COLUMNSコラム
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作品を知る
鍛えるは、暗い中の一点になる——北斎・アーロム・ホイッスラーほか九点
熱した鉄は自分で光り、その光がまわりの顔を照らす。鍛冶の九点を数えると、火が見えるのは二点だけで、七点では火は画面の外にあった。前掛けと太い腕だけで鍛冶屋と分かる素描があり、鍛冶場が神話の場所にも土地の名にもなる。
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美術史・技法
彫るは、深さで語られる——北斎・ギボンズ・ピサーノほか九点
深く彫れば影が濃くなり、浅く彫れば面が平らに見える。彫るの九点を数えると、三点で館の記録は彫りの深さや硬さを様式や年代の根拠にしていた。彫る場面は三点だけで、どれも手が止まって見える。一回で削れる量は粉ほどしかない。
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美術史・技法
摺るは、同じものを何枚も作る——豊国・広重・写楽ほか九点
版があれば同じ絵が何枚も出る。摺るの九点を数えると、版そのものは一点だけで、残る八点は木と銅と石と写真から刷られたものだった。三段の灰色に三枚の版が要り、一枚の紙に八つ並べて刷って売る前に切る。同じ版から出ても、一枚ずつ違う。
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作品を知る
読む姿は、顔を伏せる——蹄斎北馬・ボウツ・ラ・ファージほか九点
面は手元にあるから、目は下を向く。読むの九点を数えると、五点で視線は下へ落ち、上を向いて読む姿は一度もなかった。文字が読める大きさで描かれるのは三点だけで、残りは白い面か裏を向いた面。読むことは面と目のあいだで閉じている。
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美術史・技法
書くは、人がいなくても残る——ベローズ・ドガ・青木木米ほか九点
跡が残れば、書いた人がいなくても伝わる。書くの九点を数えると、六点で書く人は画面におらず、残るのは書かれた文字か道具だけだった。声を失った父が名を書いて話す力を取り戻し、二百年後の人が余白に感想を書き足している。白い面をめぐる記録である。
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暮らしと名画
掃くは、一方向へ動くこと——ハッサム・清長・クロード・ロランほか九点
館の記録は、箒の動作にも、線の速さにも、眺めの広がりにも同じ語を使う。掃くの九点を数えると、箒が写る二点ではどちらも箒は置かれたままで、実際に掃いているのは一点だけ。残りでは掃くは線と色と眺めと、すべてをなぎ払う力の名だった。
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暮らしと名画
洗うとは、見えなくすること——アーフェルカンプ・ピサロ・スローンほか九点
洗う場面に汚れは描かれない。落ちたものは水に混ざって消えるからである。洗うの九点を数えると、三点で人は膝をつくかしゃがみ、足を洗う二点ではその低さが意味を持っていた。馬を洗う一点があり、織物の記録では洗うことが色を落とす力として書かれている。
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作品を知る
抱くと、輪郭が一つになる——デューラー・ムリーリョ・ドガほか九点
腕が体を囲むと、どこまでが抱く人か分かりにくくなる。抱くの九点を数えると、六点で対象は子、二点で鳥だった。古代の器では抱くことが人質を取ることであり、板の器具では動作の一部を道具が引き受けていた。同じ形が守ることにも奪うことにもなる。
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暮らしと名画
身支度は、後ろから描かれる——歌麿・ドガ・ホイッスラーほか九点
人に見せるための準備は、人に見せない。身支度の九点を数えると、四点で人は背中か伏せた顔を見せ、六点では館の記録に人物の名がない。鏡は四点に写るのに、姿が映って見えるのは一点だけ。名のかわりに、していることが題になる。
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美術史・技法
織るは、交差させること——歌麿・モリス・アルマ=タデマほか九点
糸を交差させれば布になり、花を交差させれば輪になる。織るの九点を数えると、機に向かう人は二人しかおらず、残りは編まれた花輪、機械が織り出した顔、蜘蛛の名、うねる柵の線だった。何千回の繰り返しのうち、絵に写るのは一回である。
