COLUMNSコラム
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画家を知る
十センチの自画像——ジョゼフ・ウッド
縦10.2センチは、細密肖像としては大きい。身に着けるには大きすぎ、置いて見る物に近づく。大きくすると、髪の一筋まで描けるようになる。象牙に水彩という同じ技法の九点で、寸法の効き方を確かめる。鏡を使えば左右が入れ替わる、という問題も残る。
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額に入ったまま、測る——ナサニエル・ロジャーズ
館の寸法欄に「額の内側」と書かれることがある。作品を額から外さずに測った、という意味である。保存を優先すれば、正確な寸法は分からない。九点の細密肖像から、その判断の跡を読む。額の形が四角と楕円に分かれることにも、理由がありそうである。
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四センチ八ミリの中の、一人——ウィリアム・ヴァースティル
縦4.8センチ、横3.7センチ。象牙を薄く削り、水彩で描く。珠の並ぶ枠と上部の金具は、身に着けるための作りである。建国まもない時期の細密肖像九点を、寸法と枠から見たい。髪の白さと襟飾りが、当時の装いを伝えている。
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象牙ではなく、銅に七宝で——ウィリアム・ラッセル・バーチ
細密肖像の多くは象牙に水彩で描かれる。ところがこの画家は、銅板に七宝を焼き付けた。何度も窯に入れる危険な工程だが、色は褪せない。三センチほどの画面八点から、材料の選択が持つ意味を読む。展示の条件が、象牙のものとは変わってくる。
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二人の顔が、重なる——J・オールデン・ウィア
並んだ二人の女性の、顔と視線が交差する。手は大きく描かれ、指の形まで見える。暗い画面の中で、緑の胴衣だけが色を持つ。六点の構図から、この画家の静かな組み立て方を見たい。帽子の形と手の位置が、二人の関係を語っている。
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緑の紙に、水彩で描く——ウィリアム・リッカビー・ミラー
支持体は、薄い緑の網目紙である。地の色があるから、白は後から置くことになる。水彩とグワッシュと黒鉛という三つの材料が、一枚の中で役割を分ける。渓谷を描いた八点で、その順序を追う。白い水の描き方が、順序をいちばんよく示している。
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色のない画像で、牧場を読む——ジェームズ・M・ハート
七点のうちいくつかは、古い白黒の記録写真で公開されている。色は分からない。それでも、明暗だけで水面や木立や家畜の位置は追える。何が失われ、何が残るのかを確かめながら、低い視点の風景を見る。空の面積と地平線の高さが、この画家の画面を決めている。
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手前を暗く、奥を明るく——トマス・ドーティ
画面が三つの層に分かれる。手前は暗く、中景がつづき、奥が明るい。空気の層が距離を作る。北米で最初期の風景専門画家とされる人の六点から、遠さを描く仕組みを取り出す。左右の木は、枠として働く。帆の白い点が、距離を測る目印になる。
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森の中から、浅い流れを見る——ワージントン・ウィトリジ
縦長の画面である。上部を枝が覆い、天井のある空間になる。開けた眺めではなく、森の内側から描いている。六点の判型と光の入り方から、なぜこの画家が縦長を選んだのかを考えたい。奥の明るみだけが、森の外につながっている。岩壁の色にも注目したい。
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影を減らして、速く描く——ウィリアム・マシュー・プライアー
顔に影がほとんどない。立体を作らず、輪郭と色面で人を示す。速く安く描くための方法だったのだろう。もっとも、館の記録はそう説明しない。推測は推測として括りながら、六点の平らな画面を見る。色の数を数えると、その速さの根拠が見えてくる。
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八点すべてが、色のない画像——ヘンリー・ウィリアムズ
この画家の公開画像は、八点とも白黒の記録写真である。だから、実際の色は分からない。それでも、背景の階調や楕円の形は読める。分からないことを分からないと書いたうえで、見えるものだけを八点で追う。撮影にも順番があり、その順番が公開の姿を決めている。
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筆の跡が、見えない——チャールズ・クロムウェル・イングラム
画面が磁器のようになめらかである。薄い絵の具を何度も重ねると、筆の跡は消える。消すことで得られるものと、失われるものがある。花の一輪ずつまで描き込まれた九点から、その選択を確かめる。籠の編み目まで、一つずつ数えられるほどである。
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画家を知る
明るいのは、顔だけ——チャールズ・ローリング・エリオット
画面はほとんど暗い。そこに顔と襟だけが浮かぶ。赤い一点が、暗さの中で効いている。十九世紀半ばのニューヨークで多くの肖像を描いた画家の九点を、暗さの使い方という一点にしぼって見たい。自画像も含まれ、鏡を使った顔の向きが読める。
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画家を知る
石の窓から、顔が覗く——レンブラント・ピール
楕円の石枠の中に、初代大統領の顔がある。石にはわざと罅が描かれ、古びた記念碑のように見せる。同じ構図を何度も描き、複製として売った画家である。八点の記録から、記念像という仕事の姿を見る。石の罅は、時間そのものを描いた細部である。
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画家を知る
卓の上の、果物と硝子——ラファエル・ピール
暗い背景の前に、卓が水平に置かれる。目の高さは卓とほぼ同じで、見る人は近くに立たされる。透明な硝子と、檸檬の皮と、木の実の集まり。北米で最初期の静物画家とされる人の九点を、光の当たり方から読む。影の向きをたどると、光源の位置まで分かってくる。
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画家を知る
鋼に金で描き、重さまで記録する——クンツ・ロッホナー
胸甲の重さは3,472.8グラム、と館の記録は書く。小数第一位までの数字が、八点すべてに並ぶ。着るための道具だからこそ、重さが情報になる。金の帯で飾られた十六世紀の甲冑を、装飾と機能の両面から見たい。
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美術史・技法
白い地に、黒い渦を巻く——古代プエブロの土器
千年以上前の南西部で焼かれた壺と鉢である。釉薬は使わず、鉱物の顔料で直接描く。作った人の名は残らないが、その子孫にあたる人々はいまも暮らしている。館の記録が示すことと示さないことを、六点で確かめる。来歴の欄が空白であることの意味も、あわせて考えたい。
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美術史・技法
作者の名が、ない八枚——十八世紀のフランス絵画
作者の欄には、時代と地域だけが書かれている。美術館は分からないものを分からないと登録し、推測で名を当てはめない。紙に描いてカンヴァスに貼った下絵から、古代の主題まで。名の空白そのものを八枚で読む。名がなくても、作品は残る。
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画家を知る
二枚並べて、背景がつながる——勝川春章
二枚続き、三枚続きという形式の錦絵である。ところが館の寸法欄には、一枚分の数字しかないことがある。別々にも売れる版画が、並べたときだけ一つの場面になる。境目の処理と背景の連続から、その仕組みを六点で見る。
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画家を知る
若い自画像から、二メートルの全身像へ——アンソニー・ヴァン・ダイク
肘をついた二十代の自画像から始まる九点である。やがて画面は二メートルを超え、人物は見上げる高さに立つ。館の記録には、後から縫い足された布の帯まで書かれている。肖像が格式を帯びていく過程を、寸法と記録から追いたい。
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