COLUMNSコラム
-
画家を知る
留保が、二重になる年——勝川春好の役者絵
年の欄に、およそ、と疑問符が同時に置かれた記録が三点ある。幅を持たせ、そのうえで疑う形である。文で書かれた年が一点、留保のない年が一点。寸法の欄に判型の名が紛れ込む例もある。九枚の細長い役者絵を記録から読む。
-
画家を知る
題の末尾に、疑問符が付く——パーヴェル・ペトロヴィチ・スヴィニン
地名のあとに括弧つきの疑問符が置かれた題が、九点のうち二点ある。どこを描いたかが定まらない、という館の判断である。紙に地名が書かれていなければ、後から当てるほかない。色の残る五点と、色の失われた四点を並べて見たい。
-
画家を知る
一枚の紙が、二点になる——フランシス・ウィリアム・エドモンズ
写生帖の紙は両面に描かれる。館は表と裏を別々に登録するため、一枚が二点になる。九点のうち六点が三組の対である。ほとんど同じ題が並び、一語だけ違う組もある。犬を繰り返し描いた鉛筆の頁を、面という単位から読む。
-
画家を知る
一枚の紙に、何点あるか——アンドリュー・フィッシャー・バナー
館の題に「下絵二点の紙」「下絵四点の紙」とある。一枚の紙が一点として登録されるため、中身の数を題に書くほかない。九点は同じ人から同じ年にまとめて寄贈された。紙の種類と、素材欄に残る二か所の綴りの崩れもあわせて見る。
-
画家を知る
組物の名が、題にあるか——葛飾北斎の版画と画帖
版画は一枚で売られるが、多くは続き物の一枚である。九点のうち四点の題には組物の名が入り、五点には入らない。入らないほうが、組に属していないとは限らない。寸法の書式は三通りに分かれ、画帖には五百点以上が貼られている。
-
画家を知る
年が、書かれない二点——アリス・パイク・バーニー
年の欄に数字が入らず、年不詳とだけ書かれた絵が二点ある。およそが付く三点、数字だけの四点とあわせ、確かさが三段階に分かれる。収蔵番号は二つの群に割れ、額ごと撮られた画像もある。九点の油彩を、年の欄から読み直したい。
-
画家を知る
寄贈の年と、受入の年が合わない——ギルバート・スチュアート
来歴に書かれた年と、受け入れ年が食い違う例が九点のうち三点ある。うち一点は十三年も開く。手続きに時間が掛かることはあるが、十三年は目を引く。年の欄の大文字と小文字が揃わない一点、名の伝わらない一点もあわせて見る。
-
画家を知る
役者絵の画家が、筆で描く——勝川春章の掛物
この画家の名は役者絵で知られる。もっとも記録には、絹に筆で描いた掛物も残っている。分類は版画ではなく絵画になり、寸法の書き方も変わる。同じ人の作でも、館の中では別の群に置かれる。七点の掛物と版画二点を並べたい。
-
画家を知る
同じ日付が、四枚に並ぶ——ウィリアム・トロスト・リチャーズ
写生帖の題に日付が入り、そのうち四枚が同じ日である。一日に四枚描いたことになる。帖には記号が付き、何冊目かも分かる。鉛筆の線は速く、細部は省かれる。日付という手掛かりから、一日の仕事の量を数えてみたい。
-
画家を知る
一つの題に、綴りの誤りが二つ——ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
館の題に、綴りの誤りが二か所ある。しかも同じ帖の複数の頁で繰り返される。読めてしまうため、そのまま残ったのだろう。技法欄には四つの画材と二種類の紙が並ぶ。十センチほどの小さな頁を、記録の揺れごと扱いたい。
-
画家を知る
題に、旅の年が書かれる——メアリー・ニューボールド・サージェント
題に「1904年」と入っている。写生帖の頁に、旅の年がそのまま残された形である。場所の名も併記され、どこで描いたかが分かる。もっとも日付までは書かれない。九頁の水彩と鉛筆から、旅の記録がどこまで残るのかを見たい。
-
画家を知る
同じ題が、三枚並ぶ——喜多川歌麿の母と子
六枚のうち三枚が、同じ題で登録されている。図は違うのに、記録の上では区別が付かない。母と子を描いた版画は数が多く、後から題を当てるほかなかったのだろう。寸法と来歴の差を手掛かりに、六枚を並べて読み分けたい。
-
美術史・技法
作者の欄に、時代と地域だけ——十九世紀アメリカの無名の絵
作者の欄に名が入らず、代わりに「十九世紀のアメリカ」とだけ書かれる。百年と一つの国という、きわめて広い括りである。九枚は主題も判型もばらばらで、共通するのは名がないことだけになる。名のない絵を、記録はどう扱うのかを見る。
-
画家を知る
九枚とも、無題である——エドワード・ミッチェル・バニスター
館の題が、九枚とも「無題」である。代わりに括弧で、何が描かれているかが添えられる。題は名の役目を果たさず、区別は収蔵番号に移る。牛を追う人、水辺、木立。名を持たない絵の並びを、記録の書き方とあわせて見たい。
-
画家を知る
題が、この絵の行き先を告げる——ジョン・シングルトン・コプリーの習作
館の題に、どの絵のための習作かが書かれている。つまり題そのものが、この紙の行き先を示す。九点のうち何点にその断りが付くのか。濃い青の紙、白チョークの明るみ、そして寸法欄の揺れ。完成作へ向かう紙の記録を読む。
-
画家を知る
五十九点が、同じ題を持つ——ヘンリー・ケラム・ハンコックの金具
この作り手の記録は、五十九点すべてが「家具の金具」である。題では一点も区別できない。頼れるのは寸法と収蔵番号だけになる。直径三センチほどの金めっき真鍮の円盤が並ぶ。同じ題が並ぶとき、記録は何を失うのかを見たい。
-
画家を知る
題が、括弧だけで終わる——トマス・サリーの写生帖
館の題が、括弧に入った「写生帖より」だけになっている。本体が空のまま、出どころだけが残る。九点のうち六点がその形である。題で呼べない絵を、どう区別するのか。インクと淡彩の頁を、記録の書き方の側から読み直したい。
-
画家を知る
頁の寸法が、九点とも同じ理由——アルバート・ビアスタット
写生帖の頁を九点並べると、寸法がすべて同じである。しかも厚さまで書かれている。測っているのは頁ではなく、帖そのものだからである。題に「か」が付く一点、革の表紙と金の小口。一冊を分けて登録するとき、記録に何が起きるかを見る。
-
画家を知る
叢書の名が、一枚にしかない——歌川広重の東海道
同じ道の宿場を描いた九枚のうち、叢書の名が題に入るのは一枚だけである。残る八枚は、宿場の名だけで登録されている。仲間の一枚かどうかは、題からは読めない。寸法の書き方も三通りに分かれる。記録の側から、五十三の宿場を眺めたい。
-
美術史・技法
題に、日付まで書いてある——ジョージ・カトリンのラ・サール連作
氷の上を渡ったのは1681年12月8日である、と題に書いてある。年でも月でもなく、日である。連作の九枚には、そうした日付や地名が並ぶ。誰の記録にもとづくのか、館は書かない。描かれた土地には人が暮らしていた。題の細かさと、そこから漏れるものを見たい。
31 / 47 ページ(全 940 件)



















