COLUMNSコラム

  • 画家を知る

    等身大から、四センチまで——チャールズ・ウィルソン・ピール

    二メートルの全身像と、四センチの象牙の細密画。同じ画家が、二十倍以上ちがう寸法を手がけている。壁に掛ける絵と、身に着ける絵。九点を並べ、公と私という用途の差を見る。三点は色のない記録写真である。撮影の条件が、いまの見え方を決めている。

  • 画家を知る

    絵を描く部屋を、描く——マシュー・プラット

    画架、絵の具を載せる板、石膏の像、卓に広げた紙。そして教える人と学ぶ人。一七六五年の一枚は、絵がどう作られるかを主題にしている。規格の肖像四枚と並べると、注文の仕事と自分のための絵の差がはっきりする。

  • 画家を知る

    港町の顔を、三十年描く——ジェレマイア・テウス

    現在のスイスに生まれ、北米の港町で没した画家である。八点はすべて夫婦の肖像で、五枚が同じ規格の寸法に収まる。楕円の枠、暗い背景、白い襟。型の中で何が変えられるかを見る。町の富がどこから来たかにも触れる。

  • 画家を知る

    積み藁と、低い地平線——ジャン=シャルル・カザン

    六枚のうち五枚は、制作年が確定していない。「以後」とだけ記される。それでも絵は残り、公開されている。積み藁と月、風車と雲、白い石を切り出す崖。十九世紀フランスの平らな土地を、抑えた色でたどる。記録の少なさは、見る妨げにはならない。空の広さを味わいたい。

  • 画家を知る

    顔だけが、仕上がっている——ジョン・ホプナー

    顔は完成し、衣は白く塗られただけ。未完成の一枚は、どこから描き始めるかを教えてくれる。もう一枚は裏に子どもの頭部があるが、裏打ちの布に隠れて見えない。保存と公開のあいだの判断まで、六枚の記録が残している。

  • 画家を知る

    シカゴに集まった七枚——ピエール=オーギュスト・ルノワール

    姉妹、昼食、曲馬団の少女、ピアノ、花、海、湖。主題はばらばらだが、いずれも七年のあいだに描かれた。そして三つの個人収集を経て、いま一つの館にある。離れて見て、近づいて見る。その往復がこの画家の絵の楽しみである。

  • 画家を知る

    背景を消して、人だけを残す——フランシスコ・デ・ゴヤ

    初期の二枚には庭があり、山があり、犬がいる。ところが一八〇〇年代の六枚では、背景がただ暗い。人物だけが闇から浮かぶ。三十年の八枚を並べ、何が消え、何が残ったのかを見る。手が何を持つかにも注目したい。注文の絵という条件の中の工夫が、そこに表れている。

  • 画家を知る

    板の縁が、制作を語る——ハンス・メムリンク

    館の記録には、寸法が二つ並ぶことがある。全体と、絵の具の載った面である。その差は、板を枠に嵌めてから描いた証拠になる。額と一体の丸い板、失われた中央の一枚。八点の板絵から、五百年前の作り方を読む。記録があるから、見えないものも知ることができる。

  • 画家を知る

    二色か三色で、摺る——鳥居清満

    紅と緑、そして墨。使える色が三つしかない時代の版画である。色ごとに版を彫るから、増やせば費用が増す。細判、柱絵、横大判という三つの判型を八枚で見ながら、多色摺へ移る途中の姿を確かめたい。完成形より、途中のほうが仕組みが見える。

  • 画家を知る

    紋で、役者を示す——鳥居清信

    顔は似せていない。目は細い線、鼻は短い線、口は小さな点である。では、誰か分かるのか。衣に染め抜かれた紋が答える。似顔絵が生まれる七十年前の役者絵七枚を、筆で色を挿した丹絵から柱絵まで並べて見る。始まりの形が、そこにある。

