COLUMNSコラム: 作品を知る
-
作品を知る
青銅は、いつ作られたのか——ロダン・セント=ゴーデンズ・ルドンほか九点
型があれば同じ像が何度でも出る。青銅の九点を数えると、五点までは作られた年が一つに決まらず、館の記録は原型の年と鋳造の年を分けて書いていた。中身が詰まっているかどうかで三百年の差が判じられ、陶が青銅の形を借りてもいる。複数あることを引き受けた材料の記録である。
-
作品を知る
真鍮は、金の位置に立つ——湯萬亨・ファベルジェ・ドゥフェネクほか九点
銅と亜鉛を混ぜれば、金に似た色が安く手に入る。真鍮の九点を数えると、婚礼の柄鏡と鋳られた頭像を除く七点で真鍮は主役ではなく、鍋の把手、甲冑の鋲、ケースの金具、そして絵の具で描かれた小さな器になっていた。似ていることを引き受けた合金の記録である。
-
作品を知る
鉄は、言葉として現れる——尾形乾山・陳洪綬・セザンヌほか九点
鉄でできた作品は九点のうち一点だけ。あとは焼き物の黒い枝になり、プロヴァンスの土の橙になり、細く均一な線の呼び名になり、機関車の名になり、戦士の名になっていた。安く重く錆びる金属が、材料の欄より説明文と題の中に多く現れる記録である。
-
作品を知る
銅は、下にある——プラクシテレス・カラッチ・モリゾほか九点
鍔の象嵌、箱の側面、青銅像の唇。銅の使われた九点を数えると、五点までは銅が表面ではなく下にあり、油彩の板、版の板、七宝の地として絵に隠れていた。釉に溶ければ赤や紫になり、題の中では首長の呼び名になる。安くてやわらかい金属の記録である。
-
作品を知る
黒は、一色しかない——秋月等観・アンドレア・デル・サルト・ホーマーほか九点
墨は水で薄め、インクは線の間隔で、メゾチントは黒い版を削って明るくする。黒の絵を九点数えると、階調の作り方は材料ごとに違い、家具の黒は高価な木への擬装で、魚と山の黒は画面になく題の中だけにあった。一色しかない色の、使い分けの記録である。
-
作品を知る
白は、足すか残すかで意味が変わる——アルトドルファー・韓幹・ベローズほか九点
足された白は面から浮き上がり、残された白は地に沈む。九点のうち三点で白は筆や石として持ち込まれ、二点では塗らずに残されていた。そして三点では、白は酒の呼び名と、期待の名と、人の姓である。置くか残すかで、白の意味が変わっていく。
-
作品を知る
紫は、青と赤のあいだで揺れる——ブリオーニ・ターナー・ルンゲほか九点
混ぜて作る色なので、配合しだいでいくらでも位置が変わる。九点のうち四点は青に寄り、二点は赤に寄っていた。そして二点では、題の紫と画面の色が一致しない。赤や黄では、ここまでの揺れは起きなかった。揺れることを引き受けた色の記録である。
-
作品を知る
緑は、揺れることで効く——ドア・ブリオーニ・モーリス・ドニほか九点
赤は面積で効き、黄は地になり、青は面になった。緑はどれとも違う。釉として流れ、混ぜれば片方が褪せ、光の角度で濃さが変わる。九点のうち三点で、緑は一様でない面として現れていた。一つに定まらないことが、この色の性格である。
-
作品を知る
黄は、地になりやすい色である——清風与平・北斎・モリスほか九点
鉢の外側も、ガラスの皿も、山肌も、面を覆っている。九点のうち五点で、黄はほかの色を載せる下の面だった。赤とはちょうど逆である。そして一点では、黄は時が生み、修復で取り除かれた色だった。下にあることで働く色の、静かな記録である。
-
作品を知る
赤は、面積の小ささで効く——コワペル・フラゴナール・ムンクほか九点
外套の裏は画面の十分の一もなく、緑の山の仙人は指の先ほど、森の柵は百分の一もない。それでも赤は真っ先に目に入る。九点のうち六点で、赤は最小の面積で最大の注意を集めていた。少ないほど強いという、面積の逆説の記録である。
-
作品を知る
蘭は、庭の名として生き延びた——ヒード・円山応挙・八大山人ほか九点
