COLUMNSコラム: 作品を知る
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虫は、数がそろって主題になる——呉炳・歌麿・グランヴィルほか九点
大きな獣なら一頭で画面が埋まる。虫は違う。九点を数えると、三点で虫は群れとして描かれ、二点では器や盆の形になり、二点では姿を見せないまま人を刺し、あるいは家の紋章として杯に載っていた。脚の本数は、真っ先に省かれる特徴だった。
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蝶は、どこにも止まらない——窪俊満・エーレト・コールテほか九点
鳥は枝に止まり、獣は地に立つ。蝶だけが支えなしに浮かんでいる。九点のうち六点で、蝶は余白や縁や頭の上にいた。止まった蝶は一匹もいない。残る三点では、蝶は花の名と金具の名と隣の一葉にいる。止まらないからこそ、どこにでも置くことができる。
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貝は、姿を変えずに器になる——清風与平・ユキエ・アルガルディほか九点
九点を数えると、生きている貝も蟹も一つもいなかった。四点で殻はそのまま皿や水盤や塩入れになり、一点では水を注ぐ器になる。ほかの獣は器になるとき姿を変える。貝だけが、形を変えずに器へ移る。殻の筋こそ、貝を貝と分からせる最小の印である。
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魚は、光る面として描かれる——青木木米・カールセン・ヒルほか九点
九点の魚を数えると、生きて水にいるのは二点しかなかった。鱗が一枚ずつ描かれるのは三点だけで、静物の魚は白く光る面になっている。残る三点では、魚は人魚の下半身と、金属の地の名と、人の姓だった。光り方だけが、新しさの証明になっている。
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蛇は、曲がり方で説明する——プラクシテレス・ゴブラン・セイヤーほか九点
九点のうち蛇の姿があるのは五点で、まっすぐな一匹もいなかった。押さえられて折れ、身を守って巻き、地形に沿って曲がる。残る四点では蛇は失われ、紋章になり、姿勢の名になり、森の名になっている。曲がり方そのものが、状況の説明になっている。
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龍は、うねる胴だけで成り立つ——デューラー・ラッカム・モリスほか九点
誰も見たことのない獣を九点数えた。姿があるのは五点で、翼を持つのはそのうち三点にすぎない。残る四点に龍はいない。川の名、二つの風の名、虫の名として、字だけが画面の外に残っていた。翼も脚も欠けることがあるが、うねる胴だけは五点すべてにあった。
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獅子は、たてがみと開いた口でできている——山口雪渓・カンパニョーラ・スタティほか九点
九点の獅子を数えると、骨格の描き方はばらばらだった。共通しているのは渦を巻くたてがみと、開いた口の二つだけである。見たことがなくても、その二つがあれば獅子になる。一点では葉から頭だけが生えていた。口を開けた姿が、この獣の標準になっている。
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虎は、見ずに描かれてきた——牧谿・岸駒・フランツ・マルクほか九点
日本にも中国の多くの土地にも、虎は身近にいない。だから画家は絵から絵へ姿を写した。九点を数えると、骨格の正確な三点はいずれも欧州の画家の手による。そして一点では、虎は床の敷物になっている。縞の描き方は、思ったほど安定していない。
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猿は、人の役を引き受ける——探幽・デューラー・ドゥカンほか九点
九点の猿を数えると、二点では人の服を着て説教し、絵を評していた。一点では鎖につながれ、一点では薬にするため殺される。犬が人の忠実さを説明するのに対し、猿は人そのものの代わりをつとめている。指を描くかどうかで、猿は道具を持つ者になる。
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兎は、上下が入れ替わると死ぬ——北秀・ゲラール・ウードリーほか九点
九点の兎を数えると、生きている兎は耳を立てて同じ方向を見ていた。死んだ兎は逆さに吊るされ、耳が垂れている。上下が反転することが、そのまま生死の合図になる。題にしかいない兎も一羽まじっていた。耳を立てているのは、生きて自由な兎だけである。