  • 画家を知る

    緑と黒のあいだ——ジョン・ホワイト・アレクサンダー

    画面の三分の一を、白い布が占める。暗さで隠し、光で溶かす画家の八点である。同じ構図の下絵と本画が揃った二枚を比べ、色数を絞って調子だけを残す方法を確かめる。詩人の肖像と、例外的な一枚の風景も含めて八点を並べる。題の色の順が入れ替わる点にも触れる。

  • 美術史・技法

    家具の金具だけを、九点集める——十九世紀アメリカの真鍮

    引き出しの取っ手、扉の飾り。家具の部品だけが美術館に収蔵されている。金鍍金の真鍮という材料と、型で量産する仕組みを見る。九点のうち四点が同じ記録写真である事情にも触れる。作者の生没年と制作年が合わない点も、そのまま記しておく。

  • 美術史・技法

    日本からの使節を、メダルに刻む——十九世紀アメリカの記念章

    一八六〇年、日本からの使節を迎えて作られたメダルがある。そこから始めて、建国の父の顔、造幣局と民間の注文、彫刻師の署名まで。十九世紀アメリカの記念章を九点で見ていく。小さな円い金属が、何を伝えるために作られたのかを考えたい。

  • 画家を知る

    滑稽な詩を、線だけで——ジョン・W・エニンガー

    上端が弧になった画面に、二人が誓いを立てる。英国の滑稽詩に付けるための素描である。物語の筋をたどりながら、色を使わず線だけで場面を組み立てる挿絵の仕事を六点で見る。上端が弧になっている理由も、本の作りから説明できる。

  • 画家を知る

    肖像画から、望遠鏡のレンズへ——アルヴァン・クラーク

    眼鏡の細い枠を描いた肖像がある。同じ人物が、のちに望遠鏡のレンズを磨く仕事へ移った。六点の絵を見ながら、細部を追う手つきが二つの仕事をどうつないだのかを考える。転じた理由は記録に明示されていない。分かることだけを書く。

  • 画家を知る

    隙間を、果物で埋める——セヴェリン・ローゼン

    卓の上に、花と果物が山のように積まれる。隙間を残さないことが、この画家の方針だった。咲く時期の揃わない花が同じ画面にある理由や、没年に疑問符が付く記録まで含めて六点を見る。移民としてこの国へ渡った経歴にも、短く触れておきたい。

  • 画家を知る

    壁を、実物大に描く——ウィリアム・マイケル・ハーネット

    紐で留められた手紙、机の上の道具、硬貨。板の壁を実物大で描き、触れそうな距離まで寄せる。だまし絵の八点を、輪郭の締め方と影の落とし方から見る。同時代の画家との関係にも触れる。紙の折り目や擦り切れまで描き込む執念が、画面を支えている。

  • 画家を知る

    納屋と鍛冶場の、暗い隅——エリファレット・F・アンドルーズ

    納屋の隅、鍛冶場の内部。いずれも暗く、小さな画面である。九点すべてが習作の性格を持つ。壁に掛かった道具を数えながら、職人の仕事場を描くという主題を見ていく。小さな画面に何を入れ、何を省いたか。その判断を追いたい。

  • 画家を知る

    十八歳が描いた、川沿いの屋敷——トマス・K・ウォートン

    川の対岸から屋敷を見る。同じ場所を、角度を変えて七枚。帆船を浮かべ、岩を手前に置く構図の作り方を追う。描いたのは十八歳の若者で、依頼主の名も記録に残っている。同じ場所を繰り返し描くことで、土地の形が立ち上がってくる。

  • 画家を知る

    木立の下の白い像——ジェームズ・キャロル・ベックウィズ

    庭園の木立の下に、白い彫像が立っている。木漏れ日を色で描き、影に青を置く。肖像画家として知られた人が、晩年に庭ばかりを描いた九点である。彫像が人の代わりを務めている。制作は一九一〇年から一三年に集中している。台と像の関係にも注目したい。

36 / 47 ページ(全 940 件)