COLUMNSコラム: 作品を知る

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    色だけの秋は、意外に新しい——イネス・如水宗淵・陳洪綬ほか九点

    黄と橙に染まるイネスの野は、題を見る前から秋と分かる。だが九点を数えると、色だけで秋を名乗る絵は近代の欧米に固まっていた。墨だけの晩秋、紅葉の題だけの版画、葡萄の収穫、鉄の秋草。色に頼らない古い秋を並べ、褪せる染めと残る形まで考える。

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    暑さは描けず、涼みが描かれる——歌麿・円山応挙・ピュヴィスほか九点

    夕涼み、月の夜、そよぐ柳、水浴び。夏と題した絵を九点数えると、半分以上が暑さではなく涼しさを描いていた。暑さを正面から描いたのは、太陽の下で麦を刈るヨーロッパの二点だけ。温度は色も形も持たないから、絵にできるのは暑さへの対処と、その結果なのである。

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    花の名が、春の代わりをする——ヒード・陳洪綬・ベローズほか九点

    春と題した絵は、九点のうち三点しかない。残りは林檎、桃、梅と、木の名前だけで季節を告げる。東アジアは一枝で、西洋は籠に山盛りで。数えると、この九点に咲いた桜はなく、桜の字が出るのは実を並べた図譜だけ。梅は英語の記録でプラムと書かれていた。

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    休むには、理由が要る——カラッチ・デューラー・姚廷美ほか九点

    休息を題に持つ絵を九点並べると、目を閉じている人は一人もいなかった。働いたあと、逃避の途中、暑さのさなか。休息には必ず理由が添えられ、その理由を示す道具が置かれている。説明の要らない休みは、虎の一点だけだった。

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    鳴らしていない時間が、絵になる——探幽・バビューレン・バルラハほか九点の楽器

    笛を吹く菩薩、杯を掲げるヴァイオリン弾き、そして楽器を持たない音楽家の肖像。楽器の写った九点を数えると、鳴らしている最中は四点だけで、残りはみな構えたままだった。絵が選ぶのは、音の前後の、止まっていられる時間である。

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    絵のなかでは、大人もよく遊ぶ——華嵒・リュノワ・ネッチェルほか九点

    遊びは子どもの時間だと言われる。だが遊びを描いた九点を数えると、子どもが遊ぶ絵は三点、大人が遊ぶ絵は四点あった。目隠し鬼は清の中国と世紀末のフランスで同じ布一枚。盤と札を囲むのは神と大人たち。絵のなかの遊び手を数え直す。

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    門は、いつもくぐる前にある——アルトドルファーほか九点

    門の下で抱き合う二人の木版画から、パドヴァの街の門、カルナックの塔門、蘇州の裏門、凱旋門、水門、ヨセミテの谷の門まで。九点を数えると、門の真下に人がいる絵は二点だけで、八点までが手前から描かれていた。絵のなかの門がなぜくぐる前ばかりなのかを考える。

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    裸は、水に入らない——ドガ・ブラックモン・春汀ほか九点の湯浴み

    湯浴みと水浴の絵を九点集めると、湯船の見える絵は一点もなかった。裸の五点で水に入るのは膝までの一人だけ、肩まで浸かるのは着物と水着の人である。裸ほど水から遠く、着衣ほど水に近い。湯屋を出る素足から、人のいない沐浴池まで数える。

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    食卓の絵で、献立はほとんど読めない——デューラー・ゴッツォリ・コールテほか九点

    最後の晩餐から江戸の宴、卓上の静物、実物の卓と食器揃まで九点を並べ、何を食べているか読めるかを試した。宴の絵で献立の読めたものは一点だけ、種類まで分かる食べ物は無人の静物にしかない。食卓の絵が本当に写しているものを、卓の位置と器の中身から数える。

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    寝台の絵に、眠っている人はいない——デ・ホーホ・湖龍斎・ロートレックほか九点

    作り付けの寝台、天蓋の幕、蚊帳、畳む夜具。寝台という家具と場所を描いた九点を数えると、横たわる人は二人だけで、確かに眠っている人は一人もいなかった。眠りの前後にだけ絵になる寝床の性格を、木の寝台五点と敷く床三点、詩の中の寝床一点から読み解く。

