COLUMNSコラム

  • 作品を知る

    満月は、円い空白である——広重・北斎・欧米の夜景ほか九点

    月を刷るには、円を残す。周りを刷って、中を空ける。その円が、画面のどこにあるかで夜の深さが変わる。九点で、月の位置と大きさを測りたい。欠けた月を描いた例は、この九点にない。月を隠す雲の描き方も、あわせて読みたい。

  • 作品を知る

    白は、刷らずに残す——広重・北斎・欧米の版画ほか九点

    版画の白は、絵具ではない。紙をそのまま残した部分である。だから、白を作るには彫って落とすしかない。九点で、残された白の働きを読みたい。雪も、波も、光も、同じ紙の色である。紙の地の色そのものが、九点で少しずつ違う。

  • 作品を知る

    水面は、上下をひっくり返す——広重・欧州絵画・掛軸ほか九点の映り込み

    水は、空と岸を逆さに映す。そして、映った像は少し崩れる。その崩し方に、描き手の判断が出る。九点で、映り込みの描き分けを読みたい。鏡のように映す絵は、意外に少ない。波を立てると、映った像がほどけていく。

  • 作品を知る

    一本の木が、画面を支える——広重・米国風景画・掛軸ほか九点

    画面の端に、大きな木を一本立てる。すると、その向こうが遠くに見える。木は、距離の物差しになる。九点で、木の置き場所を測りたい。左に立つ例が、右に立つ例より多い。幹の太さと、枝の広がり方も比べたい。葉の描き込みにも差がある。

  • 作品を知る

    山は、いちばん上にある——富士・アルプス・中国の峰ほか九点

    遠い山は、画面の上に置かれる。そして、輪郭だけになる。色は薄く、細部は消える。九点で、山がどこまで簡略になるかを追いたい。手前の山と奥の山では、青みの強さが違う。名を持つ山と、名のない山が並ぶ。稜線の重ね方も比べたい。

  • 作品を知る

    高さは、上下に積んで示す——掛軸・版画・欧州絵画ほか九点の縦構図

    縦長の画面では、上へ積むしかない。山、木、塔、滝。そのどれもが、下から上へ重ねられる。九点で、高さを見せる方法を数えたい。掛軸の記録は、画面と表装で二つの寸法を持つ。上に行くほど、描き込みが減っていく。

  • 作品を知る

    道が、奥へ入っていく——広重・北斎・バルビゾンの画家ほか九点

    道は、見る側を絵のなかへ引き込む。手前で広く、奥で細くなる。その細り方が、距離を決める。九点で、道の消え方を読みたい。曲がる道と、まっすぐな道では、伝わる距離が違う。道の上を歩く人が、距離の目安になっている。

  • 作品を知る

    橋は、画面を横切る線である——広重・歌麿・オランダ絵画ほか九点

    橋は、二つの岸をつなぐ。同時に、画面を上下に分ける線にもなる。だから、どの高さに置くかで構図が変わる。九点で、橋の角度と位置を測りたい。斜めに架かる橋は、奥行きを作る。渡っている人がいるかどうかも、あわせて数えたい。

  • 作品を知る

    舟は、水平線を示すために置かれる——広重・北斎・ターナーほか九点の遠景

    海だけを描くと、水面が壁に見える。そこへ小さな舟を一艘置くと、奥行きが出る。舟の大きさが、距離の目安になるからである。九点で、遠くの舟が何をしているかを読みたい。帆の形が三通りに分かれる。帆を張った舟と、櫓で進む舟が混じる。

  • 作品を知る

    小さく描かれた人が、風景を広げる——広重・コロー・カルロ・ドルチほか九点

    遠くの人は、点にしかならない。それでも、そこに人がいると分かる。輪郭の要点だけが残るからである。九点で、人物の大きさと風景の広さの関係を測りたい。画面の高さの十分の一を切ると、顔は描かれなくなる。部門をまたいで、同じ扱いが現れる。

