COLUMNSコラム
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名画の楽しみ方
一枚の台紙に、番号が七つ——ジョージ・カトリンの厚紙絵九点
厚紙の左下、台紙に貼った札、裏の鉛筆書き、橙色の蝋筆、桃色の絵具、そして粘着テープ。同じ一枚の上に、七つの時期の番号が重なっている。誰も消さなかったおかげで、この絵の通ってきた道が読める。番号の層を古い順にほどきたい。
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名画の楽しみ方
画中の看板と幟——ホフマン《バークス郡救貧院》ほか九点
ここまで見てきた署名は、どれも隠れる方向に置かれていた。今回の九点の文字は逆である。大きく、遠くからでも読めるように書かれる。題、標語、船の名、役員の名。見せるために描かれた文字を読みたい。絵の外へ向けられた声である。
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名画の楽しみ方
追悼画に書かれた碑文——19世紀アメリカの記念の絵九点
柳が垂れ、白い墓標が立っている。その面には、名と亡くなった日と齢が書かれる。一年一か月十五日。日にちまで数えて記した例もある。家の壁に掛けるために作られた、小さな墓のような絵の文字を読みたい。刺繍と水彩の九点を並べたい。
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美術史・技法
画中の手紙と新聞——ハバール《模造》ほか九点
手紙、新聞、暦、帳面、そして紙幣。九点の画面には、必ずどこかに紙がある。そして紙には文字が書かれている。紙が絵の中に入ると、時間も一緒に入ってくる。だまし絵まで含めて、画中の紙の働きを読みたい。紙に書かれた日付も追いたい。
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美術史・技法
画中の本に書かれた、一行——ヘラルト・ドウ、ダンテの寓意的肖像ほか九点
開いた頁は平らで、しかも明るい。だから、文字を置くのにこれ以上ない場所になる。九点のうち一点には、長い詩の四十八行がそのまま書き写されている。抜き書きされた一行が絵全体の意味を決める仕組みを読みたい。
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美術史・技法
帯に書かれた言葉——吹き出しの祖先をたどる九点
細長い帯が画面の中でねじれ、その上に言葉が書かれている。絵は音を出せないので、話した内容を布に載せて見せた。写実が広まると、帯は画面から消えていく。中世から十九世紀まで、置き場所を変え続けた言葉を追いたい。
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美術史・技法
光輪に打ち込まれた祈り——サーノ・ディ・ピエトロほか九点
金の輪の縁に沿って、細かい文字が弧を描いている。九点のうち四点は、まったく同じ一句である。百五十年にわたって、同じ言葉が繰り返された。綴りの揺れまでそのまま写す館の欄から、職人の手つきを読みたい。金の上に打たれた一句を追いたい。
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美術史・技法
欄干に、彫ったように書く——ドッソ・ドッシ、ミレーほか九点
画面の下端に石の欄干を描き、その平らな面に文字を置く。石は硬く、刻まれた文字は動かない。その約束ごとが、そのまま絵の中へ持ち込まれている。文字のための平面をあらかじめ構図に組み込む工夫を読みたい。石の面という約束を読みたい。
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美術史・技法
画中の貼り紙に、署名する——カナレット、サーンレダムほか九点
端がわずかにめくれ、下に影が落ちている。本当に貼ってあるように見えるが、これは描かれた紙である。その上に名を書けば、署名は絵の外の行いではなく絵の中の出来事になる。三百三十年使われたこの工夫を読みたい。
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名画の楽しみ方
木枠が覚えている、名と日付——ウィリアム・ジェニスの一家三人ほか九点
布を張るためだけの棒に、名と生年と齢が書かれている。九点のうち三点は、もとの木枠がいまも付いたままである。一度でも交換されれば消えたはずの文字が、二百年を越えて残った。裏の棒が担ってきた記録を読みたい。
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名画の楽しみ方
裏に書かれ、いまは見えない——19世紀アメリカの肖像九点
裏面、もはや見えない。九点の銘記の欄には、この但し書きが並ぶ。裏打ちの作業で覆われた文字は、いまでは作業前に撮られた写真の中にだけ残っている。写真という技術が、消えかけた言葉を助けた例を読みたい。記録にだけ残る一行を追いたい。
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名画の楽しみ方
年の最後の一字が、読めない——トマス・コール、モネ、ホッベマほか九点
九点とも、年の上三桁までは読める。最後の一桁だけが、絵具の傷みで消えている。館は角括弧と疑問符でそれを示し、しかも年の欄にまで持ち込む。分からないことを分からないまま次へ渡すための仕組みを読みたい。残った三桁が支える推定を読みたい。
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名画の楽しみ方
後の手が、書き足した文字——ペルジーノ、ギルバート・スチュアートほか九点
後の手による。知られていない手による。九点の欄には、この言い方が並ぶ。書き足されたのは名、称号、生没年、そして家族の名である。忘れられてしまう前に誰かが書いた文字を、館はいまも消さずに残している。その筆跡もまた記録である。
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名画の楽しみ方
偽って署名された、と記録が書く——ホッサールト、アングルほか九点
九点の銘記の欄は、いずれも偽って、という語から始まる。それでも館は、書かれた文字そのものを消さない。まず写しとり、そのうえで偽りだと明記する。この二段構えが何を守っているのかを、九点の欄を並べて読みたい。
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美術史・技法
何歳のとき、と絵に書き添える——ヴァン・ダイク《ウォートン卿》ほか八点の肖像
十九歳。二十歳。四十三歳。八十四歳。九点の肖像には、描かれた人のそのときの齢が書き込まれている。ラテン語、英語、オランダ語と言葉は違っても、書かれる中身は同じである。齢を絵に残すという習慣を読みたい。
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美術史・技法
年が、古い書き方の文字で記される——ラファエロ《ニッコリーニ・カウパーの聖母》ほか九点
1488年をこの書き方で記すと、十三文字にもなる。それでも、多くの作り手がこちらを選んだ。足すだけの形と引く形、点の打ち方、そして通し番号への転用。館が現代の数字に直さずそのまま写す理由を、九点の欄から読みたい。
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美術史・技法
描いた、作った、作っていた——署名に添えられる三つの動詞、ナショナル・ギャラリー(ワシントン)
名のあとに、一語だけが添えられる。描いた。作った。そして、作っていた。終わった行いと、まだ続いている行いとが、同じ画面の上に現れる。九点の銘記の欄をその一語で読み分けると、作り手の構えの違いが見えてくる。
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美術史・技法
頭文字を組み、そこから姓を続ける——ロートレックとホントホルストの署名
前半だけを組み合わせ文字にして、後半は普通に続けて書く。九点の署名は、一つの署名の中で書き方が途中で切り替わる。真似のしにくさと読みやすさを、両方とも取りにいった形である。二百七十年を渡って残ったその型を読みたい。
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美術史・技法
文字を組んで、名の代わりにする——フランス・ハルスとトマス・サリーの組み合わせ署名
二つか三つの頭文字を、線を共有させて一つの形にまとめる。今回選んだ九点の署名は、いずれもその組み合わせ文字である。読むにはまず元の文字へほどかなければならない。二百年にわたって使われ続けた、この小さな図形の仕組みを読みたい。
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美術史・技法
署名は、どの隅に置かれるか——レンブラントからモネまで九点、ナショナル・ギャラリー(ワシントン)
右上。中央左。左上。中央右。左下。右下。下の中央。九点の絵を並べると、署名の位置が七通りに分かれた。館の記録は、文字の内容を書く前に必ずその位置を書く。なぜ場所が先に来るのか。三百年ぶんの署名を、置かれた隅から読んでいきたい。
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