COLUMNSコラム
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画家を知る
柱の欠けを、そのまま描く——ヘンリー・ベーコン
水彩で描かれた遺跡の柱。崩れた部分も、欠けた角も、修復されない姿のまま画面にある。制作年が分からない理由に触れながら、九点を通して記録としての水彩を考える。遺跡を正面から描くという選択が、何を残したのかを考える。石の欠けを色で示す手つきも見たい。
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画家を知る
一つの川を、九枚でたどる——トマス・アディソン・リチャーズ
一八五二年、一人の画家が一つの川に沿って歩き、九枚の素描を残した。案内書のための写生であり、画面には必ず地名が書かれている。遠くの山を一本の線で示す省略まで含めて見る。旅の順に並べると、一日の移動の距離まで見えてくる。
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画家を知る
輪郭を、機械で写す——サン=メマン
縦五十四センチ、ほぼ実物大の横顔である。装置で輪郭を写し取り、そこへ下塗りを引いた紙で仕上げる。六点を並べ、機械を使う肖像とは何かを考える。先住民の男性を描いた一枚にも触れる。実物大に近い横顔は、写真以前の記録として作られている。
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画家を知る
真横だけを、灰色の紙に——ジェームズ・シャープルズ
描かれた人物は、いずれも真横を向く。同じ寸法の灰色の紙が九枚。輪郭だけで人を見分けさせる方法と、中間色の紙を使う理由を、家族の肖像まで含めて確かめる。家族が同じ仕事を続けたため、誰の手による一枚かが記録で揺れる点にも触れる。
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画家を知る
同じ寸法で、七人を描く——ジョン・ウォラストン
縦七十六センチ、横六十四センチ。七枚が、まったく同じ寸法である。規格が値段を決め、型が制作を速める。植民地期の北米を巡回した肖像画家の九点から、目の形の癖と布の襞の描き方を見る。型で描くとはどういうことかが、九枚を並べると分かる。
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画家を知る
塗り残しのまま残る肖像——ジョン・ウェズリー・ジャーヴィス
顔だけが仕上がり、周囲は画布が見えている。完成しなかった一枚から始めて、同じ画家の九点をたどる。どこから描き始めるか、背景をどうぼかすか。制作の順序が、そのまま画面に残っている。軍装の一枚では、仕上げられた画面との差もはっきりする。
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画家を知る
箱ごと撮影された自画像——ヘンリー・B・ブーヌトー
肖像は、革の箱に収まったまま撮影されている。港町チャールストンで描かれた九点を、台紙の色、髪型が示す年代、そして一九四六年の受け入れ記録まで含めて見る。都市の成り立ちにも触れる。妻と子どもを描いた作品も含まれ、家族の記録にもなっている。
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画家を知る
顔は、一センチ半——ジョン・ラメイジ
縦四センチ半の肖像の中で、顔が占めるのは一センチ半ほどである。建国期のニューヨークで注文を受けた画家の九点を、金の枠に刻まれた線や軍服の描き分けまで含めて見ていく。手のひらに載る肖像が、当時どう使われたのかも考える。金の枠の刻みまで含めて見たい。
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画家を知る
縦八センチの象牙に、顔を置く——エドワード・グリーン・マルボーン
縦八センチほどの楕円の中で、顔は三センチしかない。象牙の薄板に水彩で描く技法と、その材料の来歴に触れながら九点を見る。三十歳で亡くなった画家が、その短い期間に何を積んだかを確かめる。色のない記録写真しかない一点も、そのまま紹介する。
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画家を知る
青い紙に、枯れた季節を——ジャーヴィス・マッケンティー
葉の落ちた木、対岸の湖、低い光。緑の盛りではなく、枯れた季節ばかりを選んだ画家の写生帖である。中間色の青い紙を使う工夫を含め、帖のまま撮影された九点を順に見ていく。紙の色が、そのまま画面の中間の調子として働いている。落とした葉の一枚まで線で追う。
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画家を知る
