COLUMNSコラム
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暮らしと名画
同じ椅子が、二脚並んでいる——ダンカン・ファイフ父子商会ほか九脚
作者も年も寸法も同じで、番号だけが一つ違う。揃いの家具だからである。カップと受皿は二つで一件、椅子は二脚で二件。この差はどこから来るのか。三十回にわたって見てきた単位の話を、ここで閉じたい。張り地はたいてい新しく、そのことも記録に書かれている。
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作品を知る
番号の差が、八である——タッカー製陶所ほかのカップと受皿
読点でつながれた二つの番号。その差が八なら、同じ受入に八客あったと推せる。差が一なら、一組ずつ振っている。書かれていない揃いの規模を、記号の構造から読み取る。二つで一件にする理由も考えたい。受皿が深く作られている理由にも触れたい。
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作品を知る
番号が、六つ並んでいる一件——組み合わせの甲冑、メトロポリタン美術館
受入年も出所も違う部品が、一領に組まれている。文化の欄には四つの国が並び、一九一三年にニューヨークで作られた部品まで入っている。補ったことを隠さずに書く。その記録の作法を読みたい。鎖の輪の直径まで測る欄が、何のためにあるのかも読みたい。
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美術史・技法
分類の欄に、家具の名が入っている——婚礼櫃の板、天井画の下絵、扉上の灰色画
櫃の正面、天井、扉の上。もとの置き場所が、そのまま種別の名になっている。横長の画面、四隅の塗り残し、彫刻に見せかけた灰色。壁に掛ける前提で作られなかった絵を、九点並べて読みたい。もとの高さを知ると、構図の理由まで見えてくる。見上げる絵と見下ろす絵を並べたい。
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名画の楽しみ方
板に描かれ、布に移された——マンテーニャ、ルーベンスほか九点
絵具の層を板から剥がし、新しい支持体に貼り直す。九点の技法の欄が、その処置を申告している。板から布へ、さらに布から硬質繊維板へ、二度移された一点もある。いま見ている表面の下にあるものを読みたい。大きい絵は布へ、小さい絵は硬い板へ。数字を並べると傾向が見える。
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美術史・技法
後頭部に、誰かの手が置かれている——アウワーテル、バウツほか絵画の断片
手の持ち主は、そこにいない。板がその手前で断たれているからである。切れた光輪、不定形の輪郭、断たれた丘。分類の欄の「断片」という語より、画面に残った一本の手のほうが直接に語る。番号が付いた瞬間に、断片は一件になる。そこに無いものを一緒に見る方法を考えたい。
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名画の楽しみ方
一つの番号に、枝が三つ付く——ペルジーノ《磔刑》ほか
三枚の板が一件にまとまり、額の寸法が三度繰り返される。上の左、上の右、下、と位置まで書かれた件もある。そして、同じ翼の板が開いた面と閉じた面で別々に数えられる。数え方が見え方に従う例を読みたい。物の枚数と番号の数が、一致しない理由も読みたい。
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美術史・技法
枝番のbが、抜けている——フアン・デ・フランデスほか祭壇画の板九点
左の板と右の板があり、中央がない。記録の連作の欄には、祭壇画の名と番号の範囲が書かれている。寸法、板の形、人物の傾き。ばらばらになった板を記録の上で組み立て直す方法を読みたい。金の地から風景の背景へ、二百年の変化も同時に見える。九点を古い順に並べて読みたい。
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美術史・技法
額の横が、二メートル八十三センチある——サーノ・ディ・ピエトロほかプレデッラの板
板は五十センチもないのに、額はその五倍以上ある。一つの額に五点が入っているからである。祭壇画の下の帯に並んでいた小さな板が、いま一枚ずつ番号を持っている。分類の欄に残る、もとの位置を読みたい。額を五点で共有するという書き方も、記録に残っている。
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作品を知る
揃物の名が、画面に刷られている——北斎《冨嶽三十六景》と広重《六十余州名所図会》
題箋という小さな枠に、組の名と一枚の題が入っている。版木に彫られているので、一枚だけになっても消えない。三十六景が四十六枚になった事情も含めて、企画の数と実際の枚数のずれを読みたい。判型がそろい、題箋の位置だけが構図に応じて変わる。並べたときの見え方まで考えられている。
