COLUMNSコラム
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名画の楽しみ方
場所のない画面で、五十回を閉じる——ファンタン=ラトゥール・ガルツォーニほか九点
五十回にわたって場所を数えてきた連載の最終回は、場所の描かれていない画面である。九点とも背景に場所がなく、七点は背景が暗い。物が載る卓の面だけが、静物における唯一の場所だった。背景を消すことが、物を見せる方法だった。
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美術史・技法
茶屋は静かで、宿屋は暗い——俊満・オスターデ・スローンほか九点
立ち寄る場所には、知らない人が居合わせる。九点で数えると、器や杯があるのは六点だった。日本の茶屋は明るく人が少なく、ヨーロッパの宿屋は暗く人が多い。床の高さが姿勢を決めている。店の名が読めるのは二点だけである。
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美術史・技法
野営の中心は、火である——ラインハート・ホーマー・バーナードほか九点
野営には部屋がなく、囲いもない。九点で数えると、火が描かれているのは三点で、その周りに人が円く集まっていた。天幕や覆いは四点。悔悛と特許の綴りで、二点が混じっている。寝る場所が描かれた画面は一点もない。
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美術史・技法
墓の印は、七点とも石である——カナレット・ザルツマン・デ・ウェルヴェほか九点
墓は長く残ることを前提に作られる。九点で数えると、七点で石が使われ、木の墓標は一点もなかった。葬られた人の名が分かるのは三点だけ。墓から外された彫刻も一点ある。文字が刻まれているのは四点で、読めるのは二点しかない。
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美術史・技法
泉の語が、春を連れてきた——ルグロ・コルベ・カランザほか九点
英語では、湧き出る水と季節の春が同じ語である。九点で数えると、水の出る場所は三点しかなく、春を主題にしたものが五点混じった。花があるのは五点、泉の三点にはいずれも花がない。語の重なりが、水と季節を一つの棚に並べてしまう。
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作品を知る
遠いものは、七点で薄くなる——雪舟の周辺・王翬・レーンほか九点
空気の層を通ると、色が抜けて輪郭がぼやける。九点で数えると、七点で遠景が薄く描かれていた。東アジアの五点は薄い墨で距離を作る。同じ題の作品が、三百年を隔てて二点並んだ。手前と奥の境目は、いずれも水か霧で作られていた。
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作品を知る
遠近の作り方は、五通りあった——政信・ブロンデル・リッピほか九点
線を一点に集めるのは、遠近を作る方法の一つにすぎない。九点で数えると、その方法は四点で、残る五点は別の手を使っていた。段を重ねる、見下ろしと正面を混ぜる、見上げる、道を引く。線が集まる点が画面の外にある例も二点ある。
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名画の楽しみ方
地図は、誰も見ていない眺めである——ノッリ・バルバリ・ホイッスラーほか九点
地図は上から見た図だが、上から見た人はいない。測って、計算して、紙の上で組み立てる。九点で数えると、大きな地図は十二枚と六枚の紙でできていた。縮尺が読めるのは一点だけである。方位が示されるのは四点で、北が上とはかぎらなかった。
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名画の楽しみ方
上から見下ろした画面は、一点だけ——ブレス・ラッド・ディーン・ダヤールほか九点
鳥瞰や全景という語は、視点の高さを意味しない。九点で数えると、実際に見下ろしているのは一点だけだった。残る八点は水平に近い位置から広い範囲を写す。三メートルの水彩と、二枚組の写真が並ぶ。高さを得るには、塔か山か気球が要る。
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名画の楽しみ方
見ていない眺めが、一点ある——ブラウン・カナレット・北斎ほか九点
眺めとは、ある位置から見た図である。九点で数えると、実景が五点、想像上の眺めが一点だった。いずれも対象が遠く、手前に木や水面が置かれる。日本語の「眺める」で二点が混じった。題に地名が入るのは六点だった。
