COLUMNSコラム
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美術史・技法
作者の名が「散逸した写本の画家」である——インドの細密画九点
人名ではない。本の名と、その本が散り散りになった事実が、そのまま画家の呼び名になっている。題にも「散逸した」と書かれる。失われたものを二重に含んだ名前が、離れた一葉どうしをつなぐ糸になっている。作者の欄に紀元前の人名が入る一葉もある。
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作品を知る
画帖の名が、書かれていない一葉——馬遠、馬麟、夏珪ほか九点
種別は「画帖の一葉」。ところが、どの画帖の葉かが書かれていない。もとの冊子が分からなくなっているからである。二十五センチ四方の絹に、八百年の変色。まわりを失った一葉の見え方を読みたい。添えられた細い紙に、後の人が書いた名も残っている。
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美術史・技法
十八葉で、番号が一つ——王鑑、金農、桑山玉洲ほかの画帖
画帖には、一冊で一件になるものと、一葉で一件になるものがある。分かれ目は作者の数である。一人なら一冊、複数なら一葉ずつ。まとめれば中身が見えず、分ければ冊子の姿が消える。その選択の理由を読みたい。枝番の範囲が、冊子の厚さを教えてくれる。
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美術史・技法
扇が、画帖の一葉になる——馬遠、夏珪、文徴明ほか九点、メトロポリタン美術館
部門の名が長い。画帖の一葉として仕立てられた扇。もとは手に持つ道具で、いまは冊子に貼られている。縦横の比が一に近ければ団扇、三に近ければ折扇。寸法の数字だけで形が分かる。七百年続いた仕立てを読みたい。
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美術史・技法
題に、別の絵の名が入っている——エドモンズの写生帖と本画のための頁
「ジル・ブラースと大司教」のための習作。括弧の中の名は、この頁に描かれたものの名ではない。別に存在する絵の名である。枠の内と外で線の性質が変わる頁を並べ、下ごしらえという仕事の形を読みたい。顔がほとんど描かれていない理由も、そこにある。
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作品を知る
帳面に、番号が付いている——ウィリアム・トロスト・リチャーズの第七帖
題に「第七帖より」とある。七冊目、という意味である。同じ一冊のなかで、野の写生から海の写生へ主題が移り、鉛筆の頁とインクの頁が並ぶ。細い枠を引いた頁だけが、絵として閉じている。その差を読みたい。寸法がそろっているからこそ、描き方の差が見えてくる。
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美術史・技法
一冊の帖に、作者が九人いる——マグワイアの貼り込み帖、メトロポリタン美術館
十五歳の自画像、頭文字だけの作者、牛の絵、追悼のような子どもの顔。年は二十年以上にわたり、紙も大きさもばらばらである。それでも出所の行は九点とも同じ一文。集めた人の名が単位の名になった例を読みたい。末尾飾りとして描き下ろされた一枚もある。
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美術史・技法
二・九センチ四方の作品——ホイッスラーの切り抜きを貼った帖
指の先ほどの紙片に、番号が付いている。九点の寸法は一つも重ならない。丸く切ったもの、不定形のもの、青い紙、茶色い紙。はさみの動きがそのまま寸法の欄に残っている。切って貼るという行為が作った単位を読みたい。
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名画の楽しみ方
同じ写真が、二つの番号に付いている——ダニエル・ハンティントンの写生帖
番号も題も違う二件に、まったく同じ絵が写っている。誤りではない。見開きにまたがって描かれた景色が、面ごとに数える方針とぶつかった結果である。紙をめくる動作が記録に残した、小さな重複を読みたい。同じ帳面のなかで、人は縦に、風景は横に描かれている。
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美術史・技法
一冊の帳面が、百四十八点になる——トマス・サリーの写生帖、メトロポリタン美術館
五三・一八二。一九五三年に受け入れた、その年の一八二番目の件である。ところが頁ごとに枝番が付き、紙の表と裏で番号が分かれる。一冊が百四十八点として数えられている。一点という単位を、誰がどう決めたのかを読みたい。