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名画の楽しみ方
三枚続の、左の一枚——写楽、歌麿、清長ほか九点
技法の欄が、残り二枚の不在を書いている。書かなければ、一枚の役者絵として通ってしまう。画面の端で衣が切れ、桜の枝が断たれている。欠けていることを記録に残すという作法を読みたい。確からしさに応じて、おそらく、あるいは、という語が使い分けられている。その作法も読みたい。
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美術史・技法
三枚で、一つの絵になる——広重《阿波鳴門之風景》ほか三枚続九点
同じ大きさの版画を三枚並べ、一つの画面を作る。海の色も波の線も、二本の継ぎ目を越えて続く。番号に枝番を振るものと振らないもの、寸法を三通りに書き分けるもの。記録の揺れごと読みたい。継ぎ目の本数を数えるだけで、そろっているかどうかが分かる。三枚で一件とする判断も読みたい。
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作品を知る
表に金、裏に金なし——狩野派、英一蝶ほか両面のある屏風
技法の欄が、表と裏で二つに分かれている。材料の差が、そのまま格の差である。二曲の低い屏風、屏風から外された一面、卓上から壁掛けに改められた石。用途が変われば分類まで変わる例を読みたい。公開画像に写っているのが表か裏かも、題の書き方から分かる。
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美術史・技法
番号が二つ、記録は一つ——鈴木其一、俵屋宗達ほか六曲一双の屏風
読点でつながれた二つの番号が、一件の記録に並んでいる。屏風が二隻で一組だからである。絵としては一つ、物としては二つ。そのずれを記号で埋めている。一隻しか写らない公開画像の理由も、そこにある。六曲一双で十二面、それでも記録は一件である。
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美術史・技法
十幅のうち、五幅がここにある——金処士《十王図》ほか
技法の欄に「十幅一組のうちの五幅の一つ」とある。三段の入れ子である。五百体一組のうちの一体、二十四枚のうちの十枚。組の名はもとの数を保ち、番号がいまの数を示す。引き算をして、失われた量を読みたい。同じ形式を十回繰り返すことの意味も考えたい。
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作品を知る
番号が、一つ違いで並んでいる——ベンティヴォリオ夫妻ほか対の肖像
同じ作者、ほぼ同じ寸法、姓が同じ。二枚を並べると、二人は向かい合う。ところが、対に見えて対ではない例もある。寸法が二十二センチ違い、年が七年離れている。記録の数字で対を見分ける方法を読みたい。対の片方だけが残り、題に役割の名だけが付いた一点もある。
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美術史・技法
同じ題が、三つ並んでいる——狩野探幽ほか三幅対の掛軸九幅
作者も年も寸法も同じで、番号だけが一つずつ増えていく。三幅対だからである。中央の一幅にだけ月があり、両脇にはない。三本そろってはじめて題が成り立つ。物として三つ、絵として一つという形を読みたい。番号の順が、そのまま掛ける順になっている例もある。
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作品を知る
絵は五十六センチ、巻物は八メートル——文徴明、沈周ほかの巻子
画面と全体で、寸法が十倍以上違う件がある。差の大半は、後の人が書き足した文字である。紙を継げば、巻物はいくらでも伸びる。一件という単位の中に、四百年ぶんの時間が巻き込まれている。画面と全体の差が、そのまま後の時間の長さである。二つの数字を並べて読みたい。
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美術史・技法
扇が、掛軸に仕立てられる——池玉瀾、北斎、狩野永徳ほか九点
技法の欄に、二つの形が並んで書かれている。もとの形と、いまの形。扇、本の一葉、巻子の一段、屏風の二面。いずれも掛けるための形に作り替えられている。表装が全体の七割を占める理由も、数字から読める。九センチ幅の断簡まで、掛けるための形にされている。
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名画の楽しみ方
本の丁が、一枚の版画になる——喜多川歌麿《絵本四季花》
中央に折り目のある見開きが、木版画として登録されている。文字だけの丁にも番号が付く。一方、ばらされていない絵本は表紙のまま一件である。同じ画家、同じ紙で、記号も分類も分かれる理由を読みたい。折り目の跡だけが、本だったことを示し続けている。
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