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作品を知る
影が白い画面が、一点ある——歌麿・マネ・テナールほか九点
影は光がさえぎられてできる暗い部分である。九点で数えると、影が描かれているのは四点だけだった。うち一点は写真の陰画で、明暗が反転している。日本語の影には、姿という意味もある。九点のうち五点は、影ではなく人の姿を指していた。同じ字が、光の欠如と面影の両方を担う。
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作品を知る
夕方が八点、朝は一点——バンス・シャントルイユ・ビーチほか九点
日の出と日の入りは一日に二度だけ起きる。九点で数えると、夕方が八点で、朝は彫刻の一点だけだった。太陽が描かれるのは三点で、残りは光だけである。空の色は黄と橙で、赤はほとんど使われない。太陽の位置は、いずれも水平線のすぐ上にある。
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作品を知る
天体の月と、暦の月——岳翁蔵丘の周辺・杜堇・ナヤほか九点
日本語では月が天体と暦の両方を指す。九点で数えると、天体の月は四点、暦の月が四点だった。月はいずれも白い円か細い弧で、模様は描かれない。昼に撮って夜に見せた写真も一点ある。欠けた月は三点で、満月は一点しかない。
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作品を知る
夜の画面は、五点しかない——サヴラソフ・カザン・ポワンほか九点
夜を描くには、どこかに光を置くしかない。九点で数えると、夜の場面は五点で、光源は四種類あった。木版では夜が明るく摺られる。騎士の綴りや、翻訳による一致で四点が混じった。星が描かれるのは一点だけである。
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作品を知る
描かないことが、霧になる——ショート・卞文瑜・石濤ほか九点
霧は輪郭を消すものだから、線と色を減らして描く。九点で数えると、霧が描かれているのは八点で、四点は塗り残しだった。中国の四点が墨の濃淡で距離を作る。錬金術師の版画が一点混じる。霧の濃さは、余白の広さで決まっていた。
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作品を知る
雨の線を引いた画面は、二点——呂文英・ピサロ・ターナーほか九点
雨は細くて速い。九点で数えると、雨の線を引いているのは二点だけで、残りは調子と姿勢で示していた。雨の二点は縦長、嵐の四点は横長。偽の印と、消された署名と、贋作を作った画家の記録も出てくる。風の向きが分かるのは五点である。
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作品を知る
降っている雪は、一点もない——ボヌール・ピサロ・法若真ほか九点
雪は動くので、積もった状態でしか描けない。九点で数えると、雪が見えるのは五点で、いずれも降った後だった。塗り残しで作られた雪が三点。芝居の名や姓など、語だけの雪が四点混じる。雪の画面はいずれも暗い色を持たず、影が青く置かれていた。
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作品を知る
島は、画面に描かれない——カナレット・ピサロ・カルポーほか九点
島は囲まれていることが条件だが、それは上から見なければ分からない。九点で数えると、島が見えるのは二点だけで、残る七点では島は名前のなかにある。流された人を扱った二点も並ぶ。地名としての島が五点、姓としての島が二点。囲まれていることは、絵では見えない。
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作品を知る
雲の上に、人が座る——クロス・バロッチ・龔賢ほか九点
雲は形が定まらないが、絵の雲には型がある。九点で数えると、丸く盛る形が三点、渦を巻く形が二点、横に伸びる帯が二点。二点では雲が人を載せる台になり、二点では山を隠す帯になっていた。白い雲は四点、灰の雲は三点である。形のないものに、絵は必ず輪郭を与えていた。
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作品を知る
空は、塗るか、残すか——ブーダン・池大雅・ルドンほか九点
空の描き方は三つに分かれる。塗る、紙の地を残す、線を引かない。九点で数えると、空が半分以上を占めるのは四点だった。姓の綴りに空の語が入っていた二点も混じる。空はどの画面でも地面より明るい。雲がないのは二点だけだった。
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