COLUMNSコラム

  • 名画の楽しみ方

    作者の欄に、文化の名が入る——シカゴ美術館の古代アメリカ

    モチェ。チムー。ナスカ。九点の作者の欄に並ぶのは、土地と時代でくくられた文化の名である。ただし一点だけ、個人の名が残っている。名がないと書く書き方と、その例外の一点を読みたい。年の欄が、六百年の幅を持つ件もある。

  • 美術史・技法

    技法の欄が、作り方の名になる——シカゴ美術館の写真六点

    フォトジェニック・ドローイング。ダゲレオタイプ。六点の技法の欄は、六つとも違う語である。像と紙と台紙を別々に測る寸法の欄もある。複製できる五点と、できない一点の差を欄から読みたい。銘記の欄が、裏面まで記録している。

  • 名画の楽しみ方

    作者の欄に、工場の名が入る——マイセンとセーヴル

    マイセン磁器製作所(1710年から現在)。十点のうち四点の作者の欄は、人ではなく組織の名で始まる。型、装飾、花、鳥。四つの役を書き分ける欄もある。名が残る人と残らない人を分けるものを読みたい。出所の行が、三十を超える名で埋まる一点もある。

  • 美術史・技法

    作者の欄が、五行になる——ゴブラン王立製作所の綴織

    下絵を描いた人、様式のもとになった人、縁の文様を考えた人、織った製作所、それを運営した三組の名。一枚の綴織の作者の欄には、これだけの名が並ぶ。長い欄が誰の何を記録しているのかを読みたい。受入の年は、百十六年に散らばる。

  • 名画の楽しみ方

    技法の欄が、一語で終わる——シカゴ美術館の彫刻十点

    大理石。木。石膏。テラコッタ。彫刻の技法の欄は、材料の名だけで終わることが多い。絵画のように支持体と絵具を重ねて書く必要がないからだ。短い欄が何を決め、何を書き落とすのかを読みたい。受入の年は、九十年に散らばっている。

  • 名画の楽しみ方

    作者の欄に、民族と地域が入る——シカゴ美術館のアフリカ美術

    エジプト。ファン、ガボン、中央アフリカ。九点のうち八点の作者の欄には、人の名がない。一点だけ彫り手の名が残っている。名がないとき記録は何を書くのか、そして残った一点は何が違うのかを読みたい。年の欄が、三段になる一点もある。

  • 名画の楽しみ方

    題が、器の名でできている——シカゴ美術館のギリシア陶器

    カンタロス、ヒュドリア、アンフォラ。十点の題は、いずれも器の種類の名である。作者の欄には通称が入り、技法の欄はテラコッタの一語で足りる。名を先に置き、用途を括弧で後に置く書き方を読みたい。十点の年は、二百五十年に散らばっている。

  • 美術史・技法

    描いた人と、彫った人——複製版画に残る二つの署名

    画面の左下に描いた人の名、右下に彫った人の名。銅版画は、二人の手を両端に分けて記す。館は銘記の欄にその文字をそのまま写し、作者の欄には二人を並べる。複製という仕事が記録の中でどう扱われるかを読みたい。

  • 名画の楽しみ方

    年の欄に、王朝の名が先に来る——シカゴ美術館のアジア美術

    サファヴィー朝(1501年から1722年)、1535年ごろ。一つの欄に、王朝の続いた期間と制作年が二段で入る。十点のうち五点がこの形をとる。下絵と彩色を書き分ける欄もある。部門が変わると欄の使い方がどう変わるかを読みたい。

  • 画家を知る

    同じ波が、二枚ある——葛飾北斎《神奈川沖浪裏》シカゴ美術館

    同じ版木から摺られた《神奈川沖浪裏》が、三年をおいて別々に館へ入った。寸法も技法も銘記も、記録の欄はまったく同じである。違うのは番号と来歴の行だけだ。十点の判型と摺りを並べ、二枚あることの意味を読みたい。

