COLUMNSコラム

  • 画家を知る

    磨いた表面と、残した筆跡——ジャン=レオン・ジェローム

    筆の跡を消した大作と、跡を残した小品。石が肉になる場面から、虎、モスク、狩りの肖像まで六点を見る。東方主題をめぐる問題にも触れる。仕上げは技術の限界ではなく選択である。近づいて、表面そのものを見てほしい。

  • 美術史・技法

    フランスが刻んだ独立の記念——オーギュスタン・デュプレ

    議会のメダルを、パリの職人が彫った。自由の寓意、月桂の冠、そして同じ横顔の繰り返し。原物と複製が混じる七点から、型と複製の関係を見る。電気鋳造の複製が一点混じる。記録の一行が、原物と複製の判断を支えている。

  • 画家を知る

    帖の一葉と、扇の面——陳洪綬

    十二葉のうちの一葉、十二面の扇のうちの一面。見えているのは全体のごく一部である。明末清初の画家の六点を、画面の形と余白から見ていく。扇の折り目、朱の印、賛の位置。制約と作法が、画面の組み立てを決めている。

  • 画家を知る

    青い紙に、地中海を描く——ウィリアム・スタンレー・ハセルタイン

    空を塗らずに、紙の青をそのまま使う。ローマに住んだ米国の画家が残した油彩と水彩と素描、九点を見る。材料が変わると、同じ景色がどう変わるか。重い油彩と、軽い水彩。娘の手で館に渡った九点から、二つの重さを見比べる。

  • 画家を知る

    部屋にはめ込むための絵——フランソワ・ブーシェ

    四隅を落とした横長、楕円、正方形。六点で五種類の画面の形がある。形を先に与えられた絵が、どう組み立てられたか。十八世紀の装飾画の作りを見ていく。雲と幼児と薄紅色。明るい色を選ぶのは、部屋を暗くしないための判断でもある。

  • 画家を知る

    四センチの肖像と、波止場の群像——ジョン・カーリン

    耳の聞こえない画家が、象牙に描いた細密画と、画布に描いた風俗画。縦四センチから五十センチまで、九点の寸法を追う。写真に押された細密画の終わりにも触れる。小さな仕事で鍛えた精度が、大きな画面の隅にも同じ丁寧さで残っている。

  • 画家を知る

    紙に描いた、空だけの絵——シモン・ドニ

    十八世紀の終わり、売るあてのない紙に空だけが描かれた。戸外で短時間に仕上げた習作六点を見る。次の世紀の絵を準備した、地味な蓄積の記録である。題は場所ではなく、時刻と天候である。何を主題とするかが、そこで変わった。

  • 美術史・技法

    三つの町の甲冑師——ロッホナー、グロースシェーデル、ペッフェンハウザー

    ニュルンベルク、ランツフート、アウクスブルク。同じ時期に王侯の注文を受けた三人の作を九点並べる。重さの数字と、肩当ての形から産地の違いを見る。後年の補修や組み合わせの記録も含め、記された事実にもとづいて読んでいく。

  • 画家を知る

    写真に仕事を奪われてから——エラストゥス・ソールズベリー・フィールド

    一八三〇年代の肖像と、後年の巨大な建築の空想画。写真の普及で仕事を失った画家が、次に何を描いたか。九点で、九十五年の生涯の前後をたどる。見たものは近く、見ないものは遠い。人の大きさが、その距離を示している。

  • 画家を知る

    割れた卵と、伏せた目——ジャン=バティスト・グルーズ

    床に転がる卵、それを直そうとする子ども。物語を語る風俗画で名を上げた画家の六点を見る。歴史画への挑戦と、量産された頭部の絵にも触れる。目の向きだけで感情の種類が決まる。型と知って見ても、効果は消えない絵である。

  • 美術史・技法

    銀貨をつくる植民地——ジョン・ハルと松の木シリング

    二文字の刻印だけの銀貨から、松の木を彫った貨幣へ。重さが価値そのものだった時代の五枚と、同じ職人が作った銀の杯。六点を数字から見ていく。削られない縁飾り、いびつな輪郭、手作業の誤差。三百五十年前の槌の跡を見る。

  • 画家を知る

    円い青銅に、横顔を留める——オーリン・レヴィ・ワーナー

    数ミリの起伏だけで顔を示す肖像浮き彫り。素描から立像まで九点を並べ、輪郭線という一貫した主題を追う。太平洋岸北西部で作られた三点についても書く。記録としての価値と、記録する側の立場。その両方を分けて書いておきたい。

  • 画家を知る

    猿が、人を演じる部屋——クリストフ・ユエ

    音楽会、踊り、釣り、そして絵を描くこと。人の服を着た猿が、人の営みを繰り返す六点。四隅を落とした画布の形から、もとの部屋を想像する。自分を笑う絵を壁に掛ける。その皮肉が装飾として成り立つ理由も考えてみたい。

  • 画家を知る

    同じ大きさの海を、何枚も——トマス・チェンバーズ

    七点がほぼ同じ寸法で、水面はどれも白い線の連なりでできている。規格で描かれた港と嵐と湖。線の引き方の違いだけを追って、九点を見ていく。版画から借りた構図を、自分の色で描き直す。量産と手仕事は矛盾しなかった。

  • 画家を知る

    板の表と裏に、別の絵——ベルンハルト・シュトリーゲル

    表に夫婦の顔、裏に二つの家の紋章。板絵の裏面まで公開された六点から、両面の絵という形式と、後世に加えられた補強の跡を読む。祭壇画の翼二枚も加え、織物と木と金という、三つの異なる面の描き分けを見ていく。

  • 美術史・技法

    同じ時代の、二つの線——一筆斎文調と北尾重政

    十八世紀後半の江戸で、役者絵と美人画を手がけた二人。裾の線の太さ、余白の取り方、摺物という別の仕事。九点を並べて、線の質の違いを確かめる。建築家の寄贈による一枚や、写り込んだ濃度見本といった細部にも触れておきたい。

  • 画家を知る

    金属に、顔を刻む——モーリッツ・フュルスト

    直径六センチの円盤に、海戦と横顔が浮き彫りにされている。議会が贈るメダルから、大統領の銀メダル、産業の賞牌まで。九点で、円という枠の中の仕事を見る。顔を彫るか、木を彫るか。小さな円盤に、新しい共和国の考え方が刻まれている。

  • 画家を知る

    使い古したものを描く——ジョン・フレデリック・ピートー

    擦り切れた本、剥げた扉、へこんだ薬缶。新しいものが一つも出てこない九点を見る。別人の署名が入った一枚をめぐる、帰属の問題にも触れる。古びは、質感であり時間である。傷んだものを選ぶのは、実際的な判断でもあった。

  • 画家を知る

    手のひらの宮廷肖像——コルネイユ・ド・リヨン

    縦十八センチに満たない板に、宮廷の人々の顔がある。緑の背景、黒い衣、四分の三の角度。七点に共通する型と、目の置き方だけで生まれる差を見ていく。名前の失われた六点も含め、板を継ぎ足した跡や来歴の記録まで合わせて読む。

  • 美術史・技法

    細判の中の役者——勝川春好と勝川春英

    縦三十二センチ、横十四センチ。細長い紙に立つ役者を、同じ工房で育った二人がどう描き分けたか。写楽と同じ時期の江戸の役者絵を、九点で見比べる。顔でも構図でもなく、まず線の太さを見る。そこに彫師と絵師の呼吸が出ている。

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