銀行に勤めながら、台所を描く——フランシス・ウィリアム・エドモンズ
七面鳥の羽をむしる手、鍋の前に立つ人。日々の場面を描いた画家は、本業を別に持っていた。綴じられたままの写生帖を含む九点を並べ、兼業という条件のもとで積み上げられた仕事を見る。三人をどう配置するかという、構図の判断も追いたい。
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画家を知る
ペンとインクで、運河を引く——アンドリュー・フィッシャー・バナー
帆をたたんだ舟、水面に落ちる影、鐘楼の垂直。色を使わず、線の密度だけで明暗を作った九点を見る。空をほとんど描かないこと、壁の面をどう示すか。ペンという道具の限界と工夫が並んでいる。没後に妻から寄贈された一群でもある。
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画家を知る
肖像画家が、山で写生する——ダニエル・ハンティントン
正装の肖像を一枚見たあと、同じ画家の写生帖へ移る。同じ寸法の紙が八枚、見開きのまま撮影されている。綴じ目をまたぐ稜線、一本で引かれた山の線。注文仕事の裏側にある手の動きを見る。注文の絵と写生帖では、線の速さがまるで違う。同じ手が、二つの調子を持っている。
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画家を知る
立ち上がる馬を、石に描く——オラース・ヴェルネ
前脚を上げた馬が、いままさに走り出す。十九世紀初めのフランスで、石版画という新しい技術にいち早く手を出した画家の六点。動きをどう止めて見せるか、そして石に描いて摺るとはどういうことかを見る。馬という主題を選び続けた理由にも触れておきたい。
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画家を知る
上が丸い板に、対の夫婦——ヨース・ファン・クレーフェ
上端が半円になった板が二枚、向かい合う。手袋を持つ男と、数珠を持つ女。緑の背景と、緑の衣。十六世紀のアントウェルペンで、絵が商品として売られた町の作法を、六点でたどる。二枚を並べて初めて意味が通る、対の肖像という形式である。手袋と数珠が、それぞれの役割を示す。
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画家を知る
ロンドンへ行かなかった肖像画家——ヘンリー・レイバーン
十八世紀の英国で、肖像の注文はロンドンに集まった。それでもエディンバラに留まり、地元の顔を描き続けた画家がいる。赤い軍服の塗り方、子どもの手、幅のある制作年。九点で、その仕事の質を確かめる。地方に残るという選択が、何を可能にしたかを考えたい。
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美術史・技法
十二センチの板に、使徒を写す——ヴァン・ダイクに倣う
縦十二センチほどの小さな板が九枚。館の記録は、いずれも「〜に倣う」とする。原画があり、版画があり、その版画を見て板に描いた誰かがいる。四つの段階をたどりながら、複製という仕事の輪郭を確かめる。誰が描いたか分からないまま残る絵の、扱い方も考える。
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美術史・技法
卓に古器を並べて、集う——朝鮮王朝の画帖八葉
卓の上に青銅の器と巻物が並び、その前に人が集まる。中国に由来する主題を、朝鮮王朝の絵師が描いた八葉の画帖である。虫損や剥落を抱えたまま残る紙を、失われた部分ごと見ていく。手元で開く絵の見方を考える。卓上の器の一つひとつに、描き手の関心が表れている。
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画家を知る
版で摺らず、筆で挿す——奥村利信
色は版で摺られていない。摺り上がった墨の線に、あとから筆で色を置いている。丹の橙、黒の光る漆絵。八点を並べ、色版が生まれる前の版画の作り方を見る。記録の年代が合わない点も、そのまま書いておく。一枚ずつ手で塗るという、量産以前の版画である。
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画家を知る
顔で、紙を埋める——勝川春英
大判の紙の半分を、役者の顔が占める。額の皺、への字の口、見開いた目。似せることより、崩すことに寄っていく九点を並べた。悪役の顔と、細判に戻ったあとの仕事まで追うと、大首絵という型の幅が見えてくる。版元の企画としての役者絵という前提も、あわせて確かめたい。
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