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鹿は、角の枝を数えられる獣である——ドービニー・ボヌール・ヴァレンタインほか九点
牛や馬は体の大きさで値打ちを測られた。鹿は頭に付いた枝の数で測られる。九点を数えると、追われるか倒れているのが三点、静かに立つのが四点。角の枝が十二本を超えると、その鹿は王者と呼ばれる。数えることが、そのまま呼び名を決めている。
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犬の絵は、たいてい人の絵である——ホルツィウス・ドルーエ・ラリックほか九点
九点の犬を数えると、犬だけが描かれているのは三点しかなかった。四点では人の忠実さや装いを説明する役をあてがわれ、一点では取り引きの品として囲まれ、一点では皿を回る金の模様になっている。説明の役を負いながら、視線だけは人から外れている。
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猫は、顔を見せないまま絵になる——川端玉章・閔貞・スタンランほか九点
九点の猫を数えると、こちらへ顔を向けているのは三点だけだった。魚をくわえ、栗を取り出し、鸚鵡に立ち向かう猫である。何もしていない猫は、背を向けるか、見下ろされるか、人の腹に顔を埋めている。顔を見せない猫も、絵として成り立っている。
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水鳥は、水の上にいない——蒋廷錫・狩野山楽・馬麟ほか九点
鴨も雁も白鳥も鷺も水の鳥である。ところが九点を数えると、泳いでいるのは二点だけだった。三点では器そのものの輪郭になり、一点では台の上に横たわり、一点では遠い山を越える数ミリの点になっている。首の曲線だけが、どの点でも欠かさず描かれていた。
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鶏は、鳴く前に「もの」になる——ブラックモン・雪佳・デュシャン=ヴィヨンほか九点
もっとも身近な鳥を九点数えると、自分の脚で立っている鶏は三点だけだった。二点では死んで吊るされ、三点では磁器や木彫やブロンズの形になり、一点では荷物として担がれている。鳴いている鶏は一点もなかった。老いた雄鶏の脚だけが、まだ立っている。
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猛禽は、捕る前と捕った後にしか描かれない——八大山人・湖龍斎・フロマンタンほか九点
鷹と鷲を九点数えると、獲物を捕らえる瞬間は一点もなかった。腕から放たれる直前か、鴨を渡す直後か、岩の上で止まっているか。二点にいたっては鳥がおらず、鷹狩りの道具と、鷹を意味する名前だけが残されていた。
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鶴と亀は、名前になって画面から消える——清風与平・陳洪綬・キドールほか九点
長寿のしるしとして知られる鶴と亀を九点数えると、生きものとして立っているのは六点だけだった。残りでは甲羅が家具の素材になり、鶴の字が遊女の名になり、鶴を意味する語が追われる男の姓になっている。めでたさは、館の記録ではほとんど語られない。
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凍った水は、道になる——ファン・デル・ネール・アーフェルカンプほか九点
水が凍ると、人はその上を歩ける。凍った水の絵を九点集めると、六点で氷の上に人がいた。滑る、渡る、洗う。氷そのものは灰色の面でしか描けず、人が乗って初めて氷に見える。乗れない氷河、器の文様になった氷裂、雪解けの積みわらまで、ひと冬だけの広場と道をたどる。
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風は、なびくものを借りて吹く——湖龍斎・普明・金振宇ほか九点
風の題を持つ絵を九点集めて、なびく係を数えた。帆と旗、凧の糸、そよぐ竹に、葉を飛ばす竹。なびくもので風を見せる絵が六点、題の中にだけ風の吹く絵が一点、吹かない風流の風が二点。幹の傾きに何十年の風を刻んだ松まで、見えない風の描き方を見くらべる。
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冬の絵は、よく動いている——グリフィア・タサール・バーチフィールドほか九点
冬の絵を九点数えると、じっとしている人は薪にもたれた母子だけだった。氷の上を滑り、鶏に餌をやり、枝を拾い、雪の街を行き交う。暖炉も炬燵も一点も描かれず、寒さをしのぐ場面はほとんど画面の外に置かれている。
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