COLUMNSコラム: 美術史・技法
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美術史・技法
器に、もう一つの出所の行がある——クリアウォーターの銀器遺贈、1933年
館の帳簿は一九三三年を指す。ところが器の縁には、十八世紀に誰が教会へ贈ったかが彫られている。一つのものに、二つの出所が記録されている。彫りがあるものだけが溶かされずに残った理由も読みたい。急須が二十四点を占める理由も、あわせて考えたい。
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美術史・技法
出所の行に、もう一人いる——「〜の思い出に」を含む330件の書き方
彫刻家という職業と生没年。姉という続柄と敬称。母、夫、博士、夫人。書き添えられる情報は寄贈のたびに違う。亡くなった人と生きている人が同じ一行に並ぶ例もある。追悼が記録の欄になる仕組みを読みたい。銀器の重さの欄が何を意味するかにも触れたい。
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美術史・技法
新聞で作った財産が、版画になる——ピュリツァー遺贈による1918年の購入
購入、ジョーゼフ・ピュリツァー遺贈、一九一八年。この一行を持つ日本の版画が二百十一点ある。番号は二四八から六四六まで。花鳥と役者絵、判型が三通り。戦争の年に東洋の版画が買われた事情を読みたい。番号の記号と寄贈者の頭文字は、偶然に一致している。
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美術史・技法
名前が、書かれるようになる——1872年から1888年、館に最初にものを渡した六人
ある年を境に、出所の行に個人の名が入りはじめる。富裕な一族の当主、画家の妻、牧師、商人、初代の代表、そして後に数千点を遺す家の名。十六年ぶんの九点で、寄贈という約束が成立する瞬間を読みたい。三枚を一つの額に収めた作品も含まれる。
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美術史・技法
公募で買った千点——南紀男山焼・永樂保全ほか、名前のない出所の行
誰が払ったのかが書かれない行がある。公募による購入。数名の紳士による寄贈。画家の友人たちによる公募。そして匿名。人数が多すぎるか、名を出さないと決めているか。名前が消える四つの型を並べたい。寸法の欄が合わない皿もある。
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美術史・技法
出所の行が、一行しかない——「購入、1871年」の九点、メトロポリタン美術館
寄贈者の名がない。基金の名もない。買った、とだけ書いてある。番号は一七〇まで伸び、主題は花・海・夜・室内・町・鳥・聖書・顔が一つずつ。建物より先に中身を買った館の、いちばん最初の一行を読みたい。支持体は板と布の二種類に割れる。
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美術史・技法
分類の欄に、家具の名が入っている——婚礼櫃の板、天井画の下絵、扉上の灰色画
櫃の正面、天井、扉の上。もとの置き場所が、そのまま種別の名になっている。横長の画面、四隅の塗り残し、彫刻に見せかけた灰色。壁に掛ける前提で作られなかった絵を、九点並べて読みたい。もとの高さを知ると、構図の理由まで見えてくる。見上げる絵と見下ろす絵を並べたい。
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美術史・技法
後頭部に、誰かの手が置かれている——アウワーテル、バウツほか絵画の断片
手の持ち主は、そこにいない。板がその手前で断たれているからである。切れた光輪、不定形の輪郭、断たれた丘。分類の欄の「断片」という語より、画面に残った一本の手のほうが直接に語る。番号が付いた瞬間に、断片は一件になる。そこに無いものを一緒に見る方法を考えたい。
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美術史・技法
枝番のbが、抜けている——フアン・デ・フランデスほか祭壇画の板九点
左の板と右の板があり、中央がない。記録の連作の欄には、祭壇画の名と番号の範囲が書かれている。寸法、板の形、人物の傾き。ばらばらになった板を記録の上で組み立て直す方法を読みたい。金の地から風景の背景へ、二百年の変化も同時に見える。九点を古い順に並べて読みたい。
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美術史・技法
額の横が、二メートル八十三センチある——サーノ・ディ・ピエトロほかプレデッラの板
板は五十センチもないのに、額はその五倍以上ある。一つの額に五点が入っているからである。祭壇画の下の帯に並んでいた小さな板が、いま一枚ずつ番号を持っている。分類の欄に残る、もとの位置を読みたい。額を五点で共有するという書き方も、記録に残っている。