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    星は、画面に一つしかない——ディ・パオロ・デューラー・ドガほか九点

    三博士を導く星も、写本の隅の金の粒も、画面にはたった一つきり。星の絵を九点集めると、ちりばめた夜空は一枚もなく、星は冠になり、胸の記章になり、人の呼び名になり、題箋の字になっていた。数えられるほど少ない星が、一つずつ役目を負っている。

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    灯りは、道具の形で残る——ドリスコル・テルブシュ・谷文一ほか九点

    灯りの語で九点を集めると、実物の灯具が四点、描かれた灯りが五点だった。実物の火はすべて消えていて、絵の中の火だけが点いたままである。蝋燭から油、電気、そして灯台まで、灯りの道具の幅を並べ、火が記録に残らない理由を考えた。

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    夕方は、行動に写る——モネ・陶泓・ムンクほか九点

    夕食後の食卓に器が三つ残り、農夫が家路につき、灯りの下で縫い物が続く。朝が題の行にしか宿らないのに対し、夕方は人の行動そのものに写る。帰る・居残る・選ぶ・縫う・片づける。九点の夕方を動詞で数え、朝の回と対にして読む。人のいない夕べも並べた。

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    太陽は、隠すか、輪にして描く——バーチフィールド・狩野周信・モネほか九点

    太陽はまぶしくて直視できない。では絵はどう描くのか。木や雲で隠す。画面から締め出して光の働きだけを塗る。直視できる朝の赤い円を選ぶ。顔を付け、人にまとわせ、金の文様にする。九点を数えると、さえぎりなしに丸く描かれた太陽は一点しかなかった。

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    朝は、題の行で決まる——アルピニー・ビュオ・丁雲鵬ほか九点

    夜明けの狩人を描いた水彩は、かつて午後の狩りという題で売られた。朝の光は夕方と区別がつかない。朝の語を記録に持つ九点を並べ、朝がどこに宿るかを数えた。光に四点、街の営みに一点、祈りの名に一点、比喩に二点。そして人名の中の朝が一点である。

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    遠いものは、七点で薄くなる——雪舟の周辺・王翬・レーンほか九点

    空気の層を通ると、色が抜けて輪郭がぼやける。九点で数えると、七点で遠景が薄く描かれていた。東アジアの五点は薄い墨で距離を作る。同じ題の作品が、三百年を隔てて二点並んだ。手前と奥の境目は、いずれも水か霧で作られていた。

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    遠近の作り方は、五通りあった——政信・ブロンデル・リッピほか九点

    線を一点に集めるのは、遠近を作る方法の一つにすぎない。九点で数えると、その方法は四点で、残る五点は別の手を使っていた。段を重ねる、見下ろしと正面を混ぜる、見上げる、道を引く。線が集まる点が画面の外にある例も二点ある。

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    影が白い画面が、一点ある——歌麿・マネ・テナールほか九点

    影は光がさえぎられてできる暗い部分である。九点で数えると、影が描かれているのは四点だけだった。うち一点は写真の陰画で、明暗が反転している。日本語の影には、姿という意味もある。九点のうち五点は、影ではなく人の姿を指していた。同じ字が、光の欠如と面影の両方を担う。

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    夕方が八点、朝は一点——バンス・シャントルイユ・ビーチほか九点

    日の出と日の入りは一日に二度だけ起きる。九点で数えると、夕方が八点で、朝は彫刻の一点だけだった。太陽が描かれるのは三点で、残りは光だけである。空の色は黄と橙で、赤はほとんど使われない。太陽の位置は、いずれも水平線のすぐ上にある。

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    天体の月と、暦の月——岳翁蔵丘の周辺・杜堇・ナヤほか九点

    日本語では月が天体と暦の両方を指す。九点で数えると、天体の月は四点、暦の月が四点だった。月はいずれも白い円か細い弧で、模様は描かれない。昼に撮って夜に見せた写真も一点ある。欠けた月は三点で、満月は一点しかない。

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