COLUMNSコラム
-
画家を知る
九点を、六つの経路が運ぶ——ジョン・シングルトン・コプリー
八回の寄贈と、一回の移管。九点はいずれも館が買ったものではない。しかも括弧の中には、百二十年前の寄付による購入と書かれた一点がある。行と番号と年を並べて、九点が同じ壁に並ぶまでを読みたい。下絵の一点と、大画面の一点も並ぶ。
-
画家を知る
九点が、七通りの経路で入る——ギルバート・スチュアート
同じ画家の九点が、七つの別々の経路で一つの館に集まった。購入は一点もなく、寄贈と移管だけである。七十四年かけて届いた九点の行を並べると、館の収蔵品の成り立ちが見えてくる。未完成の一点も含まれている。六点は、同じ規格の布に描かれている。
-
美術史・技法
作者の欄に、地名と世紀が入る——ヨーロッパの無名の絵
フィレンツェ、15世紀。アントウェルペン、16世紀。作者の名がないとき、館は地名と世紀を置く。ところがその地名の粒度は、都市から地域まで四段階に分かれる。粒度の差が示すものを、九点から読みたい。側面を向いた肖像が、四点ふくまれる。
-
名画の楽しみ方
一行で終わる来歴と、二十行の来歴——フラ・アンジェリコとヴェルネ
ある人が持っていて、館に贈られた。それだけで終わる来歴がある。一方、注記を含めて一万字を超える来歴もある。その差は五百倍。長さが何を示し、何を示さないのかを、九点の来歴の欄から読みたい。名が四度も変わった一点も含まれている。
-
美術史・技法
文字は、どこに書かれるか——マゾリーノとロットの銘記
台座、祈祷書、手紙、衣の縁、後光、楽譜、卓布。絵の中の文字を、館の記録は位置とともに写す。修復で直された綴りや、いまは失われた裏の一行まで残る。銘記の欄が何を守っているのかを、九点から読みたい。読めた字と補った字は、括弧で書き分けられる。
-
名画の楽しみ方
「おそらく」は、どこに掛かるか——ヤコポ・バッサーノほかの年の欄
おそらく1637年。おそらく1500年ごろ。同じ語でも、後ろに来るものが違えば意味が変わる。十年をひとまとまりで書く形や、その年以降と開いておく形もある。九点の年の欄から、留保の段階を読みたい。技法の欄にも、同じ疑問符が置かれている。
-
名画の楽しみ方
斜線は、二つの意味を持つ——ティツィアーノとルーベンスの年の欄
年の欄の斜線は、幅を示すこともあれば、二つの時点を示すこともある。同じ記号が正反対に近い働きをする。手直しの年、偽の署名、二人の画家の作業。九点の年の欄から、記号と語の使い分けを読みたい。偽の署名を写したうえで、館は別の年を採る。
-
名画の楽しみ方
同じ画家の名に、二つの語が付く——ベラスケスとティツィアーノ
周辺、追随者、工房、助手、そして「に帰される」。九点の作者の欄には五つの言い方が並ぶ。同じ画家をめぐって、語が使い分けられている。語順と括弧だけで確からしさを示す仕組みを、九点から読み解きたい。六点は、館の最初の受入から来ている。
-
美術史・技法
十七世紀の絵に、1925年ごろとある——フェルメールの模倣者
作者の欄に模倣者と書かれ、年の欄に二十世紀の年が入る。二つの欄が揃って、はじめて隔たりが分かる。館の最初の受入にも、そういう一点が含まれていた。記録が意図を書かず、材料だけを渡す書き方を読みたい。二十世紀初めに、四点が集中している。
-
美術史・技法
行の末尾に、理由が書かれる——五十周年の寄贈
出所の行は、ふつう理由を書かない。ところが九点の行には、当館五十周年を記念して、という句が付く。匿名の寄贈、委員会の寄贈、財団の寄贈。記念の年に集まった一点ずつの寄贈を、行の末尾の一句から読みたい。番号の枝は、九点とも1で終わっている。
-
美術史・技法
作者の欄が、九点とも修飾されている——ティムケン・コレクション
工房。追随者。周辺。に倣う。九点の作者の欄には、いずれも本人以外を示す語が付く。同じ受入番号の下に、模作とされる作品が集まっている。修飾語の四つの段階と、そこから見える収集の性格を読みたい。年の欄の書き方も、二つの型に分かれている。
-
名画の楽しみ方
同じ名字が、五通りに書かれる——ポール・メロン
同じ家から来た絵でありながら、出所の行が五つに分かれる。同じ受入番号の中でさえ、行が二種類に割れている。夫妻の共有と単独所有、記念の句の有無。統一しないという判断が、三十年ぶんの時間を記録に残した。名字で束ね、その後の語で分ける作りである。
-
名画の楽しみ方
買うための金に、人の名がある——基金の行
美術館が絵を買うとき、金はたいてい基金から出る。そして基金には人の名が付いている。九点の番号は、いずれも枝番が1で終わる。購入は一点ずつ決まるからだ。行の形と番号の形から、買い方の違いを読みたい。寄贈の群とは、番号の形からして違う。
-
美術史・技法
一族の名で、二千八十六点——ウィドナー・コレクション
出所の行に動詞がない。誰の寄贈とも書かれず、家の名だけが置かれる。その一行の下に、二千点を超える作品が並ぶ。寸法の欄が上と下で違う幅を書く一点もある。短い行ほど広い範囲を指すことを、九点から確かめたい。
-
美術史・技法
二十二年、同じ一行——サミュエル・H・クレス・コレクション
寄贈とも遺贈とも書かれない。コレクションの名だけが置かれた一行が、二千四百九十五点を束ねている。開館の二年前に始まった受入は、二十二年続いた。群の名で括ることの利点と副作用を、九点の番号から読みたい。
-
美術史・技法
同じ一行が、九つの番号に散る——ガービッシュ夫妻の寄贈
九点の出所の行は一字も違わない。ところが番号の頭は1953年から1980年まで散らばる。二十七年にわたる繰り返しの寄贈である。変わらない一行と、動く四桁。二つを並べて、米国の素朴な絵が館に入るまでを読みたい。
-
名画の楽しみ方
括弧の中に、前の館がある——コーコラン美術館からの移管
出所の行に括弧が入り、その中にもう一つの受入が書かれている。外は2014年、中は1869年。七千点を超える移管で、前の館の贈り主の名が一点ずつ写された。括弧という記号が何を守っているのかを、九点から考えたい。
-
名画の楽しみ方
表と裏に、別の枝番がつく——レオナルドほか
一枚の板の両面に、別々の番号が与えられる。表がa、裏がb。技法の欄も、面ごとに書き分けられる。一方、横に並ぶ四枚の板には数字の枝番がつく。面を数えるか、板を数えるか。十点の番号の末尾から、その判断を読みたい。
-
美術史・技法
番号は三つ、写真は一枚——多翼祭壇画の枝番
番号の末尾に、小文字のaがつく。三枚で一つの祭壇画を、館は板ごとに数える。ところが六点では、三つの番号が同じ一枚の写真を共有している。分けて数え、まとめて見せる。記録の単位と絵の単位のずれを読みたい。
-
名画の楽しみ方
番号の頭が、1937である——ナショナル・ギャラリー最初の受入
1937.1.3。館が開くより四年早く、絵のほうが先に番号を持っていた。四百七十年ぶんの絵が、一つの年号の下に畳まれている。出所の行と番号から、最初の受入に含まれた九点を読み直したい。来歴には、同じ画商の名が繰り返し出てくる。
25 / 47 ページ(全 940 件)



