  • 美術史・技法

    来歴に、都市の名が並ぶ——シカゴ美術館

    ライデン、アムステルダム、トレド、パリ、シカゴ。来歴の欄には、持ち主の名とともに都市の名が並ぶ。売買の値段も、当時の通貨のまま書かれる。裏に貼られた新聞紙が証拠になった一点もある。四百年の道筋を読みたい。

  • 美術史・技法

    展示歴の欄に、何が並ぶか——シカゴ美術館

    都市名、会場名、展覧会の題、会期、目録番号。展示歴は、この五つの要素の繰り返しでできている。同じ絵が、時代ごとに違う題で呼ばれてきた記録も残る。一点の絵が百年かけて動いた跡を、長い欄から読みたい。日本を巡回した一点も、会期まで残っている。

  • 名画の楽しみ方

    番号が、二つの数字でできている——シカゴ美術館

    年と通し番号。シカゴ美術館の作品番号は、数字が二つで足りる。ただし九点の番号は七通りの形をとる。文字の枝番、番号の範囲、そして年が最後に来る貸与の番号。番号の設計を、館ごとの違いから読みたい。紀元前の器と二十世紀の図面が、同じ形式で並ぶ。

  • 名画の楽しみ方

    題の末尾に、疑問符がある——ミケル・シトウほかの肖像

    誰それの肖像(か)。九点のうち五点の題は、括弧の中の一文字で終わる。名は伝わっているが、確証がない。絵の中に名が書かれていても、疑問符が外れない一点もある。中間の状態を書き残す道具を読みたい。寄贈者の姓が、題の名と同じ一点もある。

  • 美術史・技法

    板から、カンヴァスへ移す——ラファエロ《アルバの聖母》ほか

    技法の欄には、材料だけでなく処置まで書かれる。板から剥がした絵具の層を、布に貼り直す。九点の欄には、その書き方が五通りある。短い一語が、絵の物としての履歴をどう運んでいるのかを読みたい。円形の板を布へ移した一点も含まれる。

  • 画家を知る

    同じ工房に、五通りの書き方——レンブラント工房

    レンブラントと工房。レンブラント工房。工房(おそらく誰それ)。九点の作者の欄には、五通り以上の言い方が並ぶ。題が《レンブラントの肖像》で、作者の欄が工房という一点もある。語順と括弧の働きを読みたい。六点は、同じ受入に含まれている。

  • 美術史・技法

    四百年後に、番号がつく——アルテミジア・ジェンティレスキほか

    2025年に受け入れられた絵の制作年が、1625年ごろとされる。九点はいずれも四百年以上の隔たりを持つ。古い絵の受入は、いまも続いている。番号の四桁と制作年の欄を引き算すると、何が見えるかを読みたい。

  • 画家を知る

    同じ姓が、二つの別々の行に出る——ウィンスロー・ホーマー

    九点の出所の行に、同じ姓が二度現れる。一方は財団の名、他方は夫妻のコレクションの名である。姓は同じでも、下の名が違う。館はそれを一つにまとめない。決めつけずに読むための作法を、六通りの行から考えたい。

  • 画家を知る

    枝番が、二つずつ続く——エミ・フィリップスの対の肖像

    1953.5.28と29、30と31、52と53。四組の夫婦の肖像に、連番が振られている。しかも四組とも、若い番号が夫である。向きも寸法も対をなす。番号の並びが絵と絵の関係をどう保つのかを読みたい。横の寸法は、四組ともほぼ一致する。

  • 画家を知る

    描かれた人の名が、出所の行にもある——ジョージ・ベローズ

    肖像に描かれた本人の名が、その絵の出所の行にも現れる。自分の肖像を、自分の名の収集として館へ渡したからである。似た名の寄贈者がいる一点もある。同時代の作品だからこそ起きる名の重なりを読みたい。番号は、夫妻で別々に振られている。

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