  • 名画の楽しみ方

    行に年がなく、番号に年がある——出所の行を読む三十回の結び

    ロジャーズ基金七百二十二点のうち、一点だけ年が書かれていない。しかし番号が一九一七年を示し、その番号は器の高台にも書かれている。前所蔵という語、財団という寄贈者。三十回を番号で振り返りたい。出所の行が書かないことについても、まとめておきたい。

  • 作品を知る

    一つの主題だけを、集める——ガーツ夫妻のアメリカ静物画、2003年から2018年

    花、果物、野菜。二十九点すべてが静物である。壁に影を落とす葡萄、切られた檸檬、楕円の木苺、地面ごと描かれた野の花。年記なしが九点。長く格が低いとされた分野を集めた仕事を読みたい。小さな絵ほど額の比率が大きくなることにも触れたい。

  • 作品を知る

    名前が、いまも買い続けている——チェスター・デイル・コレクションと同名の基金

    コレクションとして九十二点、基金として十八点。そして基金は二〇二五年の受け入れにも現れる。裏打ちに覆われて見えなくなった書き込みを、記録だけが残している一点についても書きたい。制作年と受入年の差を並べると、収集の姿勢が見えてくる。

  • 美術史・技法

    枝番が、一三九八まである——ハヴマイヤー・コレクション、1929年

    四メートル半の壁画の下絵と、七センチの鍔が、同じ受け入れに含まれている。部門は四つにまたがる。そして一九二九年の行では夫人としか書かれない人が、後の行で自分の名を持つ。その差を読みたい。同じ文面の九十八点のうち、一点だけ区切りの記号が違う。

  • 美術史・技法

    家に残っていた帳面——オーモンド夫人の寄贈73点、1950年

    七十三点のうち七十一点が同じ一人の作である。一冊の写生帖の頁が、一枚ずつ番号を持つ。地名と日付が書き込まれ、表と裏で番号が分かれる。白紙に近い頁も一点として数えられている。番号の順が旅の順になっていることにも触れたい。地名と日付の手書きが題になっている。

  • 作品を知る

    作者の欄に、名前がない絵——ガービッシュ夫妻の寄贈208点

    アメリカ、十九世紀。ある姓のリムナー。おそらく誰それ。頭文字だけ。七十点以上で個人名が分かっていない。寝台用の布、綿ビロード、ガラス。手近な材料に描かれた絵の、記録の書き方を読みたい。画面に五者の名が書き込まれた汽船の絵から始めたい。

  • 作品を知る

    五十年にわたって、同じ一行——クレス・コレクションの310点

    一九三九年に百二点、一九五二年に九十二点、一九六一年に八十一点。年を書けば一回だけを指すことになる。金地の板から布の油彩まで四百年。そして作者の欄に人名がない二点についても書きたい。かつて額に覆われていた範囲まで測った寸法欄についても書きたい。

  • 美術史・技法

    年が、書かれていない——メロン家の三人と、館が生まれた1937年

    コレクションの名だけが置かれ、年がない。館の設立と受け入れが同じ年だからである。第二世代のコレクション、第三の名の基金。同じ姓が六百点を超える出所の行に、八通りの書き方で現れる。一つの作品に四つの番号が書き込まれている例も紹介したい。

  • 美術史・技法

    括弧の中に、別の館の記録がある——コーコラン・コレクションの移管、2014年

    出所の行に括弧が付き、その中に消えた館の出所の行が丸ごと入っている。館による購入、ギャラリー基金、一九〇〇年。番号は捨てられ、来歴は残された。二重の記録が語ることを、百三十一点の内訳から読みたい。額の寸法が作品より小さい記録の誤りにも触れる。

  • 美術史・技法

    遺産が、主語になる——「遺産による寄贈」と「相続人たち」と「子孫たち」

    亡くなった人が残した財産の総体が、贈り主として書かれている。似た書き方が三通りあり、いずれも渡した個人の名を書かない。遺贈とどこが違うのか。歌仙図の色紙四枚と歌麿の見開きから読みたい。寸法の欄の数字が入れ替わっている一点にも触れたい。

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