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美術史・技法
三枚で、一つの絵になる——広重《阿波鳴門之風景》ほか三枚続九点
同じ大きさの版画を三枚並べ、一つの画面を作る。海の色も波の線も、二本の継ぎ目を越えて続く。番号に枝番を振るものと振らないもの、寸法を三通りに書き分けるもの。記録の揺れごと読みたい。継ぎ目の本数を数えるだけで、そろっているかどうかが分かる。三枚で一件とする判断も読みたい。
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美術史・技法
番号が二つ、記録は一つ——鈴木其一、俵屋宗達ほか六曲一双の屏風
読点でつながれた二つの番号が、一件の記録に並んでいる。屏風が二隻で一組だからである。絵としては一つ、物としては二つ。そのずれを記号で埋めている。一隻しか写らない公開画像の理由も、そこにある。六曲一双で十二面、それでも記録は一件である。
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美術史・技法
十幅のうち、五幅がここにある——金処士《十王図》ほか
技法の欄に「十幅一組のうちの五幅の一つ」とある。三段の入れ子である。五百体一組のうちの一体、二十四枚のうちの十枚。組の名はもとの数を保ち、番号がいまの数を示す。引き算をして、失われた量を読みたい。同じ形式を十回繰り返すことの意味も考えたい。
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美術史・技法
同じ題が、三つ並んでいる——狩野探幽ほか三幅対の掛軸九幅
作者も年も寸法も同じで、番号だけが一つずつ増えていく。三幅対だからである。中央の一幅にだけ月があり、両脇にはない。三本そろってはじめて題が成り立つ。物として三つ、絵として一つという形を読みたい。番号の順が、そのまま掛ける順になっている例もある。
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美術史・技法
扇が、掛軸に仕立てられる——池玉瀾、北斎、狩野永徳ほか九点
技法の欄に、二つの形が並んで書かれている。もとの形と、いまの形。扇、本の一葉、巻子の一段、屏風の二面。いずれも掛けるための形に作り替えられている。表装が全体の七割を占める理由も、数字から読める。九センチ幅の断簡まで、掛けるための形にされている。
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美術史・技法
作者の名が「散逸した写本の画家」である——インドの細密画九点
人名ではない。本の名と、その本が散り散りになった事実が、そのまま画家の呼び名になっている。題にも「散逸した」と書かれる。失われたものを二重に含んだ名前が、離れた一葉どうしをつなぐ糸になっている。作者の欄に紀元前の人名が入る一葉もある。
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美術史・技法
十八葉で、番号が一つ——王鑑、金農、桑山玉洲ほかの画帖
画帖には、一冊で一件になるものと、一葉で一件になるものがある。分かれ目は作者の数である。一人なら一冊、複数なら一葉ずつ。まとめれば中身が見えず、分ければ冊子の姿が消える。その選択の理由を読みたい。枝番の範囲が、冊子の厚さを教えてくれる。
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美術史・技法
扇が、画帖の一葉になる——馬遠、夏珪、文徴明ほか九点、メトロポリタン美術館
部門の名が長い。画帖の一葉として仕立てられた扇。もとは手に持つ道具で、いまは冊子に貼られている。縦横の比が一に近ければ団扇、三に近ければ折扇。寸法の数字だけで形が分かる。七百年続いた仕立てを読みたい。
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美術史・技法
題に、別の絵の名が入っている——エドモンズの写生帖と本画のための頁
「ジル・ブラースと大司教」のための習作。括弧の中の名は、この頁に描かれたものの名ではない。別に存在する絵の名である。枠の内と外で線の性質が変わる頁を並べ、下ごしらえという仕事の形を読みたい。顔がほとんど描かれていない理由も、そこにある。
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美術史・技法
一冊の帖に、作者が九人いる——マグワイアの貼り込み帖、メトロポリタン美術館
十五歳の自画像、頭文字だけの作者、牛の絵、追悼のような子どもの顔。年は二十年以上にわたり、紙も大きさもばらばらである。それでも出所の行は九点とも同じ一文。集めた人の名が単位の名になった例を読みたい。末尾飾りとして描き下ろされた一枚もある。
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