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作品を知る
羽根は、頭へ行く——ホワイト・コーツ・デューラーほか九点
金属や石なら重くて載せられない場所に、羽根は載る。九点を数えると四点までが頭にあり、翼の羽根には遠征の名が書かれ、磁器の像では見たことのない土地のしるしになっていた。軽い材料が重い意味を負う記録である。
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美術史・技法
海の飾りは、絵の中にある——サンズ・フランケン・辰斎ほか九点
珊瑚は枝を磨いて珠にし、鼈甲は薄く削って熱で曲げる。九点を数えると、実物が館にあるのは二点だけで、あとは絵に描かれるか、釉の色の名や壁画の題になっていた。石ほど硬くなく木ほど柔らかくもない、海から来た材料の記録である。
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作品を知る
石の名は、色を貸す——宋旭・広重・ピサロほか九点
翡翠という鳥の名も、水晶宮という建物の名も、石そのものではなく色や光の似方から来ている。玉と水晶の九点を数えると、手に取れる石は三点しかなく、四点では石の名が別のものを指していた。名は広まり、記録がそれを訂正する。
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作品を知る
螺鈿は、暗い面でしか光らない——国貞・ゲッツ・ゴンサレスほか九点
貝の内側を薄く剥がした層は、黒い木や金色の地に置かれてはじめて光る。螺鈿の九点を数えると、八点で地は暗いか金色で、材料の欄ではいつも三番目以降だった。もとは食べたあとの殻で、海女が採る場面を描いた版画が九点の始まりにある。
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作品を知る
角と骨は、名前になる——窪俊満・ルドン・カトリンほか九点
短くてどの言語にもある語は、姓にも呼び名にもなりやすい。角と骨の九点を数えると、実物は火薬入れの一点だけで、四点では材料の語が人を指していた。陶が角の形を写し、館の記録は象嵌を象牙か骨か決めていない。名前になった材料の記録である。
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作品を知る
象牙には、上限がある——レンクハルト・プライマー・キッドほか九点
一本の牙より大きなものは作れない。象牙の九点を数えると、十人以上の人物が幅16.5センチに詰め込まれ、残る三点では象牙は物ではなく、焼き物の素地と紙と鳥の嘴の色の名になっていた。材料の寸法が絵の構成まで決めている記録である。
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作品を知る
皮は、削って直せる——ド・ブレイルズ・クラーナハ・ブガッティほか九点
羊や子牛の皮を張って乾かした面は、紙と違って削って書き直せる。九点を数えると、紙が普及したあとも版画が刷られ、細密画が描かれ、二十世紀の丸椅子の座にまで張られていた。書くための面が、七百年かけて座る面になった記録である。
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作品を知る
羊毛と麻は、裏に回る——ウィルキー・グロ・ヴュイヤールほか九点
油絵の下の布は麻で、綴織の暗い部分は羊毛。九点を数えると、二つはたいてい表に出ず、綴織では明るい面を絹に譲っていた。麻の卓掛けは高価すぎて銀の受け皿で守られ、羊毛は騎士団の名と人の姓になる。草から布までの隔たりをめぐる記録である。
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美術史・技法
綿は、刷るための布——ケーハル・シング・ヴェルネ・ウォルコットほか九点
安く平らで洗える布は、木版なら多色で、銅版なら細い線で刷れる。綿の九点を数えると、兜の裏に隠れ、材料の欄で疑問符を付けられ、学校の名になり、綿ではない湿地の草の名にもなっていた。最も重要な輸出品が、二人の手として描かれている記録である。
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美術史・技法
絹は、地にも布にもなる——歌麿・牧谿・ハルスほか九点
繭からほどいた糸は、紙のように描く地にもなり、身にまとう布にもなり、版を刷る支持体にもなる。絹の九点を数えると、七百年で地が褐色に沈んだ掛幅があり、絹を売る商人の肖像があり、羊毛に混ぜられた光る糸があった。数えきれない糸をめぐる記録である。
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