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名画の楽しみ方
署名の名と、作者の欄が食い違うとき——ターナー、ホーマー、カイユボット
書かれた名が別人のものである一点と、年が七年ずれている一点。館はどちらの文字も消さず、記録と並べて置いている。表か裏か、何の上か、どの色の絵具か。五十本のまとめを、この欄の書かれ方で閉じたい。文字と欄のずれを最後に見たい。
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名画の楽しみ方
署名か、銘記か、署名なしか——シカゴ美術館の書き分け九点
銘記の欄の書き出しが、三通りに分かれている。署名され年が入れられている。銘記がある。そして、署名されていない。無いことをわざわざ書くのはなぜなのか。九点の欄を並べて、その書き分けを読みたい。無いことを書く記録を読みたい。
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名画の楽しみ方
題が、行いと場所でできている——ジョージ・カトリンの場面画九点
踊りの名と民族の名。球技の名と町の名。肖像の題が人の名から始まったのに対し、場面の題は行いから始まる。球が上がる、球が落ちる。二重の横線で分けられた、対になった絵の題も合わせて読みたい。行いを名にするという書き方である。
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名画の楽しみ方
題が、音と訳と立場でできている——ジョージ・カトリンの肖像九点
音を写した名、その訳、そして立場や属する集団。三つが読点で区切られて題になる。書き留めたのは外から来た人であり、綴りはその人の耳と文字による。いまの表記との違いも含めて、題の作られ方を読みたい。名を書き留めた側の立場も見たい。
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美術史・技法
作者の欄に、頭文字と年だけ——ニコラス・ヒリアードほか細密画九点
名も生没年もなく、組み合わせた二文字と一つの年しか記されていない。それでも館はそれを一人の作り手として登録し、作品をその下にまとめる。記録として成り立つ最小の形を、九点の欄から読みたい。二文字だけの作者名を読みたい。
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美術史・技法
金地の画面で、文字はどこに置かれるか——額の帯から裏の紋章まで九点
額の帯、光輪の縁、開いた本の頁、画面の下の縁、十字架の上の札、そして板の裏面。九点で、置き場所が七通りに分かれた。景色も室内も描かれない金地の絵に、なぜ文字が必要になるのかを読みたい。置き場所の違いを一点ずつ見たい。
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美術史・技法
寸法の欄に、聖人の名が並ぶ——タッデオ・ガッディの祭壇画ほか九点
区画ごとの幅が、聖人の名を見出しにして順番に並んでいる。その名は文字ではなく、手に持った物から読まれたものだ。車輪、石、書物、そして十字。図が文字の代わりをする仕組みと、それを支える記録を読みたい。持ち物が名を語っている。
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美術史・技法
銃の、どこに誰の名が刻まれるか——銃身鍛冶と銃工と、意匠する人
銃身を打つ人の名は銃身に、全体を仕立てる人の名は機関部に、飾りを考えた人の名は彫りの中に。一挺に何人もが関わり、三つの名が別々の場所に残る。誰を作者として記録するかという判断を読みたい。名の置き場所には順序がある。
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美術史・技法
銘の末尾が、作と画に分かれる——鐔と小柄の金工九点
館の作者の欄には、名前だけでなく末尾の一字までが付いている。作った人なのか、下絵を描いた人なのか。銘をそのまま欄に写した結果である。記録と物とのあいだの距離が、いちばん短い分野を読みたい。末尾の一字が役割を決めている。
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美術史・技法
武具に刻まれた年——1460年の弩から明珍宗明の面頬まで九点
九点とも、年の欄に日付ありと入っている。つまり、その年が物そのものに刻まれている。同じ甲冑師の面頬が三点あり、最後の一点は記録上の没年と同じ年の作である。六百年前に打たれた四文字を読みたい。銘のある武具だけを集めた。
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