九点のうち、蘭の花が確かに描かれているのは二点しかない。三点では、蘭は四世紀の庭の名と、その庭で書かれた文の名として現れる。千数百年のあいだ、その名の中の蘭は一度も咲いていない。花があるときは背景を埋め、題だけのときは余白を残す。
-
作品を知る
草を描くことは、余白を決めること——梁楷・探幽・ドービニーほか九点
一隅の葦、鴨のそばの数本、白鷺の背後。九点のうち四点で、草は画面の一部だけを占め、残りは空白だった。草の一本ずつを数えられるのは東アジアの四点で、西洋では草は塊か短い線の集まりである。草を描くことは、描かない場所を決めることでもある。
-
作品を知る
実は、高さで読める——若冲・デポルト・ティファニーほか九点
枝に付いた実は人や獣の頭より上にあり、切られた実は台の上か膝の上にある。九点のうち四点で実は見上げる位置にあった。上にあるうちは眺めるもので、下りてくれば食べるものになる。そして粒を一つずつ描くかどうかが、房の描き方を二つに分けていた。
-
作品を知る
蔓は、相手の形をなぞる——オキーフ・バーン=ジョーンズ・カメロンほか九点
木や草は自分の形を持つ。蔓は持たない。柱に巻けば螺旋になり、壁を覆えば面になり、岩に這えば塊になる。九点のうち四点で、蔓の形は相手の形をそのままなぞっていた。藤の花は一点にも咲いていない。線として見えるとき蔓は動き、面として見えるとき覆いになる。
-
作品を知る
柳は、枝の向きだけで成り立つ——陳洪綬・一休宗純・コローほか九点
九点のうち六点で枝は垂れていた。垂れていない二点は、題がなければ柳と分からない。枝を切られた三本の棒と、光を含んだ丸い塊である。そして一点では、しなうという性質だけが人の名になっていた。垂れた枝を悲しみと読む記録は、九点に一つもなかった。
-
作品を知る
牡丹は、重なりをどう見せるかで分かれる——惲寿平・華嵒・バジールほか九点
花びらが幾重にも重なるので、描く人は層の示し方を決めねばならない。輪郭線を引くか、色の濃淡で示すか、面から盛り上げるか。九点はその三つに分かれ、磁器の一点では花びらが実際に立ち上がっていた。輪郭のあるものはくり返しに向き、ないものは一度きりの姿になる。
-
作品を知る
菊は、どこまで数えるかで描き方が変わる——沈周・カイユボット・モンドリアンほか九点
花びらが多く、株も群れる。だから描く人は、どこまで数えるかを決めねばならない。九点のうち四点は花びらを一枚ずつ描き分け、二点では花そのものが丸い塊になっていた。二点では菊は名前の中にある。密に群れるほど、花びらは一枚ずつ描かれなくなる。
-
作品を知る
同じ木が、花と実に分かれる——若冲・高鳳翰・ヴァライエ=コステルほか九点
九点のうち、花として描かれた四点はすべて東アジアの作、実として描かれた四点はすべて西洋の作だった。例外は一点もない。花のときは葉がなく、実のときは葉がある。選ばれているのは季節のほうである。花の四点には葉がなく、実の四点にはすべて葉がある。
-
作品を知る
竹は、書の手つきのまま描ける——洪範・祇園南海・胡正言ほか九点
幹は一筆、節は短い横線、葉は筆先を押して離すだけ。九点のうち五点が墨だけで描かれていた。しかし道具の上へ移ると、竹は青い線になり、金と銀の金属になり、そして工房の名にもなっている。節を描くために筆を止める、その一度の動作が竹を竹にする。
-
作品を知る
松は、別のものの名に入り込む——広重・李鱓・ダンカン・ファイフほか九点
九点のうち、松が木として描かれているのは四点だけだった。残りでは、松の字は店の名になり、役者の名になり、明かりの道具の名になり、そして家具の見えない部分に使われる材の名になっている。針の一本ずつを彫るかどうかは、道具に従っている。
4 / 11 ページ(全 212 件)



















