いた人なのか。銘をそのまま欄に写した結果である。記録と物とのあいだの距離が、いちばん短い分野を読みたい。末尾の一字が役割を決めている。
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美術史・技法
武具に刻まれた年——1460年の弩から明珍宗明の面頬まで九点
九点とも、年の欄に日付ありと入っている。つまり、その年が物そのものに刻まれている。同じ甲冑師の面頬が三点あり、最後の一点は記録上の没年と同じ年の作である。六百年前に打たれた四文字を読みたい。銘のある武具だけを集めた。
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美術史・技法
紙に書かれた言葉が、そのまま題になる——ホイッスラーの画帖九点
五月十八日。四十と五十。酒手。油の夜。館の題は、頁の走り書きをそのまま採っている。日記の文の上に絵が重なり、一冊はばらされて一枚ずつ台紙に貼られた。私的な帳面がたどった行方を読みたい。題が生まれる瞬間を見たい。
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美術史・技法
四センチの絵の、裏に書かれた名——アメリカの細密肖像九点
象牙に水彩で描かれた画面は、親指の先ほどの大きさしかない。署名を入れるだけの余白はどこにもない。だから名は裏か、飾り入れの中に畳まれた紙に書かれる。写真が広まる前の、顔を持ち運ぶ道具を読みたい。裏へ回った名を読みたい。
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美術史・技法
表紙に貼られた、細長い紙——喜多川歌麿《銀世界》ほか絵入り本九点
表紙は無地か地紋だけで、左上に細長い紙片を貼り、そこへ書名を書く。剥がれてしまえば、その本の名は分からなくなる。館の札がそのすぐ隣に並び、二百年を隔てた二つの札が同じ表紙に同居している。題を保つための紙片を読みたい。
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美術史・技法
一枚の版画に、四種類の文字——広重《名所江戸百景》ほか九点
右上に揃いの名と一枚ごとの題、左に絵師の赤い札、隅に版元と検めの印。四つとも役目がまったく違う。そして全部が版木に彫られ、何百枚にも同じ形で摺られていく。分業の証拠としての文字を読みたい。摺られた文字は手書きではない。
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美術史・技法
落款——署名と印を一組で置く——曾我蕭白、岸駒ほか九点
画面の隅に号を書き、そのすぐ下に印を押す。号は本名ではなく、自分で名のった別名である。作者の欄に二つの名が並ぶ理由と、生没年に疑問符が付いてしまう事情とを、九点の記録の欄から読みたい。号と印が一組になる理由も考えたい。
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美術史・技法
赤い印が、十を超えて押される——項聖謨《白菊》ほか九点
作者が押し、持ち主が押し、見せてもらった人まで押す。だから時代が下るほど印は増えていく。彫った文字を朱で押すのだから、これもまた文字である。館の欄には現れない赤い四角を、自分の目で数えたい。印の数は来歴の長さでもある。
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美術史・技法
手紙が、掛軸になる——小堀遠州の消息と歌麿《文を読む若い女》ほか九点
誰かに宛てた私信を表装し、床の間に掛ける。そこで読まれるのは用件ではなく、筆の運びのほうである。手紙を持つ人、届ける人、袖にしまう人。手で書かれた文字がさまざまな形で残された九点を読みたい。私信が作品に変わる境目を見たい。
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美術史・技法
画面に、詩を書く——呉春《猫と歌》と董其昌ほか九点
猫は下のほうに小さく描かれ、残りはほとんど全部が文字である。書が主役になり、絵のほうが脇役にまわる。掛軸、画帖、石の衝立、焼き物の鉢、そして狂歌の本。詩を載せるために選ばれた九つの形を読みたい。文字と絵の占める面積の比を見たい。
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美術史・技法
題に「〜に倣う」と書き込む——王原祁、藍瑛ほか九点
一つの題の中に、手本とした四人の名が並ぶこともある。西洋では作者の欄に入り、作品の値を下げる語である。こちらでは題に入り、むしろ教養の深さを示す。同じ言葉の向きが地域で正反対になることを読みたい。倣うという語の重さを読みたい。
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美術史・技法
年の欄の「日付あり」が意味すること——倪瓚、呉鎮ほか中国絵画九点
この語が付いているとき、その年は作品そのものの上に書かれている。研究者が推し量った年ではない。款記の中に干支と元号が並び、絵と文字が同じ筆で書かれている。短い一語が確からしさを分ける仕組みを読みたい。
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美術史・技法
画中の手紙と新聞——ハバール《模造》ほか九点
手紙、新聞、暦、帳面、そして紙幣。九点の画面には、必ずどこかに紙がある。そして紙には文字が書かれている。紙が絵の中に入ると、時間も一緒に入ってくる。だまし絵まで含めて、画中の紙の働きを読みたい。紙に書かれた日付も追いたい。
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美術史・技法
画中の本に書かれた、一行——ヘラルト・ドウ、ダンテの寓意的肖像ほか九点
開いた頁は平らで、しかも明るい。だから、文字を置くのにこれ以上ない場所になる。九点のうち一点には、長い詩の四十八行がそのまま書き写されている。抜き書きされた一行が絵全体の意味を決める仕組みを読みたい。
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